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農政:迫る食料危機 悲鳴をあげる生産者

【迫る食料危機】乳価低迷で酪農家廃業も JA独自支援には限界 国は支援策早期発動を JAはだの・宮永均組合長2022年8月18日

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コロナ禍による消費低迷に加え、ロシアのウクライナ侵攻などで生産資材は過去最高水準で高騰が続き、生産現場は存続の危機に直面している。農水省は、肥料価格高騰対策をはじめ、食料安全保障の強化を進める方針を示しているが、改めて、今、産地では何が起き、農政に何を求めているのか。神奈川県の「JAはだの」の宮永均代表理事組合長に寄稿してもらった。

生産資材価格高騰支援の早期発動を!

JAはだの宮永均代表理事組合長.jpgJAはだの 宮永均代表理事組合長

"トカイナカ"の秦野で2021年11月に親子二代にわたって経営してきた酪農家65歳が突然廃業した。乾牧草価格や配合飼料価格の高騰とコロナ禍が消費を減退させ、生産コストを反映できていない乳価の低迷が主な原因だ。

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックから一つの教訓を学んだ。長引くコロナ感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻によるこのような状況は、我が国の食料・農業・地域に大きな影響を及ぼしている。燃料、肥料、飼料をはじめとする生産資材の高騰が続き、また、地球温暖化の進行による異常気象により、地域農業は存続の危機に直面している。この状況により多くの農家に閉塞感があるなか、JAはだのでは、地産地消の拠点であるファーマーズマーケット「はだのじばさんず」を中心に、地域住民に安全安心で新鮮な地元農畜産物を届けようと農家は苦闘している。

このため私たちはJAのミッションである「JA綱領」が明確に示すように、「地域農業と地域に根ざした組織としての社会的責任を誠実に果たす」こと、すなわち「地域農業と組合員の農業経営を支え発展させる役割」と「組合員の生活を支え住みよい元気な地域づくりに貢献する役割」を誠実に果たすことをあらためて、今、実践するときに直面している。

資材高騰に入荷困難な状況も JAの支援に限界

これまでも生産資材価格の高騰に悩まされてきたが、JA全農神奈川県本部が2022年5月下旬に示した秋の肥料価格の大幅な値上がりには驚きを隠せなかった。JAはだのは離農者が拡大しないように、また組合員をはじめとする農家生産者のために自分たちでできる限りの価格高騰対策を打ち出す必要性を強く感じた。そして、JA独自の価格高騰対策により地域生産基盤を維持することを目的に生産部会、生産組合長、理事それぞれの代表者を参集して意見交換を実施した。寄せられた声は言うまでもないが「何とかしてくれ!離農者が増加しないようにJAとして緊急支援を考えてくれ!」であった。

例えば2022年6月9日時点の肥料「化成14-14-14」の売価1,640円は6月10日より2,910円となり1,270円の値上がりとなった。なかでもJAが取り扱う化成肥料で最も高騰した銘柄は「玉ねぎ配合S555」で3,440円が5,440円と2,000円値上がりした。ほかの肥料をみても3桁、4桁の値上がりは当たり前となっている。また、施設園芸用重油は100円/l前後と高値で推移、配合飼料は9万円/tに届く勢いで高騰。加えて乾牧草を購買している市内農家が多く、高騰と同時に入荷困難な状況も続いている。

これらの対応として、予約購買により安定的に供給することは勿論のこと、生産資材価格高騰対策緊急支援を6月定例理事会で決定した。その緊急支援は、地域農業振興基金を原資として、肥料は2022年6月~10月に生産組合、生産部会、ファーマーズマーケット「はだのじばさんず」で実施する秋肥予約注文によって供給する肥料については、旧購買価格と新購買価格の価格差50%を支援することにした。また、燃料は10円/l、乾牧草は利用額の11%の支援である。しかし、JA独自の支援には限界がある。政府が補正予算で確保した5.5兆円の予備費の活用による肥料・燃料・飼料等の生産資材価格高騰対策支援が急がれる。また本県神奈川においては、6月補正予算で農業関係として地方創生臨時交付金活用事業が12億円措置されているため、肥料・燃料・飼料の生産資材価格高騰対策支援の早期発動を要請したい。

