肥料高騰 セーフティネット策を-自民党 食料安保検討委員会2022年4月1日
自民党の食料安全保障に関する検討委員会が3月31日に開かれ、肥料や飼料をめぐる情勢などをもとに今後必要な対策について議論した。議員からは高騰する肥料についても国によるセーフティネット対策を構築し、農業者の負担を軽減する仕組みを制度化すべきとの意見が相次いだ。
自民党の食料安全保障に関する検討委員会
会合ではJA全農の富田健司常務が肥料をめぐる状況と全農の取り組みを話した。
ロシアのウクライナ侵攻で肥料の国際市況は再び急騰している。
尿素は今後の供給が不安視され買いが殺到、年明けに下落した市況が急反発している。昨年同時期には1t300ドル台だったが現在では1000ドル近くにまで跳ね上がっている。
リン安も足元ではアメリカとブラジルが需要期に差し掛かったことに加えて、リン安の輸出国であるロシアからの供給途絶が懸念され上昇している。昨年同時期には1t400ドル台だったが、現在は中国からの本船渡し価格が900ドル、米国(タンパ)からは1200ドルを超える水準となっている。
今後は、ロシアから調達してきた国の調達先変更が予想されるなどで、高騰が続くと見られている。
塩化カリは、昨年6月に100万t規模のカナダのカリ鉱山の稼動停止が発表されたことに加えて、ベラルーシへの経済制裁にともなう輸出懸念から昨年4月の1t400ドル台が10月には同800ドルへ急騰した。さらにロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁でロシアからの輸出が滞る可能性は高く、両国で世界全体の輸出量の4割を占めており、さらなる需給ひっ迫が懸念されるという。
全農はこうした状況のなか、リン安については今年1月からモロッコからの緊急輸入に取り組み原料を確保してきた。
しかし、輸入先変更によるコストの掛かり増しが生じている実態を富田常務は説明した。
輸送距離が長くなるためその分コストがかかるが、さらに海上運賃市況自体も急騰している。そのため中国からの輸入にくらべモロッコからは1t当たり70~90ドル増えているという。
また、遠国から手配する場合は大型船輸送となるため、大型港でのみの着岸と荷揚げとなるため、港湾からメーカーの工場へ直送ができず、港湾近くの倉庫での保管が必要になる。輸送距離が長くなるため、輸送の遅れリスクに対し早めに原料を確保するが、その分保管数量が増加し保管期間も長くなる。
全農によると国内保管量は1t当たり1500円から2000円程度増えるという。保管期間も2~3か月長期化する。
日本国内の複合肥料の出荷数量は年間約180万t。肥料価格は多くの生産者に影響を与える。
全農は令和3肥料年度秋肥(2021年6月~10月)と同春肥(11月~2022年5月)は2期連続で値上げとなった。さらに2月には春肥期中改定を実施した。ただし、JAグループ各段階(全国・県・JA)で積立てきた「協同購入積立金」を取り崩し、組合員への供給価格は変更していない。
秋肥価格決定に向けてメーカーと交渉中だが、国際市況の高騰と輸入先変更による掛かり増し、円安などで「大幅値上げが避けられない見込み」だという。
全農は原料調達先の多元化と、生産現場での適正施肥と堆肥の活用などを進めているが、肥料原料の需給ひっ迫と価格高騰は長期化する恐れもある。
会合では議員から「政府としても肥料原料の多元化に取り組むべき」との意見が出たほか、配合飼料価格安定制度のように、肥料についても国の予算を使ったセーフティネットを作る必要性や、今回のように輸入先変更による経費の掛かり増しには、国が助成すべきとの意見も出ている。
また、4月に政府全体でとりまとめる物価対策に肥料対策も盛り込むべきとの指摘もあった。
富田常務は「自助努力にも限界がある。農家のコスト負担が緩和されることが必要で中長期的な対策の検討を」と求めた。
参議院選挙を控え、早急に国の方向を示すべきとの声が高まっている。
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