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農政:許すな命の格差 築こう協同社会

【特集:許すな命の格差 築こう協同社会】現地ルポ:JAやさと(茨城)地域活性化に主眼 担い手育成を重視 神生組合長と廣澤専務に聞く2021年6月8日

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全国的に農協合併が進む中、茨城県には合併せずに独自路線を歩む農協がメロンで有名な茨城旭村農協など四つある。その一つが石岡市にあるやさと農協だ。その柱は産直と有機農業。産直は、現在ではどこの農協も取り組んでいるが、有機農業を運営の柱にしている農協はまれだ。神生(かのう)賢一組合長(68)と廣澤和善専務(66)に同農協の現状と課題などを聞いた。(聞き手・構成:客員編集委員 先崎千尋)

筑波山を望むやさとの風景

独自路線を選択

――最初に、お二人の略歴を。

神生組合長神生組合長

神生 千葉大学園芸学部農業別科を卒業後、愛知県のバラ園で研修を受け、1974年に就農。バラ切り花の栽培を始めた。県内では三番目だった。現在の規模は1400坪(4620平方㍍)。長男が後を継いでいる。石岡地区農業研究クラブ会長、日本ばら切花会長などを経て、2017年に農協の専務になり、昨年4月から組合長を務めている。常勤になったのは、仲間から「次世代の担い手が育つような元気のある産地づくりを目指す農協にするように」と強く勧められたから。

廣澤 組合長と同じに千葉大学園芸学部農業別科を卒業後就農。葉タバコと養豚をやっていたが、農協が野菜の産直を始めたので、レタスなどの野菜栽培を始めた。有機栽培に関心があり、それで経営が成り立つことを証明したかった。有機JAS制度がスタートしたのちの2002年に有機栽培部会の部会長になり、2014年に農協の監事、昨年に専務に就任した。やはり長男が後を継ぎ、レタス6ha、ネギ1.5haを栽培している。

食農教育も視野に

廣澤専務廣澤専務

――平成の大合併で、旧八郷町は石岡市と合併し、農協も小美玉市や小川町の農協を含めた新ひたち野農協が2015年に発足した。その枠組みにどうして入らなかったのか。

神生 旧八郷町区域には畜産を主体とした小桜農協があったが、1988年に一緒になった。新ひたち野農協の発足の時は、組合員の中に、それに加わらず、独自の路線でやっていこうという機運が強くあり、合併しなかった。

――独自にやっていけるという根拠は、産直と有機農業、それに農協が経営している温泉施設「ゆりの郷」があったからか。

神生 そうだ。

――データを見ると、2018年度に約8000万円の赤字を出している。この原因は。

神生 それまで8支所1出張所あったのを、1支所の貯金高を150億円以上にするという農協中央会の指導で二つに減らした。その際に減損処理をしたため、赤字になった。

組合員の御用聞き

――支所を減らせば、組合員にとって農協が遠くなる。組合員の抵抗はなかったか。

神生 かなり抵抗はあった。支所ごとに丁寧な説明会を開き、納得いただいた。その時は専務だったが、訪問調査を実施し、毎年百数十戸の組合員農家をその地区の理事と訪問し、組合員の意見、農協に対する要望などを聞き、農協の運営に生かすようにしている。現在は廣澤専務がやっている。

廣澤 訪問調査では組合員からいろんな意見を聞くことができる。その中から優先順位を決め、組合員にとって必要なことを実施するようにしている。

――廣澤専務は、農協の常勤になって何をしようと考えたのか。

廣澤 専務になる前は、農協の産直生産者団体協議会の代表をしていた。その時、北海道から沖縄まで歩き、産地の話を聞いてきた。その中から、八郷はなんて恵まれているところなんだろうと感じることができた。八郷にはいろいろな可能性がある。それをもっと生かせれば、この地域も農協も合併せずに問題なくやっていける。

神生 大事にしたいのは、地域の農業をいかに活性化できるかだ。私たちはそのことに主眼を置いている。

多彩な農業事業

――県北の常陸農協でも温泉施設を運営しているが、ここの「ゆりの郷」は20年もの歴史がある。公設民営の形をとっているが、どうして農協が運営するようになったのか。当初の組合員の反応はどうだったのか。

