農政:森田実と語る!どうするのかこの国のかたち
「災害対応はスピード感で」自民党・二階元幹事長が防災を語る【森田実と語る!どうするのかこの国のかたち】2022年4月5日
今月からスタートする新シリーズ「森田実と語る!どうするのか この国のかたち」。政治評論家の森田実さんが、様々な課題について各界のキーマンに迫ります。第1回目は、自民党元幹事長で現在、党国土強靱化推進本部の本部長を務める二階俊博氏です。災害が頻発する日本で政治家は災害対策にどう向き合うべきか。また、農業が盛んな和歌山県選出の国会議員として、日本の農業はどうあるべきと考えているのか。森田さんがインタビューしました。
二階俊博自民党元幹事長(左)と森田実氏
災害対応は現地到着と同時に実行
森田 今年3月16日に東北地方で震度6強の地震がありました。日本が誇る東北新幹線まで止まり、改めて国土強靱化が日本の中心課題として浮かび上がりました。地震活動が活発化して南海トラフを含めて発生の確率が高まっているとの報告書も出ています。こうした状況をどう見ていますか。
二階 政治で大事なテーマはたくさんありますが、やはり災害から人々の命と暮らしを守ることが最も大事なテーマだと思っています。災害が発生したら一刻も早く現地に行く、どう対応すべき考えながら現地に向かい、到着と同時に対策を実行する。これが大事です。一口で言うとスピード感です。
森田 阪神淡路大震災が起こったときに、直ちに被災地に駆けつけた国会議員が二階さんだったんですね。自分の選挙区の和歌山で物資を調達して救援に行った。その後、国会議員が次々と現場に入った。そういったスピード感、実践力を二階さんは政治家としての規範を示されたと思っています。
二階 一刻も早く現場に駆け付けて適格な判断をして対応する。これが大切です。被害に直面した方は正常な判断ができないほど災害で頭がいっぱいになっているんですから。そこで早く助けてあげることが大事ですね。
森田 それと東日本大震災が起こったときもすぐに現地に入りました。救援物資や支援物資の他に、そこで何をされたかというと、お亡くなりになられた方のために棺を用意しようとした。いろんな政治家と付き合いましたが、棺のことまで考えたのは二階さんだけでした。阪神淡路大震災で現場を踏んだ経験も生かしたのですね。きちんと弔うことで被災者は初めて一歩踏み出せる。それはやっぱり政治家らしい行動であり、大事なことだと思いました。
二階 被災した方々は経験のないことに直面したわけです。やっぱりダンボールでは解決ができませんよね。遺族が納得しません。
自民党元幹事長 二階俊博氏
津波対策推進法と「世界津波の日」
森田 東日本大震災の前、自民党が野党の時に二階さんは津波対策推進法を提案しました。2010年2月のチリ地震の時、避難した人が非常に少なかったことを踏まえ、これではいけないと法案出したが当時は民主党政権で同意が得られなかった。ところが東日本大震災で甚大な被害が出たあと、与党の民主党も説得に応じて2011年6月に満場一致で津波対策推進法が成立しました。
さらに日本での津波対策の唯一と言っていいほどの成功体験である「稲むらの火」(注)があった11月5日を「世界津波の日」として国連に提案し、国連総会で決まった。これで津波対策が世界的課題になりました。
二階 津波を知らない、津波の経験のない人々は相当数地球上にいるわけですよね。そうした中で津波と言っても誰も最初はわからず、多少困難はありました。ただ、一つの国や一つの地域で解決つかない課題であり、日本が遭遇した経験を生かして、世界中どこで起きても直ちに対応できるようにしようという発想でしたね。
森田 そのうえで東日本大震災後に首都直下や南海トラフを見据えて、大規模災害・事故から国民の生命や財産を守る国づくりを進めるための「国土強靭化基本法」を、二階さんは野党のときに作り、自民党政権に復帰した直後の2013年に成立させました。
