特定生産緑地 早期の指定を2018年4月25日
・変わる都市農業政策
都市の農地については国土交通省も「宅地化すべき土地」から「都市にあるべきもの」へ位置づけを180度転換し、29年には生産緑地制度の面積要件を引き下げるなど法改正も行われ、より都市農地を保全する方向になっている。この4月からは指定から30年を経過した生産緑地でも10年ごとに指定を更新できる特定生産緑地制度が導入された。ただし、30年を経過する前までに指定を受けておかなければならない。JAも早期に対応が必要になるとして、JA全中はパンフレットを活用するなど所有者への周知を呼びかけている。

特定生産緑地制度は生産緑地指定を受けてから30年が経過した後にもこれまでと同じ税制措置が受けられる新たな制度だ。
特定生産緑地に指定された場合、10年間は農地課税が適用され、相続税も納税猶予制度が適用される。さらに10年経った後にも指定を更新できる。
この新制度では10年間は農地として営農することが必要だが、その間は安心して営農を続けることが可能になる。また、10年の間に相続や営農困難が生じた場合には、これまでと同様に市町村に対して買い取り申し出ができる。
JA全中の調査によると、特定生産緑地の指定を受けない場合、固定資産税・都市計画税の負担が1年ごとに2割ずつ増加してしまい、5年後には宅地並み課税の税額まで上昇するという。
重要なことは指定から30年経過するまでに申請しなければ、どんな理由があってもそれ以後の特定生産緑地指定はできないということだ。指定を受けないと税負担が急増することになる。
現在、指定を受けた生産緑地の8割にあたる約1万haは平成4年(1992)に指定されており、30年を迎える平成33年には指定手続きが大量に発生することも考えられるが、特定生産緑地の指定は現時点でも可能なことから、指定意向のある農家は早めの事務手続きが求められている。とくに農家に指定意向があっても、生産緑地に抵当権が設定されているなどのケースでは利害関係者の同意取得に時間がかかることも考えられるため、国土交通省はこの4月から農家に新制度について通知するよう自治体に呼びかけている。
かりに平成34年に指定から30年を経過をする生産緑地を今年、特定生産緑地に指定したとしても、制度の更新は平成34年から、となっており期間が短縮されることはない。
この制度は農地を相続する人が生産緑地を継続するかどうかを決めることができるため、次世代の選択の幅が広がる。
また、今国会で審議されている「都市農地の貸借の円滑化に関する法律案」では、生産緑地を相続税納税猶予を継続したまま、第3者に貸し出すことを可能とする。農地所有者が他の都市農業者に貸し出し、都市住民のための市民農園などを開設することも可能になる。このように都市農地を農地として残す方向で環境が整備されている。
特定生産緑地制度の開始にあたって国土交通省は3月末に都市計画運用指針を改正し、特定生産緑地の指定にあたって、現在の生産緑地所有者への意向確認に漏れがないよう、市町村の農林水産部局と農業委員会に加えて、「農業協同組合」とも連携して、制度の周知を行うことが望ましいとされた。都市に農地を残すための新制度は、農家組合員の立場にたったJAの役割も期待されているといえる。
自治体にとっては生産緑地に指定すると固定資産税が減収となるが、減収分については国が普通交付税として約75%を補てんする。
都市に農地が残り、都市農業者が営農を継続することはもちろん市民農園などかたちで活用し、地域コミュニティづくりや健康増進の場ともなることは都市住民にとってもメリットがある。生産緑地制度の活用はまちづくりの一部だとの認識で新制度を活かしたい。
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