農地及び担い手減少の地域対策

国内の農地及び担い手の減少に歯止めがかからない状況にあるが、生産資材価格高騰を理由にさらに離農者と遊休・荒廃農地を増加させることは何としても避けたい。

2021年度食料・農業・農村白書によると、農地面積の減少や農村人口の高齢化などにより、国内の耕作農地面積は435万haであるが、1962年以降60年間で約30%減少した。首都圏では農地の宅地化もあるが最も減少しているのは東京で23.1%減少、神奈川で13.7%減少と全国平均減少率7.3%を大きく上回っている。国は食料の安定供給、持続可能な農業生産を確立するために施策内容の見直しや新たな施策展開をすすめているが、農水省の試算では、農業従事者は2030年には131万人となり、2015年から約77万人減少することが見込まれる。このうち49歳以下が28万人の見込みだが、基本計画目標において国内農業を維持するには、49歳以下の農業従事者を37万人確保することが必要であるとしている。

そのため、人・農地プランでは、農地・担い手の減少が加速化する中で、実質的に農地及び人の確保・育成がはかられるよう農業経営基盤強化促進法等を一部改正し、将来の農業のあり方や10年後にめざすべき農地の利用状況の明確化などの内容について、市町村における地域計画の策定が法定化された。また、都道府県では担い手の確保・育成に関する方針を策定するとともに、農業経営・就農支援の体制整備をすすめることになった。

食料供給に果たす役割 地域住民にも浸透を

JAグループは、2021年10月に開催された第29回JA全国大会で、新たな運動として「次世代総点検運動」を決議した。これは、JAの組合員と役職員がともに地域農業の現状を点検し、将来にわたり農地を維持して確保すべき次世代の組合員数の目標を設定するなど、計画的に担い手の育成・確保をめざす運動で、2022年4月から2025年3月を重点実践期間としての取り組み方針が決定している。

JAはだのは地域農業基盤の維持・継続ビジョンを策定し、地域特性を活かした農業の維持と次代への継承をすすめることにした。これは戦略的な作付提案による持続可能な農業に対応した営農指導、農業生産基盤の維持、生産性向上に向けたJAの生産支援である。また、地域で農業に関わる人の裾野を広げ多様な人に「農」に関わってもらおうとしている。

地域農業は、既存の農家の規模拡大するなどにより、経営耕地および農業粗生産額が大きなマイナスにならなければ、産業規模としてはある程度維持されるが、販売農家における経営耕地面積でみると、神奈川県の12.6%の減少に対して、秦野市は20.1%の減少であり、農家戸数の減少率とほぼ同様で経営規模の拡大はわずかである。また、農業粗生産額は畜産物を中心に減少傾向が続き、近年で40年前の水準を下回った。耕作放棄地面積も2000年121haから2005年146haへ20.6%拡大し、2010年141ha、2015年149haで耕作放棄率は17.6%であり、神奈川県の耕作放棄率5.0%を大幅に上回っている。

個別農家経営の展開による産業としての農業振興は、担い手の確保という面において、明らかに限界が来ているとみられる。また、自給的農家にとどまることにより、耕作放棄地の増加を防ぐことや、農産物直売所などへの販売を通じた生産振興も、全体的な農業諸資源の維持や産業としての農業の衰退傾向に歯止めをかけるまでの効果は見せていないことが考えられ、農業者の絶対的減少、労働力の質的減少、農業諸資源の減少は留意すべきポイントである。都市益を活用した農業振興の取り組みにより、地域で農業に関わる人の裾野を広げ、地域住民をはじめとする多様な人に食と農に関わってもらい地産地消の理解により食料自給率を高め、食料供給に果たす役割を地域住民一人ひとりに浸透させる必要がある。

食料安全保障は「食料自給率向上」

「平時の食料安全保障としては食料自給率向上が第一級の課題であることを再認識し、自給率向上に資するあらゆる可能性を活用する視点を明確にすべきである(2019谷口信和東京大学名誉教授)」の考えのもと"トカイナカ"に位置するJAはだのは、農業者だけでなく多様な地域住民の農との関わり方を視野に入れた取り組みを必要としている。市民農園をはじめとする多様な自給的性格の強い土地利用の実態を把握し、平時におけるそれらの積極的な奨励が不足時の食料供給に果たす役割を適切に評価し取り組むこととして、地域ぐるみで食料自給率向上を目指し挑戦し続けている。

困難なときであるからこそ協同組合は、組合員の承認に基づき地域農業と地域社会の持続可能のために活動し、組合員の願いや期待に応えていく組織であると同時に、地域社会に開かれた組織として食と農を基軸として地域社会を発展させるために、組合員・役職員が地域と一体となって邁進しなければならないのであろう。

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