国内農業系研究機関初のAIスパコン「紫峰」と統合DBを導入ー農研機構2020年6月17日
農研機構は、国内農業系研究機関初となる人工知能(AI)研究用スーパーコンピューター「紫峰(しほう)」の本格運用を開始した。合わせて、農研機構内に分散所有管理されている各種研究データを収集・統合し、機構内外の研究者が分野横断的に利活用できるデータベース(DB)の「NARO Linked DB(ナロリンクドデータベース)」も稼働した。
紫峰(提供=農研機構)
紫峰とナロリンクドデータベースの導入により、同機構の農業情報研究基盤が整備され、データ駆動型農業の一層の推進が期待される。
導入に際し国内の先進事例を参考にし、同機構内の計算機資源の利用状況も踏まえ、必要な計算機の能力・規模を算出。これにより、計算速度1ペタフロップス(ギガの100万倍)の計算性能を有する紫峰と、データ容量3PB(300万GB)の大規模データベースであるナロリンクドデータベースを導入した。
国内農業系研究機関においてペタフロップスクラスの計算機導入は初。紫峰に計算処理装置として搭載されている画像処理装置「NVIDIA Tesla V1004」は、AIや高性能計算などの分野においてCPU(中央演算処理装置)100個分の性能を誇る。これを紫峰に計128基搭載した。
計算性能だけでなく、ブラウザを通した入出力や高速画像表示を行うなど、対話形式による解析や画像処理を可能とし、パソコンのように扱いやすい仕様となっている。さらに、最新のAI計算用プログラム群とデータをセットで用意し、利用者はすぐ使うことができる。
また、これまで農研機構内の各研究センター・部門で所有していた、病害虫、気象、遺伝資源、ゲノム情報など各種の研究データを収集し、研究者が個別データに横断的にアクセスし利活用するための統合DBを構築。多様な形式のデータ同士を組み合わせ、利用しやすい形式で出力したりAIが処理しやすい形式で提供するなど、研究をサポートする機能も備える。
これら一連の農業情報研究基盤整備により、育種、生産、加工・流通など農業の各分野におけるデータ駆動型農業研究をさらに加速していくことが期待される。
画像処理速度も従来比100倍速くなっており、大量の画像処理で必要な病害虫の発生状況を把握する場合、1ヘクタールのジャガイモ畑の画像から発病株を検出をするのにはこれまで200時間(個人のパソコンでは500日)を要していたが、紫峰は2時間で完了する。
また、統合DBの活用によって過去の栽培記録や気象データなどから作物の生育や品質を予測する時も、貴重な学習データや開発した解析手法などを組織内で共有することが可能。今後はほかの地域・作目への適用を進める。
機構内でAIスーパーコンピューターと統合DBを用いたAI技術教育も進める。同機構では、「2018年に農業研究情報センターが発足した時は、AI関連の人材は28人だった。2年で80人まで増強し、数年以内には400人のAI研究者を育成していく予定」(久間和生理事長)としている。
AI研究用スパコンと大規模統合DBによる農業情報研究基盤のイメージ(提供=農研機構)
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