「ミネクト(R)デュオ粒剤」抜群の防除効果が育苗センターを変えた2017年12月18日
・(ルポ)JA佐久浅間あさま園芸育苗センター
・現場で役立つ農薬の基礎知識【番外編】
・380万本のブロッコリー苗を供給
・悩みの種コナガ防除を解決
・自動化されている播種ライン
・他の作物にも拡大を検討
農産物の生産・栽培をするには種子と苗が不可欠だ。播種から育苗まで自ら行う生産者は多いが、最近は野菜類のように年に何作も栽培する品目が増えてくると、播種・育苗のための労働力が負担となるケースも増え、丈夫で品質の安定した苗を必要な時に必要な量を供給してくれる育苗センターへの期待が高まり、そうしたニーズに応えるためにJAが育苗センターを設置することが多くなってきている。しかし大量の苗をつくるためには、成苗になるまでの間、病害虫の防除管理が必須であり、それが育苗担当者に大きな負担となっているといわれている。
そうした問題をたった1剤の殺虫剤を導入することで解決。しかもセンターの作業や運営の効率化・省力化を実現したという、JA佐久浅間のあさま園芸育苗センターに早速取材した。
◆380万本のブロッコリー苗を供給
(写真)丈夫に育ち出荷を待つブロッコリーの苗
本州のほぼ中央、長野県の東の玄関口に位置するJA佐久浅間は、小諸市・佐久市・佐久穂町・軽井沢町・御代田町・立科町・東御市(旧北御牧村地区)の3市4町を管内とする広域JAだ。管内を南北に貫流する千曲川の豊富な水量で肥沃な耕地が広がり、野菜を中心に米穀・果樹・花き・きのこ・畜産などの農業が盛んで、食料の総合供給基地として全国から注目される農業地帯だ。
なかでも冷涼な気候条件を活かした高原野菜の生産量は長野県内でもトップで、ブロッコリー・キャベツ・ハクサイ・チンゲン菜・カリフラワー・レタス・アスパラガスなど多彩な野菜類を生産し、首都圏や京阪神、中京圏などに出荷している。そのなかでもブロッコリーは県下一の生産量を誇り、作付面積は小諸市・御代田町を中心におよそ400ha、年間出荷量は80万ケースにのぼるという。
そのブロッコリーの苗を生産し農家組合員に供給しているのが、あさま西部営農センター管内にあるあさま園芸育苗センターだ。ここでは、播種から育苗、供給までを一括管理して、品質のムラを防ぎ、農家の定植時期に合わせて苗を生育させている。「野菜生産は苗8分作」といわれるように、丈夫で安定した苗づくりは、収穫される農産物の善し悪しを決める重要な過程であり、育苗センターの役割はますます重要になってきている。
丈夫で品質の良いブロッコリーの苗を供給するためには、播種から苗の出荷まで毎日様子をみて、追肥や温度・湿度など育苗ハウスの管理を行い品質を一定の水準に保つ努力が欠かせない。しかも、ブロッコリーの播種は2月上旬から7月下旬まで1週間おきに行い、3月上旬から8月中旬まで、苗出荷続くことになる。センターからの出荷量は年間育苗箱3万枚(苗380万本)に達する。
◆悩みの種 コナガ防除を解決
ハウス内管理以上に問題なのが、コナガによる食害だとあさま西部営農センターで育苗センターを担当する小平雄司さん。
「コナガの防除はタイミングが難しいんです。本葉がでるころに最初の被害に遭いやすい」のだが、あまり苗が小さいうちに殺虫剤を散布しても効果が低いし、食害されるまで待つと手遅れになるので、そのタイミングを見極めるのが難しい。しかも1週間おきに播種するので、常にそのタイミングをみながら殺虫剤散布などの防除作業を行わなければならない。そのためピーク時にはかなり長時間の残業をしたこともある。
そんな小平さんの悩みが今年は解消された。昨年、テスト的に使ったシンジェンタの「ミネクト(R)デュオ粒剤」の効果を確認し、「コナガなどの害虫には約1カ月はこの剤だけでいけることが分かった」からだ。
ミネクト(R)デュオ粒剤は、ジアミド系の新規殺虫成分であるシアントラニリプロールと、ネオニコチノイド系殺虫成分のチアメトキサムを組合わせた野菜用殺虫剤で、スペクトルが異なる吸収移行性に優れた2成分を組み合わせたことで、栽培初期に問題となる幅広い主要害虫をこの1剤でカバーすることができる薬剤だ。しかも育苗期はもちろん、定植後数週間にわたって続く長期残効性があることも大きな特徴だといえる。
土壌処理することで植物体の根から吸収されて葉の周縁部や先端部まで導管輸送される。その葉をコナガの1齢幼虫などが少量でも食べると薬剤の効果で死に、防除することができる。しかも苗の生育期間にはまったく被害がでない。
今年からは本格的にこの「ミネクト(R)デュオ粒剤」を使うことで、「本葉が出る食害リスクの高い時期を気にせずほかの作業ができる時間が生まれ、センターとして大きな省力化が実現し、追肥などの管理作業に集中することができた」という。そして、「残業時間も大幅に減り、家族とすごす時間が多くなり、奥さんにも喜ばれている」と笑顔で話してくれた。
(写真)小平さん(左)と高木さん
◆自動化されている播種ライン
大きな省力化を実現したもう一つの要因は、育苗センターが自動化されていることだ。平成3年の旧浅間農協時代にこのセンターは開設されているが、その時からコンピュータ制御され播種から育苗箱を発芽室に入れるまで可能な限り無人化されていた。この播種ラインにミネクト(R)デュオ粒剤を散布できる機械をセッティングして、播種覆土後に使用している。この散布機を効率的使用するために、農業機械出身の職員さんが無駄なく効率的に散布できるようにセンサーを組み合わせて設置改良したことも大きいという。
同営農センター南大井事務所の清水浩文所長も「ミネクト(R)デュオ粒剤を使うことで、作業効率や省力化がすすんだことが大きい」と防除だけではなく育苗センターの運営そのものへの効果を強調していた。生産現場で営農指導をする営農技術員の高木朋紀さんも、生産者にも評判がいいという。
(写真)播種ラインの先頭部分
◆他の作物にも拡大を検討
育苗センターを利用するのは管内作付の半分くらいだというが、今後は生産者の高齢化もあり受委託されて規模を拡大する農家が増えてくると、自家育苗だけでは間に合わないようになり、育苗センターとの併用が多くなることが予測される。そうした需要に応えられる体制をつくっていく下地ができたと考えられている。
さらに、育苗センターでは、ブロッコリーだけではなくキャベツやレタス、ハクサイなどの育苗をおこなっているので、こうした野菜にも使用していきたいと小平さんは計画しているという。
薬剤としての効果はもちろんだが、育苗センターの作業や運営まで大きく変えたミネクト(R)デュオ粒剤の力は、素晴らしいものだと感心すると同時に、これからの農薬のあり方を考えさせられる取材でもあった。
(写真)ミネクト(R)デュオ粒剤の施薬ホッパー
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