震災乗り越えネギの契約栽培で事業拡大 外食産業バイヤーとの商談会で手応え 福島県郡山市の「なかた農園」2022年7月25日
東日本大震災から11年。福島県で農業の復興が進む中、郡山市でネギの契約栽培などに取り組む「(株)なかた農園」は、着実に販路を拡大しながら震災による被害からの再生を進めている。今月21日に全国の外食産業のバイヤーを招いた現地での商談会にも参加して積極的にアピールし、新たな販路開拓への手応えを得た。
ネギの栽培について説明する「なかた農園」の中田幸治社長(福島県浪江町で)
同社の中田幸治社長は、平成18年に親から農業を受け継ぎ、水稲1haとイチゴ10aの規模で就農、少しずつ品目を増やしながら経営規模を拡大し、平成22年には100品種もの野菜づくりに取り組み、直売などで販路を開拓した。
ところが翌年に東日本大震災が発生。原発事故の現場から離れており、避難まではしなかったが、風評被害で直売野菜などが大打撃を受け、売り上げは約6割減ったという。「ほ場などの被害よりとにかく風評被害の影響が大きかったです」と中田さんは振り返る。本来はトマトづくりに自信のある中田さんだが、原産表示を求められない加工用のネギの契約栽培に大きく経営転換した。ただし、契約栽培では一定の量が求められるため、規模の拡大に迫られた。「かなりの量が求められることになり、畑の面積を増やして規模を拡大するとともに播種や収穫で機械化を進めました」。
契約先も増やそうと、タウンページで調べてカット野菜メーカーや加工業者などに飛び込み営業などもしたという。その後、契約先や経営規模を着実に増やし、現在、水稲の作付けは28haに拡大、主力商品の青ネギと一本ネギの今年の出荷量は合わせて250~300トンに上る見通しで、外食産業やコンビニなどに出荷している。
商談会でネギをPRする中田幸治社長
今月21日には、大手外食メーカー14社を招いて福島県内の農業関係者との商談会が郡山市で開かれ、中田さんは経営者の立場に加えて、農業経営者の団体「うつくしまふくしま農業法人協会」会長として出席、「ネギに限らず数多くの野菜を作ってきましたので要望に応じて個別に対応したいと思います」とアピールした。全社と7分間ずつの商談をこなした中田さんは「ネギの新たな販路になりそうな場所が多くあると思いました。例えばハンバーグでも味噌汁には青ネギが使われますし、関西のネギを使用する外食産業は東北の店で使うなら近い場所で調達した方が運賃がかからない。好感触を得ることができました」と語った。
震災から11年。着実に再生に向けて歩みを進める中田さんは「これからも需要に応じたオーダーメードの野菜づくりに取り組んでいきたい。また、最近は農業に関心を持つ若者も増えているので若い世代も引き込んで経営木全も進めていきたい」と語った。
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