二階 当時は野党だったけど与党を説得する自信はありました。災害が起これば多くの人が亡くなってしまう。また、被災地の暮らしを取り戻すための復旧や復興に多額の費用がかかる。この対策への準備ができてなくてどうするかという思いがありました。起こってからでは遅いんですね。災害だけは先手先手で行かなきゃいけない。
日本には昔から、この橋は危ないがなかなか予算がつかない、今度、水が来て橋が流れたら付け替えることができるなどと考える風習がありました。次の災害を待とうなんてバカなこと言っていたんですよね。災害に立ち向かっていかなきゃいけない。先手先手が必要だと私は思っています。
森田 日本で必要なのは自然災害に対して国民に安心を与え、安全な社会をつくるための強くしなやかな社会づくり、すなわち国土強靭化を実現する、これが最も具体的で国民の納得のいく政策だと思います。
二階 ひとたびやられたら、誰も文句なく対策ができる。しかし、先手を打たなければならない。そのためにどうしたらいいか。研究、調査、勉強を重ねておかないとだめです。日頃から災害対策を考えておく必要がありますね。備えあれば憂いなしという言葉は素晴らしい、含蓄のある言葉です。ただ、備えると言っても知識がなければ対応できない。そういう意味では日頃からの勉強、子供の教育なども大事ですね。災害が起きたときに大事な親兄弟や近所の人を死なせない、1人も死なせないぞという、そういう活動、そのためのセンスや勇気を育てていくことも大事ですね。
「国会議員に田んぼを作らせたらどうか」
森田 続いて農業について触れます。二階さんの地元の和歌山県はみかんで日本をリードしていますし、日本を代表する農業県といえると思いますが、私は今、日本の農業を立て直す必要があると思っています。自給率37%に甘んじてはいられないという意気込みが必要だと思っていますが、どうお考えですか。
二階 おっしゃる通り、日本の農業を再興・発展させることは大事です。農業基盤の整備は国の力の基本ですよね。このためためにわれわれ政治家はもっと情熱を注がないといけないと思っています。
だから僕は言うは易く実現は難しいけど、国会議員に田んぼを作らせたらどうかと思い、実際に田植えから稲刈りまで行った。農業の重要性は田んぼに入ってみればわかる。戦時中に田舎に疎開したとき、私は当時小学校1年でトンボをとることしかできなかったけど、農業の実情をつぶさに見ながら農業の重要性を肌身で感じた経験があります。
森田 国土強靱化の1つの柱に農業強靱化を置いていただき、日本農業の復興、少なくとも自給率50%を超えるまで頑張っていくという方向でやりたいですね。
(注)「稲むらの火」
1854年の安政南海地震津波のとき、村の高台に住む庄屋の濱口梧陵が、地震のあとの津波の来襲に気付き、貴重な財産の稲むらを燃やして危険を知らせ、津波から村人を救った出来事をもとにした物語。
政治評論家 森田実氏
新シリーズ開始にあたって 政治評論家・森田実
農協協会から、「森田実と語る!どうするのかこの国のかたち」の新企画を提案していただいた時、自分の年齢を考えて辞退すべきだと一旦は考えましたが、日本農業を復興し食糧を自給できる国にしたいとの激しい情熱に押されて辞退することができず、引き受けました。
実は私の母の実家は農家で、私自身、幼少期から高校卒業まで農家をしました。戦時中は皆兵隊にとられてしまい労働力不足になり、大人と同じ農業労働をしました。旧制中学時代は学徒動員で農村に行き食糧生産に従事しましたから、農業は私の原点です。
農協協会の理念と主張は正しいと思います。日本は協同組合理念を社会政治運営の主軸におくべきだと思います。特に考えるべきは食料自給率37%の克服です。日本国民が安心して暮らすためには自給率の急上昇が必要です。日本農業を思う高潔な理想に共鳴し、この企画に全力で取り組みます。
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