農政:農業協同組合研究会 第30回研究会
【農業協同組合研究会第30回研究会】食料自給率の向上をどう図るか(上)2019年12月19日
新基本計画の議論に求められること
農業協同組合研究会(会長:谷口信和東京大学名誉教授)は12月7日、第30回研究会を東京都内で開いた。テーマは「食料自給率の向上をどう図るか-食料・農業・農村基本計画に求められるもの」。現行の基本計画の見直し議論が進んでいるが、新基本計画はどうあるべきかなどについて、谷口信和東京大学名誉教授、安藤光義東京大学教授の2人の学識者に加え、青年農業者の立場からJA全青協(全国農協青年組織協議会)の小林大将副会長が講演した。司会は岡阿彌靖正元JA全農専務が務めた。
自給率向上をめぐって真剣な討議が
報告1:基本法改正も視野に議論を
谷口信和東京大学名誉教授
食料・農業・農村基本法下の農政は、基本計画によって基本法の政策方向を実効性のある施策として担保することになっており、情勢に合わせておおむね5年ごとに見直すことになっていた。
しかし、2001年のBSE(牛海綿状脳症)の発生で食料が前提としていた安全性が崩れ、本来なら基本法は第2条を「安全な食料の安定供給の確保」と改正すべきだった。
その意味では、基本計画の策定に合わせて基本法自体の改正、変更を不断に行っていこうとすることが必要だ。基本計画は国会への報告事項にとどまるが、基本法の改正となれば国会での審議事項となり、基本計画とともに常に国民的な議論になるからだ。
◆品目別自給率の向上
食料自給率が史上最低水準のこの国では、畜産物消費が伸びている(表1、図1参照)。高齢化による畜産物の消費減、水産物の消費増という仮説は誤りだった。人口減少のなか畜産物の国内消費は増大し国内生産も増加しているが、それを上回って輸入が増加している。
したがって、自給率問題解決の道は、畜産物の品目別自給率の向上と飼料自給率の向上にある。飼料自給率を考慮しない総合自給率46%とは、言い換えれば飼料自給率100%が達成されたときの水準である。
飼料自給率向上のためには水田の活用、とくに湿田を利用した飼料用米など水稲が重要になる。そうなればどこでも対応が可能になる。
大規模経営ほど麦・大豆と並んで飼料用米を導入している実態があり、構造改革を進める上でも飼料用米の安定的な政策対応は不可欠。耕畜連携を進めれば水田での立毛放牧さえも可能だろう。ただし、飼料用米などを本格的に生産軌道に乗せるには助成金を耕種経営だけでなく畜産酪農経営にも与えて両側からの推進体制をつくるべきだ。
真に自給率向上を図るのであれば、耕作放棄地40万ha、荒廃農地20万ha、遊休農地10万haの解消策の明確化が必要であり、基本計画で示される農地面積見通しの目標化、生産努力目標の年次別計画化などの工程表も必要だ。
また、多様な農地を利用し尽すには効率的かつ安定的な農業経営だけでは無理であり、それらも含めた多様な担い手による農業構造を考えていくことが大切であり、そうなれば「効率的かつ安定的な農業経営」で農業構造改革を実現するという方針から脱却する基本法の改正が必要になる。
耕種と畜産の結合と連携による地域農業像も明確にすべきだ。
発生が止まらない豚コレラ対策を野生イノシシ対策と豚舎へのウイルス侵入防止対策だけで考えるのではなく、畜舎周辺の里山への大家畜の放牧や、耕作放棄地を再生利用した飼料用米の供給なども重要になる。食料自給率問題は農業構造をどうするのかという問題と別ではない。
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