関税発動で牛肉の注文キャンセルも 米国関税の影響を農水省が分析2025年4月24日
農水省は4月24日、自民党の農産物輸出促進対策委員会に米国の関税措置による農産物への影響について概要を報告した。
あいさつする根本幸典農産物輸出促進対策委員長
農水省は4月8日に「農林水産物・食品分野に係る関税措置対策チーム」を立ち上げ輸出に取り組む生産者や事業者、輸出品目団体からヒアリングを行っており、22日時点で延べ451件の聞き取りを行った。
それによると牛肉では、一部の取引先から注文のキャンセルがすでにあったという。日本から米国への輸出にはこれまで枠外税率として26.4%かかっていたが、今回の追加関税が10%でも追加分をどこが負担するのかがすでに課題となっており、追加関税が当初の24%となれば影響は大きいと関係者は懸念している。
米は関税による現地価格が上昇し、米国産米との競争力の低下が懸念されている。実際、現地の取引先から日本産米の取り扱いを考え直さなければならないと声もあがっているという。
輸出額の55%を米国向けが占めるブリは、関税による現地価格の上昇や取引先からの値下げ要求を関係者は懸念している。また、ぶりの多くはレストランで提供されていることから、現地の外食需要の減少に伴う影響も懸念されている。
また、輸出額の44%を米国向けが占める緑茶は関税による現地価格の上昇や、米国の物価高で取引量や取引グレードへの影響が懸念されている。一方、品質面では中国産と差別化されており、中国産へ大きくシフトする可能性は低いという。
ヒアリングによると事業者ごとに米国向けのシェアが異なるため、事業者ごとに影響が違い、米国向け輸出を伸ばしてきた事業者のなかには相当の販路を失うとの懸念が出ている。
牛肉でいえば対米輸出の8割を占める鹿児島、宮崎、兵庫への影響が大きい。緑茶は鹿児島、静岡で7割を生産し、米国に高単価の抹茶を輸出している。
米の米国への日本の輸出量は0.9万t(2023年8月~24年7月)で、中国は8.6万t輸出している。関税がかかることによってカリフォルニアで生産される米国産米と競争が厳しくなるが、一方、中国産米に145%の関税が課せられれば輸入量の減少も考えられるため、農水省は米国と諸外国との交渉状況も注視する必要があるとしている。
農水省は4月3日に関税措置によって事業者の資金繰りに支障が出ないよう償還猶予や資金の融通配慮を金融機関に要請したほか、4日には特別相談窓口を本省と地方農政局に設置した。
11日閣議決定した基本計画では輸出の促進を盛り込み、牛肉は2024年実績648億円を30年に1132億円と1.7倍に、米は同136億円を922億円へと7倍に伸ばす目標を掲げた。
部会では、追加関税の撤廃を求めるとともに、米国以外の輸出先を開拓する必要性や、交渉の長期化によって生産者、事業者の資金繰りが厳しくなるとして早期の妥結を求める意見が出た。
一方で米国からは農産物輸入の拡大も求められる懸念もあるが、宮下一郎総合農林政策調査会長は「基本計画は食料安全保障の強化が大方針。国益を損なわないようわが国の立場を訴え毅然とした態度で(交渉に)臨んでいただきたい」と述べ、上月良祐農林部会長は「関税の問題は一歩も引いてもらっては困る」と政府に要望した。
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