輸出拡大の意義が論点に 農産物の適正価格が鍵 基本法検証部会2022年11月4日
農林水産省は11月2日、食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会(部会長=中嶋康博東京大学大学院教授)を開き、基本法見直しのための有識者委員のヒアリングを行った。国内農業にとっての海外市場の位置づけ、国内市場に関しては、農業生産維持のための価格形成のあり方が焦点になった。
委員からヒアリングする基本法検証部会
部会では農水省が、人口の減少で将来縮小が予想される国内市場を見越し、持続的な農業確立のためには、海外市場も視野に入れた政策が必要と問題提起。そのためには輸出産地づくりが必要で、これを起爆剤に国内農業の持続的発展があるとの考えを示した。
その上で、このところの生産資材の高騰を踏まえ、国内農業の持続的な発展のためには、農畜産物の適正な価格形成が必要とし、農産物の付加価値を価格に正当に反映させるフランスのエガリム法を紹介し、委員の意見を求めた。
輸出の位置付けについては、それがなぜ、国内農業の維持・発展につながるかの疑問がでた、一般社団法人アグリフュチャージャパンの合瀬宏毅理事長は「農林水産物の輸出が1兆円というが、それが国内の農業の体力強化にどれだけ役立っているか、輸出を伸ばす理由をもっと議論すべきだ」との考えを述べた。
また、海外市場の開拓で国内生産を維持・拡大できるとの農水省の考えに対しても、その根拠が問われた。農水省の説明では、農産物・食品の輸出割合が、農産物・食品の国内生産額(2018年51.7兆円)から、2030年の生産額の想定(51.7~55.8兆円)の10%、約5兆円と見込んでいる。将来、国内市場の縮小が予想される中で、生産額を横ばいないしは増加としている根拠を問う声があった。
JA全中の中家徹会長も、日本農業の発展には輸出が不可欠としながらも、「生産者の所得向上にどう繋げるが問題」と述べた。また、今日の生産資材の高騰による生産コストアップの現状を訴え、再生産可能な価格形成、農業継続のための生産基盤強化を訴えた。
適正な価格形成では、フランスのエガリム法が論点になった。農業者の適正な収入を確保するため、適正な取引関係の確立によって、価格形成に農業者が関われるようにする法律で、2018年に成立した。農水省も研究を進めているが、委員の東京大学の大橋弘副学長は、そのまま日本に適用するには慎重にすべきとの考えを述べた。
輸出拡大では、海外市場のニーズを的確にとらえ、マーケットインの販売戦略の重要性が指摘された。特に有機農産物、有機食品、ハラル商品に可能性があることや、日本型食生活とセットしたマーケティングが挙がった。また、海外輸出は個人ではハードルが高い。全国農業青年クラブ連絡協議会の山浦昌浩会長は「農家個人では難しい。ルートやロットを確保するには、ジャパンマルシェ開設のような取り組みができないか」と、関係各機関・組織の横断的な取り組みの必要性を強調した。
なお部会ではヒアリングに先立ち、農産物・食品輸出の海外事業を展開する㈱パン・パシフィック・インターナショナルホールディング(PPIH)と国分グループ本社㈱が、アセアン諸国向け輸出の現状について報告した。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(163)-食料・農業・農村基本計画(5)-2025年10月11日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(80)【防除学習帖】第319回2025年10月11日
-
農薬の正しい使い方(53)【今さら聞けない営農情報】第319回2025年10月11日
-
食料自給率 4年連続38%で足踏み 主食用米消費増も小麦生産減 24年度2025年10月10日
-
【特殊報】トマト立枯病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内の園芸作物で初めて確認 高知県2025年10月10日
-
【特殊報】スイカ退緑えそ病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【特殊報】ショウガ褐色しみ病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【注意報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年10月10日
-
26%が米「買い控え」 米価上昇が家計に影響 住友生命「台所事情」アンケート2025年10月10日
-
コシヒカリ3万3000円に JA常総ひかりが概算金改定 集荷競争激化受け2025年10月10日
-
大豆の吸実性カメムシ類 甲信、東海、北九州一部地域で多発 病害虫発生予報第8号 農水省2025年10月10日
-
(456)「遅さ」の価値【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月10日
-
「いちご新規就農者研修事業」2026年度研修生、若干名を追加募集 JA全農岐阜2025年10月10日
-
10月23日に生活事業総合展示会 贈答品や暮らしを豊かにする事業を提案 JA全農いばらき2025年10月10日
-
本日10日は魚の日 岡山県産「冷凍かき」など90商品を特別価格で販売 JAタウン2025年10月10日
-
収穫が遅れた完熟の「黄かぼす 食べて応援企画」実施中 JAタウン2025年10月10日
-
国消国産の日 一斉行動日イベント「国消国産×防災」開催 JA全中2025年10月10日
-
「日産ビオパーク西本郷」と「小野田工場ビオトープ」が環境省「自然共生サイト」に認定 日産化学2025年10月10日
-
「えひめ・まつやま産業まつり-すごいもの博 2025-」に出展 井関農機2025年10月10日