神生 八郷町がやっていた事業が、赤字続きで最終的に農協が引き受けることになった。組合員からは「農協の本業ではないものをどうしてやるんだ」という声があったが、直売所を併設し、食堂の食材も地元産のものを使い、組合員の評判もよくなっていった。経営面でも、純益が2000万~3000万円出て、プラスになった。ただ昨年は新型コロナウイルスのまん延で、入場者が落ち込んだ。

納豆工場納豆工場

――納豆工場もある。

廣澤 八郷町では、水田転作が始まったころから「納豆小粒」という茨城の銘柄大豆を作っていた。それを東都生協に出そうと1989年に納豆工場を作った。今では町内で100haも栽培されている。昨年度の販売金額は約1億5000万円になっている。学校給食にも使ってもらっている。

――農産加工施設の野菜カットセンターはどんなことをしているのか。

廣澤 JR東日本の子会社にJR東日本フーズがある。同社が1998年に常磐線友部・内原間の操車場跡地を有機実験農場として整備した時、農協がお手伝いをした。そのつながりで、同社が駅構内で営業するそば店舗で使う薬味用の刻みネギなどの業務用野菜を供給するようになり、キャベツ、ニンジン、タマネギなどのかき揚げ材料も出している。2016年に稼働した。昨年はコロナの影響で受注が4割くらいに減ったが、同社の戸田工場が閉鎖になるので、今年は受注が増える見込みだ。東都生協にはミールキット(献立を調理するのに必要な材料一式がセットされたもの)も供給している。

野菜カット工場野菜カット工場

――農協の子会社に「やさと菜苑」があるが、どんなことをしているのか。

神生 管内の園部地区に28haの畑灌漑(かんがい)事業があり、そこで農協が農林中央金庫、全農などと2012年に子会社を作り、ネギ、キャベツ、コマツナなどの野菜生産を始めた。その他に研修生を入れて担い手の育成を図り、農福連携、外国人の研修生の受け入れなどを行っている。7haで始めたが、現在は15haに広がり、ハウスも増設している。こちらは有機栽培ではなく、慣行農法でやっている。

――やさと農協は、他の農協ではやっていないことも活動、事業として行っている。地域全体としても面白い。では、これからの八郷地域、やさと農協を考えていくのに、何が問題なのか。

廣澤 全国的な課題でもあるが、担い手不足、これが一番の課題だ。農協のゆめファーム、朝日里山学校、やさと菜苑で新規就農者の受け入れを行っているが、これだけでは足りない。稲作、果樹、畜産の分野の担い手をどう確保するのか、頭が痛い。農協としては、これからも普通の生活ができる農業経営のサポートを続けていきたい。子どもたちに農業のことを教える教育も大事だ。学校で子どもたちに野菜の栽培などを話したことも何度かある。

やさと農協の概要

▽組合員数=4958人(内准組合員1155人)▽販売品取扱高33億3700万円▽購買品供給高21億6998万円▽貯金残高486億5364万円▽長期共済保有高1115億7866万円▽職員119人(内常勤嘱託11人)(2020年度末)

(取材を終えて)
山形県高畠町に住む有機農業の先達者星寛治さんは「まほろばの里・高畠」とよく言っている。まほろばとは「すばらしい場所。住みやすい場所」の古語。やさと農協の管内を一日歩いてその言葉がこの地にもあてはまる。だから、これまでに多くの人が農業をやりたいとこの地に移住してきている。そう感じた。山に囲まれ、小川が流れ、起伏に富んでいる。萱葺き(かやぶき)の民家が40軒も残り、県内では一番多い。有機農業もこの地にふさわしい。伝統や古い行事、昔からの食べ物が残っている八郷に新しい人が加わり、何かを創っていく。

柴山進さんたちが築いた産直と有機農業の里。それを神生組合長や廣澤専務らが受け継ぎ、次の世代の人たちにバトンタッチしていく。新しい何かが生まれることを期待する。

(客員編集委員・先﨑千尋)

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