農政:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で
【現地ルポ】糸島市(福岡県) ビジョン掲げ実践 "地産地消"を重視 協同組合間協同を核に2016年10月12日
JA糸島は、福岡県西部に位置し福岡市および佐賀県唐津市と隣接した地域である。昭和37年の合併以来一貫して生産・販売に邁進してきた。
糸島市の農業粗生産額は、各地域が軒並み減少しているにもかかわらず150億~160億円を長い間維持している。福岡県全体の農業粗生産額がピーク時2800億円で現在は2170億円(平成26年度)であることを考えると驚異的である。
正組合員は5927人、准組合員1万1179人で組合員は合計で1万7106人である。正組合員は経営移譲などに伴い減少しているが、彼らが准組合員になるなどして准組合員数は増加している。政府が信共分離の根拠としていうように全く農業に無関係の人だけが准組合員なのではなく正組合員OBも含まれているのだ。
JAの販売高はかつて107億円をピークに農産物輸入自由化の進展と共に100億円を割り70億円程度まで落ち込んだが、この数年は100億円を超え、平成27年度実績では105億9000万円と、ほぼピーク時に匹敵する販売高に回復している。対談で中村組合長が紹介しているように、時代と共に販売品の取り扱い実績シェアは変化している。
この回復の原動力はなんといっても、消費者との交流の拠点であるJA糸島直営の直売所「伊都菜彩」の開設であろう。平成19年4月の開店以来約8年半、平成27年7月17日には来店者累計が1000万人を達成した。実際、土・日・祝日は開店前から駐車場が満車になるほどだ。また、地場産学校給食についても、米飯学校給食回数は週4回、地場産青果物割合は約40%である。この地産地消を象徴するかのように、JA糸島本所の入り口には「身土不二」の大きな看板が立っている。
農業に関しては、「JA糸島農業ビジョン」を毎年の総代会において提出し、担い手の現状、農業者の所得増大をめざす販売品販売高目標、農業生産の拡大に向けた農地利用と作付け目標、地産地消の取り組み目標及びこれを達成するための営農指導体制の整備目標などを示している。
例を挙げれば、平成27年度末時点で認定農業者は372経営体(戸別農家339、法人33)で、2090haとなっている。糸島市の農地面積が約5800haであるから36%を占めていることになる。さらに、認定農業者志向農家(戸別)が189、法人が9あり、さらなる農地集積と関連させて今後の有り様を示している。販売品販売高についても105億9000万円から平成30年度には112億3600万円へと伸ばす計画である。この販売高の伸長と連動させながら品目・品種ごとの農地利用・作付目標を提示している。
特徴的なことは、第一に、販売取扱高の26%を占める野菜類の土壌改良あるいは肥料で管内の畜産農家と連携して牛糞や鶏糞をブレンドした有機肥料を提供していることだ。また地元の漁業者と連携し、養殖した牡蠣ガラを粉にした石灰を販売するなど地域内資源循環活用型農業を実践している。
第二に、対談にも出たが食管法時代に特別栽培米を介して事務代行を積極的に行った。消費者側の窓口はグリーンコープという生活協同組合である。まさに、協同組合間協同による食と農を結ぶ実践事例を早くから実施している。
第三に、ラー麦という小麦をご存じだろうか。ラーメンのために生まれた福岡県産小麦である。福岡県、JA、地元の製粉業者、生産者が一体となって連携し研究して開発したラーメン用小麦である。このラー麦には生産条件不利補正交付金とは別に2000円を超える交付金が出されている。今では、ラーメン屋の看板に「ラー麦を使用しています」と書かれているほどだ。
まさにJA糸島は「JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で」を先取りするかのように様々な活動を展開している。
(写真)直売所「伊都菜彩」
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日