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2019.09.26 
【日米貿易協定】牛肉関税削減 発効時にTPP2年め水準から 一覧へ

 9月26日、安倍晋三首相と米国のトランプ大統領が首脳会談を行い日米貿易協定に最終合意した。農産物では米を関税削減や撤廃など措置から「除外」を確保した。脱脂粉乳やバターなどの乳製品で新たな米国枠を認めないことや牛肉もTPPと同内容の関税削減とするなどの合意内容になっており、江藤農相は「TPPの範囲とすることができた」との談話を発表した。ただ、牛肉関税は将来は9%になるため江藤農相は「将来への影響は無視できないものがある」と話す。影響試算などにより合意内容の検証も求められる。

◆米・米調製品は「除外」

「これからしっかり現場に説明したい」と話す江藤農相。26日午前3時半過ぎ。農水省内で。 江藤農相は26日未明に農水省内で会見。「日本の関税はTPPの範囲内におさめることができた。米も除外、TPPワイド枠についても米国枠は与えない。攻めの部分でも牛肉は安い関税で6万5000t以上のアクセスが可能になる。いい内容だったと思う」と話した。
 TPP(環太平洋連携協定)では米については米国に対して5万tから最大7万tの輸入枠を設定したほか、米粉調製品・加工品などの計19品目で関税の削減・撤廃に合意していた。
 しかし、日米交渉では米国の輸入枠を設けず米粉調製品なども含めて米は「除外」で合意した。米については既存のSBS枠(国家貿易による最大10万t)の運用で透明性を確保するため、新たに入札件数など入札結果を公表する。また、TPP合意時には、実質、米国の中粒種に対して加工用限定で6万tまでのSBS枠を設けることに合意していたが、今回は「そうした約束はしていない。米の除外を確保した」(農水省国際部)という。
 焦点のひとつだった脱脂粉乳やバターなど33品目の乳製品について参加国全体を対象に設けた低関税枠について、米国は交渉で自国枠を求めていたが、新たな米国枠は設けないことで合意した。
 小麦はTPPと同内容。マークアップ(輸入差益)を45%削減し、米国枠として最大15万tを設定する。大麦もTPPと同内容で新たな米国枠は設けない。

(写真)「これからしっかり現場に説明したい」と話す江藤農相。26日午前3時半過ぎ。農水省内で。

◆米国をTPP参加国扱い

 牛肉はTPPと同内容で9%まで関税削減。発効が2019年度なら現行38.5%の関税が26.6%に一気に引き下がる。TPP11発効時は27.5%への引き下げだったが、現在は発効2年目。米国がかりにTPP協定に残っていたら適用される水準をあてはめ、以降、TPP参加国と同様に削減し、33年度から9%となる合意内容だ。TPP協定では加盟が遅れた国に対しても同じ関税削減水準等を適用することになっているのが理由だという。
 牛肉の関税削減は輸入急増を防ぐセーフガード付きで行うが、米国のSG発動基準量は2020年度に24万2000tとする。これは2018年度の輸入量25.5万tを下回る水準で「米国には厳しい内容」と農水省はみる。
 この米国に対するSG発動基準量とは別に、TPPとしてのSG発動基準量が2020年度は61万4000tとなる。日本は今後、豪州やニュージーランドなどTPP11参加国、さらに米国と協議をし合意が得られれば、米国とTPP11からのSG発動基準数量を合わせて1本化する考え。2023年度以降に移行する方向で協議するがTPP11が協議に応じるかは不透明だ。
 豚肉についてはTPPと同内容で高い部位を対象にした従価税部分(4.3%)は撤廃、安い部位を対象にした従量税を50円/kgまで削減するが、差額関税制度と分岐点価格(524kg/kg)を維持する。
 一方、牛肉の輸出について、米国向けの低関税枠200tを既存の複数国枠と合わせて6万5000tの枠を確保した。現在、この枠の8割をニカラグアが占めているが、同国は米国とのFTA締結で無税で輸出できることになるため、複数国枠内で日本の牛肉輸出拡大を図ることができるとみる。 また、醤油、菓子類、冷蔵ながいも、切り花など輸出関心の高い42品目の関税削減・撤廃を獲得した。


◆影響試算も議論に

 江藤農相は未明の会見で「この内容でも農家や関係者の方々は不安な気持ちを持っていることは十分理解できる。これからしっかり現場の方々への説明を尽くしていきたい」と話す。
 政府は合意内容をTPPの範囲内と評価するが、発動時の米国の条件をTPP参加国と同じ基準とする「キャッチアップ」の扱いについて、関税削減期間の短縮でありTPP合意を超えるものではないかとの批判もある。 また、自動車関税の撤廃が見送られたことで工業分野とのバランスも検証が必要だ。
 江藤農相は農産品について「すぐに大きな影響があると思えないが、将来的には9%まで下がっていくわけだから将来への影響は無視できないものがあると思う」と述べた。両国政府は2019年度中の発効をめざし、日本は10月からの臨時国会で協定案を通過させたい方針だが、影響試算も含めしっかりと議論することが求められる。

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資料:日米貿易協定の農林水産品の合意内容(農水省公表資料・PDF)


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