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農政:田代洋一・協同の現場を歩く

【田代洋一・協同の現場を歩く】サンファームしらたか(山形) 定年制で世代交代 後継者確保率5割誇る2024年7月4日

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横浜国立大学名誉教授 田代洋一氏

横浜国立大学名誉教授 田代洋一氏

世代継承計画

集落営農や農業法人等は、しっかりした経営継承計画をもつことが必須になっている。それには、置かれた状況を冷静に踏まえつつ、関係者の世代を超えた長期の合意形成が要る。その点を山形県白鷹町の株式会社・サンファームしらたかに見る。

農事組合法人から株式会社へ

最上川と国道287号の東隣りの中山間の水田・果樹地帯、その大字・鮎貝(水田200ha、畑100ha)がサンファームの活動エリアである。まず6戸の農家の後継者が、1992年にJAリース事業で共同育苗の任意組織・鮎貝稲作組合を立ち上げた。1995年からほ場整備事業が始まり、担い手に集積すれば地元負担が2%になるということで、98年に同じメンバーで農事組合法人を立ち上げた(メンバー36~43歳、父59~72歳)。集落によびかけた「集落営農」ではないが、地域の要請に応えた「地域の後継者」の位置づけはあった。

水田だけ利用権設定を受け、当初は31ha。畑は地権者農家に残る。メンバーの家では、親世代がリンゴ、ラ・フランス等に取り組む。6人の配偶者は全員が製造業、介護等の他産業従事だ。家の収入は法人給与とほぼ半々だった。ほ場は1筆30a以上が6割程度で、200haほどを再整備する準備が進んでいる。

2021年に株式会社化した。あらゆる事業の可能性を追求し、農外部門にもチャレンジするのが最大の理由だった。サンファームは原料仕入れも行い、漬物や甘酒の製造販売にも取り組んでいる。しかし真の理由は、サンファームが企業経営的センスをもち、それには「株式会社」の形がふさわしかったからではないか。すなわち経営理念は「農業の未来への挑戦」。「未来」とは「若さ、可能性、未知数、進化」、「挑戦」とは「探求心、向上心、ポジティブ・モチベーション向上」と説明している。サンファームはこれを如何に継承するかを最大の課題にしている。

経営の概況

現在は、水田82ha、畑13haの保有で、水田のうち2haはやむを得ず購入したものだ。畑は元は桑畑で、その半分は法人が荒廃農地を自己資金で伐根・復旧したものだ。

水田は、地域農家の5割(210戸)から500筆を超す借入だが、大字内にとどまっている。利用権の設定は、水田は8割、畑は3割という。水田小作料は10a1万200円で、あぜ草刈りや水管理は法人で行う。幹線水路は鮎貝保全組合で取り組む。

主な作付けは主食用米61ha、エダマメ(転作)5・4ha、啓翁桜等の花木13ha、野菜2・4ha(メロン33a、ホウレンソウ17aなど)。水稲・エダマメ・メロンの作期が4月中旬~10月中旬、啓翁桜と冬野菜が10月~3月中旬で、積雪地帯で周年就業できる。出発点だった水稲育苗の箱数は4・5倍に伸びている。

水稲の10a当たり労働時間は県平均より25%低い。直播(は)は8ha(4haはWCS)で雑草対策に苦しむ。中干しはカーボンクレジットに取り組み、また秋耕をしている。スマート農業の取り組みはドローン導入と直進型田植え機程度だ。

売り上げは1・4億円、助成金等900万円は準備金に回す。10年で売り上げを2億円にするのが当面の目標である。

65歳定年制導入

サンファームは、2010年に65歳定年制を導入した。直接の動機は親世代の農業者年金の受給要件のクリアだが、60歳を過ぎると大きな投資等に「受け身」になりがち、といった理由もある。

定年後は70歳までは法人の臨時就業(週30時間勤務)が可能で、それ以降は随時パートになる。週30時間以上も「可」だが、地域の役もあり、実際には30時間以内である。「やさしく見守ってネ」という位置づけだが、実は法人にとっては貴重な労働力である。

定年制により創業時のメンバーは5人が既に退職し、最後の1人も近づいている。創業者6人の子弟のうち、2人は正社員から取締役になり、1人は正社員を継続、1人は正社員から他産業に転じた。「いえ」としての後継者の歩留まり率は50%というところだ(婿養子1人を含む)。

正社員は5人(1人は前述の後継者、1人は事務の女性)、2024年にはさらに1人採用する。正社員数は定年組の就業度合との兼ね合いで決まる。社員は現社長が引き抜いてきたり、本人が希望してきたりで、人材確保に困難はしていない。給与は町役場に準じる。週休2日制(春秋の農繁期は週休1日)、8時~17時(6月上旬から9月中下旬は昼休み1・5時間のため17時30分まで)。

第二創成期への世代継承

サンファームは株式会社化と同時に、5カ年の事業計画、10カ年の経営計画をたて、そこに役職員体制も組み込んでいる。今や、創業者世代の全員が役員から退き、40代そこそこの者がトップになり、当分は役員2人体制で「第二創成期」に入ることになる。

次期トップは後継者役員のうちから出ることになろうが、決め手は「後継者」ではなく、「経験」だ。現トップは、他の役員の了解の下、トップハンティングを試みたが、相手の職場の関係等で実現に至らなかった経験を持ち、「いえ」へのこだわりはない。

65歳定年制の導入の前提は、水田・果樹の複合経営地帯として、親世代にリタイア後の仕事(果樹作と臨時雇用)を用意できたことだ。そのさらなる土台には創業者の後継者確保率5割という、3世代世帯率が最も高い東北・山形の特殊性もあろう。

しかし婿養子も含めての5割確保であり、小さな組織ゆえにリスクを抱えるのは他組織と同様である。サンファームの実践は、集落営農等にとっても、経営の世代継承に何が必要かの一つのヒントになるが、その具体は後日に譲る。

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