農林中金法 外部理事登用に向け改正 農水省2025年12月4日
農水省は12月4日、農林中央金庫法の改正の検討方向を明らかにした。外部の専門人材の理事への登用に当たり、現在は禁止されている外部理事の兼職・兼業を認める改正を検討する。
12月4日の自民党総合農林政策調査会・農林部会合同会議
自民党の総合農林政策調査会と農林部会の合同会議で説明した。
農水省は、欧米の金利上昇によって債券に多額の評価損を抱えるなどで2024年度に約1.8兆円の赤字を発生させた農林中央金庫について昨年、有識者検証会を開催し、今年1月に理事を含め組織全体で専門性の高い外部の見識を導入することなどを提言した。
これを受けて農林中金は2月に対応方向を公表し、財務戦略と投資執行にかかるガバナンスを明確に分離することや、財務戦略委員会の設置と専門性を持つ外部識見者の招聘などに取り組むこととしている。
そのうえで農林中央金庫法が改正された場合は、非常勤の員外理事の登用も検討することを明らかにしていた。
農水省は今後の検討方向として外部の専門人材を理事に登用する際、外部理事が兼職・兼業できるように農林中金法を改正するとともに、農林中金のガバナンス強化が着実に実施されるよう農水省と金融庁が連携してモニタリングと指導を行う。
また、農林中金による農業金融の強化も進める。農林中金は農協等の資金を預かり運用して会員に還元することを目的とされているが、農林水産業者への資金融通は目的として明示されていない。
一方、農林中金は2月に公表した対応方向で農業や食農バリューチェーンへの融資・出資等に「これまで以上に積極的に取り組む」方針を公表した。このため現在は任意業務となっている農協等の構成員(農林水産業者)向けの融資を必須業務に位置づけるとともに、農林中金法の「目的」に農林水産業者への資金融通を規定する改正も検討する。あわせて出資に係る認可手続きの緩和も検討する。
農水省はこのほか農業近代化資金融通法の改正も検討する。
農業近代化資金は農協など民間金融機関が民間資金を原資として農業者や共同利用事業を行う者に低利で融資する制度資金で民間金融機関に国・都道府県が利子補給をしている。2024年度の農協系統の農業融資額3648億円のうち、約15%、565億円が農業近代化資金となっている。
ただ、償還期限が15年以内と短いことや、貸付限度額が個人で1800万円、法人で2億円と低く改善を求める要望がある。また、資金使途に農地取得や借り換えも追加してほしいとの声もある。
こうした要望を踏まえて農水省は農業近代化資金の貸付条件を拡充する方向で法改正を検討する。
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