集落調査 経営体調査に項目追加 農水省が代替案2022年11月9日
農林水産省は11月8日、2025年農林業センサスから「農業集落調査」を廃止するとしていた方針を見直し、集落の実態把握に関わる調査項目を農林業経営体調査に追加して行う方針を示した。
同日午後に開いた第3回2025年農林業センサス研究会でこの代替案を説明した。
農水省は2025年の農林業センサスから「農業集落調査」を廃止する方針を示していた。理由は前回の2020年センサスで調査対象の14万集落のうち5万集落から集落の実態に精通している対象者の情報を得ることができなかったためと説明している。
個人情報保護条例などに基づき、市町村が情報提供に協力できないと判断したためだが、委員からは条例より統計法という法律のほうが優先されるのではないか、との指摘が出ていた。この点について同日の研究会で農水省は、総務省や内閣府に確認したところ、情報提供の義務が市町村に生じるものではなく、今後も市町村の判断に委ねられることが確認されたと説明した。
そのため従来どおりの調査を継続することは困難だとして、集落調査のおもな項目を「農業経営体調査」(全国の農林業経営体を対象とする悉皆調査)に追加して実施する代替案を示した。
これによって14万集落のうち86%をカバーすることができるという。また、従来は集落の精通者だけの回答だったが、個々の経営体に聞くことによって、集落の寄り合いの回数だけでなく回答した経営体の出席率、参加者の属性なども把握できるなど、これまで得られなかった情報を得ることができることや、複数の回答を得ることによる品質向上にもつながると農水省は説明した。
研究会では委員から農業経営体がない2万集落への調査の必要性とその手法などついて意見が出た。農水省は農業経営体はなくても自給的農家を対象に調査すれば集落の94%をカバーできるとして次回の研究会にさらに調査実施案を示すとした。ただし、自給的農家もいなくなった集落もあり、それでも寄り合いなど集落活動が行われている実態があるとして、「経営体への調査では集落の実態とずれるのではないか」との指摘も出ている。
また、経営体調査で実施する場合、集落活動への関わりについて「経営主」か、集落に住む「世帯主」かを明確にすべきことも指摘された。そのほか調査項目から「実行組合の有無」がなくなったことや、「地域資源の保全」について農地、水路など具体的な資源ごとに調査すべきとの意見も出た。
農水省はこれらをふまえて12月6日に第4回の研究会を開き、調査案を示す。
農業経営体調査で集落調査を代替させる案について、とくに中山間地域では農業経営体ゼロや1つしかない集落があり、代替案では中山間地域の姿がますます見えなくなるとの声も出ている。
(関連記事)
・農林業センサスの農業集落調査 学者の反発受け実質的に継続へ 野村農相が方針(22.11.8)
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