農政:原発処理水海洋放出
福島だけの問題ではない 国民的議論を 福島県生協連 佐藤一夫専務理事【緊急特集:原発処理水海洋放出】2021年4月16日
原発処理水の海洋放出決定はコロナ禍で行われた。感染者がさらに拡大し政府が対策に追われる前に決定したのではとの指摘もある。福島県生協連はJAや漁協とともに協同組合間提携で福島の農水産物を支えてきた。佐藤一夫専務は、コロナ禍での今回の政府決定は「国民的議論ができないなかでの暴挙」と批判する。
福島県生協連
佐藤一夫専務理事
福島県では、震災後から実行委員会方式で「原発のない福島を! 県民大集会」を続けてきました。農協や漁協の代表のほか、福島県生協連の吉川会長もその呼びかけ人の一人であり、そこではトリチウム汚染水の海洋放出については反対だとして署名運動に取り組んできました。
また、地産地消ふくしまネットという協同組合の連携の取り組みもあり、そこにはもちろん農協も漁協も入っていて、漁協は海洋放出は絶対反対だという姿勢を示していますから、当然私たちも賛同しており、今回の政府の結論に対しては遺憾だということです。
私たちとしては、新型コロナウイルス感染症が拡大の一途を辿っている状況で賛成、反対の意見を述べたとしても、国民的議論にならないのではないかと考えてきました。周辺諸外国にも伝わっていないし、国民も廃炉や貯蔵タンクについて理解を深めることにもなっていない。世界中が新型コロナウイルス感染症収束のための戦争状態になっているなか、ある意味どさくさに紛れて、大事な汚染水処理の結論を出すという暴挙は、許すわけにはいきません。やはりトリチウムを含む処理水については、福島県民や漁業者だけの問題ではなくて、国民みんなで考える大事な問題です。
風評問題は、生産者VS消費者という対立構図を作ってしまいました。しかし、消費者はきちんとした情報が得られれば、安全を確認して、買って生産者を支えるということができます。この10年間福島でやってきたことはたとえば、福島市内の農地がどれだけ汚染されているかを知らないで、闇雲に怖がっているだけではいけないと、JAや大学と連携して土壌スクリーニングプロジェクトを立ち上げて、当時のJA新ふくしま管内の農地全筆で測定しました。そのために人手が必要になりましたから、全国の生協に呼びかけて31組織361名のボランティアに参加してもらいました。土壌がどれだけ汚染されたかを知ることは、消費者にとっても非常に重要だということから、生産者と消費者が一緒になって測定作業をしました。農地というだけでなく、自分たちが暮らしている土地だという気持ちかでもあります。
そのうえで土壌の汚染度に応じて、どういう作物なら放射性物質が移行しないかとか、あるいは吸収抑制対策を実施すればセシウムは移行しないといったことが分かってきましたし、さらにJAが出荷前の検査にしっかり取り組んでいることなども現場で見学して理解を深めるなど、協同組合間連携で福島の農業、農産物の安全性を広く消費者の方々に知っていただく運動をやってきています。福島の農産物の安全性については、生産者と同様十分に知っていますし、そのことを全国にも発信してきました。
また全国の生協から被災地に視察に来る人もいますから、私たちが農産物や海産物の現状や検査の現場などに案内して、理解を深めてもらう取り組みもしてきました。来られたみなさんは理解をしますが、ではどこで福島産を買えばいいの、という声も出ました。買って支えたくても流通の問題があって、流通業者が消費者は買ってくれないだろうと福島の農水産物を扱わないということもありました。そこで応援隊として、福島の桃やりんごを全国の生協を通じてみなさんに利用してもらうという取り組みもして、販路拡大に一緒に取り組んできました。
今回、政府は政府の責任で風評被害対策をすると言っていますが、実際に被害が出れば東電が損害賠償するわけですから、政府の責任とは何かということになります。福島にも寄り添わないで結論を出したということだし、国民に対してきちんと説明する責任がありますが、説明はせず、ただ、安全だと言う。
その理由は全世界の原発からトリチウムは放出されているから問題はないということです。しかし、本当に問題はないのか。よくよく調べると、日本でも原発の周辺で白血病が増えているのではないかとの報告や、欧米でも原発周辺の子どもたちの癌の発生率が高いといった問題も報告されています。しかし、そういう情報は、関心あるごく限られた人しか接しません。それどころか、トリチウムは雨水や海水にも含めているから安全だと言うだけです。そうではないと指摘している情報もきちんと出して、国民が判断すべきです。今回は国が判断だけ先にしてしまっている。漁業者も農業者もただ反対しているわけではなく、きちっとやるべきことをしてから判断するべきだということを主張していると思います。
その点に関していえば、国も東電も福島県の漁業者との約束を反故にしてしまった。漁業者の意見を聞いて了解が得られないうちは処分しませんということを約束したわけです。しかし、今回はタンクが満杯になりそうだからとか、廃炉が滞るかもしれないといった、その時々のご都合主義で結論を出す。これはおかしい。唐突な判断はやはり暴挙だといわざるを得ません。
重要な記事
最新の記事
-
「JAcom」を4月8日全面リニューアル 農業・農協の情報をより分かりやすく 探しやすく2026年4月1日 -
【人事異動】農水省(4月1日付)2026年4月1日 -
【人事異動】農水省(3月31日付)2026年4月1日 -
【スマート農業の風】(25)環境配慮型農業との融合2026年4月1日 -
首相はウィーン条約をご存知か【小松泰信・地方の眼力】2026年4月1日 -
【JA人事】JA氷見市(富山県)新組合長に浮橋勉氏(3月24日)2026年4月1日 -
全国の総合JA数 490に 4月1日2026年4月1日 -
【JA人事】JA成田市(千葉県)新組合長に岩館秀明氏(3月25日)2026年4月1日 -
4月の野菜生育状況と価格見通し キャベツ、レタスの価格は平年を下回って推移 農水省2026年4月1日 -
東海代表決定「JA全農杯全国小学生選抜サッカー大会」優勝は「ヴェルダン」2026年4月1日 -
対話練習システム「AIロープレ」を全国JAで導入 対話力向上で多様化するニーズに対応 JA共済連2026年4月1日 -
児童養護施設へ愛知県産いちご「愛きらり」を寄贈 JA愛知信連2026年4月1日 -
【役員人事】農研機構(4月1日付)2026年4月1日 -
【役員人事】農林年金(4月1日付)2026年4月1日 -
米穀機構を米のコスト指標作成団体に認定 農水省2026年4月1日 -
【役員人事】三菱マヒンドラ農機(3月30日付)2026年4月1日 -
井関グループ入社式を開催 小田切社長が新入社員にメッセージ2026年4月1日 -
日本農業 子会社のジャパンベジタブルを吸収合併2026年4月1日 -
新規バイオスティミュラント剤「ノビテク」国内販売開始 住友化学2026年4月1日 -
情報発信ショートドラマ「農薬GIRLとオーガニック彼氏」公開 日本農薬2026年4月1日


































