農政:現場から考える農政改革
【現場から考える農政改革】(1)「国産を食べる」食料政策の確立を2014年2月12日
北海道農協青年部協議会・平岡敏幸副会長
米政策や経営安定対策の見直し、農業の多面的機能に着目した直接支払い制度の創設など、今年から新たな農業政策が動き出す。しかし、誰のための何のための農業政策かが忘れられてはならない。その視点を議論に生かすには現場からの発信を強める必要がある。全国の生産現場で活躍する青年農業者6人に思いを聞いた。
◆交付金も必要だが…
美幌町で小麦、てん菜、大豆、加工用バレイショの輪作とモチ米とアスパラ栽培、和牛の繁殖をやっています。両親と妻、あわせて4人で営農しています。畑作面積は20haほどですから原料作物の経営としては厳しい規模だと思っています。そこでアスパラ栽培を導入しました。
畑作物は農業政策が大きく影響すると思っています。ただ、それは交付金を手厚くするためにお金を使ってほしいということではありません。経営を維持していくには交付金が必要という現実はもちろんありますが、国民は国産の農産物を食べるという意味での政策がきちんとしていることが大事ではないかということです。
(写真)
平岡敏幸さん
◆農業には「時間」が要る
小麦にしても生産を増やす努力をしていますが、価格が少し上昇すると海外からの輸入もありますから、売れ残ってしまうという現状も出てきています。JAなどがきちんと売り先を確保したうえで、私たち生産者も作付けすることが大事になっていますが、それでも国民は国産農産物を食べるという前提でなければならないと思います。
原料作物は食品加工会社が求める品種を生産することが必要ですが、産地と実需者の評価に時間差があることもあります。たとえば、パン用の超強力小麦の「ゆめちから」も実需者が使い方を分かるまでまだ時間がかかるという問題です。もちろん小麦に対する交付金があるから生産意欲にはつながりますが使う側の評価はどうなのかという先行き不透明感もある。逆に実需者から「この小麦を」と言われても、気候に合うかどうかも含めすぐに生産できる体制にはなれません。生産者もすべてが足並みを揃えて技術を向上できるかという問題もあり、そもそも農業には「時間」が必要だということをふまえる必要があると思います。
(写真)
JAびほろ青年部の地元の小学校での「食育」授業風景
◆輪作維持にも課題
輪作を維持するという課題もあります。最近、地域では効率のいい小麦の作付けが増えていますが、労力がかかり病害虫にも悩まされるてん菜やバレイショの作付けが減れば地力の問題も出てきます。
こうした生産現場の実態を理解した政策議論をしてほしい。生産者個々が努力をすれば日本農業は生き残れると盛んにいいますが、地域農業を維持するためにはやはりJAなど農業団体が生産にしても販売にしてもまとまっていくことが大事だと思います。
美幌町は人口2万人。農家戸数は約400戸ですから1200人ほどは農業をしていると思います。ただ、農業関連企業も含めれば農業に関わる人々はもっと多い。一部の生産者だけ生き残れるような政策では、私たちの町は町としての機能が残るのかどうか。農業がなくなれば町もなくなるということです。
最低でも今農業をやっている人たちを減らさない政策が必要だし、できれば農業者が増えることも大事です。さまざまな農業者が農業を維持できる政策を国は考えるべきだと思います。経営難で仲間の農業者がいなくなるようなことがなく、地域でこれからも一緒にやっていきたいと思います。
(写真)
25年12月の北海道青年部の豪州研修より
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