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【様変わりする地方移住】交流→移住→定住へ 目的持って受け入れ2017年9月19日

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 「都会の生活に見切りをつけ田舎暮らしを」というのがかつての地方移住だったが、最近の若者を中心とする移住者の増加は、単純に都会を脱出して田舎に移り住むというだけではなくなったようだ。そこには若者の価値観、ライフスタイルの変化がある。従って動機は多様で、単に「都会」と「地方」を対比するのでなく、「どちらもあり」のなかで選択肢の一つと考えている。NPOふるさと回帰支援センターの嵩和雄・副事務局長に聞いた。

◆都市と農村 フラット化

 ――若い人の移住が増えた背景、きっかけはなんでしょうか

農村移住願望の若者が増えている 農村移住が増えたのはリーマンショックが一つの契機になっていますが、それは景気の後退によって東京での仕事がなくなり、農業でならなんとか食えるだろうという消極的なものだったように思います。このときは独身男性が多かったのですが、その後、「3・11」の東日本大震災で原発事故が起こり、子どもを持つ家族連れが増えました。さらに「地方版総合戦略」で地方自治体が積極的に移住・定住策をとったため、特に20~29歳の若者が積極的に動きました。
 農村定住の動きは2000年ころから見られますが、1980~90年代の経済成長を知らず、バブル崩壊も経験していない世代の価値観が、それまでと変わってきたことが背景にあると思います。特に東日本大震災では、お金があってもモノが買えないという状況をみて、不安を感じ、「都市は何も生み出さない。このままの暮らしでいいのか」と、都市で生活することについての疑問が高まったのではないでしょうか。
 地方都市を含めた田舎暮らしをしたいという願望が高まった中で、インターネットやSNS等による情報インフラが普及し、農村のリアルな情報が入るようになり、農村のイメージが多様になるなかで、地方都市への関心も高まり、移住の選択肢の一つになってきたのも、移住のきっかけになったと思います。

(写真)農村移住願望の若者が増えている。

◆受け入れは段階踏んで

 ――移住・定住するといっても、行く側、受け入れる側で多くの障害があると思いますが、移住をうまく進めるポイントは。

嵩和雄・ふるさと回帰支援センター副事務局長 農村移住を希望する人は地方都市止まりと、まったくの田舎に行きたいと言う人に2分化される傾向がありますが、農村の生活の経験のない若者にとって、住居・仕事・人間関係など農村に住むためには高いハードルがあります。このため最初は地方都市で暮らし、地方の生活に慣れてから希望する農村に移るという段階が必要です。われわれはこれを「2段階移住」と言っています。
 農村移住を成功させるには、このような段階を追って柔軟に進めることが大切です。従って移住者を受け入れる市町村は、いきなり移住させようと考えず、ある程度、農村の生活に慣れてもらう必要があります。うまく移住者を増やしているところは、移住の前段階として、農村体験やグリーンツーリズムなどによる都市と農村の交流事業などを行なっています。そして「地域興し協力隊」や「田舎で働き隊」などで一時的に移住し、最後に定住するというステップを踏んでいるケースが多くあります。
 また交流に参加した人は、ある程度農村で暮らすための知識と経験を持っており、受け入れる側も〝よそ者〟との交流に慣れています。地方創生で初めて移住事業に取り組み始めたところは、移住者を数字でしか見ない傾向があります。大事なことは、移住者を人口としてみるか。個人として見るかの違いです。
 つまり、何ができるかが重要であって、地域おこしのため農産物の加工のできる人とか、農産物のバイヤー経験者とか、集落や地域を元気にするために必要な人を選んできてもらうことです。移住する人も、必要とされて入るのとそうでないのでは意欲が違います。誰でもいいからでは、いい人は集まりません。条件がいいからとか、空家があったから来たというのでは、来てやったという意識になり、集落や地域といい関係性をつくることが難しいと思います。
 そして迎える側で大切なことは、そこに住む人が、自分の地域に対して自信を持っているかどうかということです。「こんなところに」と卑下するようでは、移住者は集まらないでしょう。
 その点でも、農村ツーリズムなどによる都市と農村の交流は重要です。交流に参加した人が、いいところだと評価すると、それが自信につながります。農村に住む人は、自分ではなかなか地域のよさがわかりません。それを外部の人から言われると、あらためて地域の文化や伝統、自然を見直し、自信につながります。その意味では外からの刺激が大切です。

(写真)嵩和雄・ふるさと回帰支援センター副事務局長

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