農薬:サステナ防除のすすめ2025
大豆の病害虫防除 3段階で処理を【サステナ防除のすすめ2025】(2)2025年6月4日
近年、国産大豆の需要が高まる中、栽培面積自体は若干の増減があるものの、ほぼ横ばいの状態が続いている。土地利用型農業の主要作物とされているが、湿害に弱く、長く価格も低迷していたことで生産にあまり費用をかけられず、労働力不足、経営作物の多角化などの理由も加わって大豆栽培にあまり力を注げないケースも多い。どちらかというと大豆の栽培は粗放的な栽培で生産されているイメージが強い。
天敵や種子消毒
(4)耕種的防除法の活用検討
①株間の湿度を下げることによって、茎疫病や紫斑病、べと病など湿度が高いとまん延しやすくなる病害の発生率を低くすることができるので、株間を広くしたり、高畝にしたりといった株間の湿度を下げる対策を実施するとよい。
②ダイズシストセンチュウは、トラクターやは種機などの農業機械に付着した土壌とともに発生地域を拡大するので、ダイズシストセンチュウの発生ほ場や発生の疑いのあるほ場は一番最後に作業したり、もし作業した場合でも作業後には土壌を完璧に洗い流すなど、発生ほ場の土壌を未発生ほ場に持ち込まないよう徹底した対策が必要だ。
③ほ場回りのクローバー類は矮化病ウイルスやアルファルファモザイクウイルスの伝染源となるので、しっかりと除草するようにする。
④有機肥料として未熟な有機物や緑肥、魚かすを使用する場合は、は種までの期間が短いとタネバエ成虫を誘引して大量発生の原因となるので、施用後からは種までの期間を十分に開けるようにする必要がある。
⑤大豆の葉が白変している場合、ハスモンヨトウの若齢幼虫が群生していることがある。これを見つけたら速やかに摘み取って処分すればハスモンヨトウの被害を未然に防いだり、発生を少なくすることができる。
⑥適宜、産地全体で取り組むことができるなど環境が整っている場合には性フェロモン剤を活用するとよい。大豆に発生するハスモンヨトウの場合、タイプの異なる2種の性フェロモン剤がある。雄成虫を大量に誘引して捕殺するフェロディンSLという商品と、交信かく乱によって交尾を防いで次世代の幼虫が産まれなくするコンフューザーV、ヨトウコンHといった商品がある。
前者はフェロモンを設置した場所に大量に雄成虫を誘き寄せて捕殺するものだが、中には誘引されないかその前に雌成虫と交尾を成功させるものもあるので、幼虫を減らす効果はあっても完全に防ぐことは難しい。一方の交信かく乱タイプは広い面積(およそ数㌶以上)での設置が必要で、設置された範囲内にやってきた雄成虫は雌の位置が特定できずに交尾が成り立たず次世代の成虫が産まれてこないので被害を防ぐ。しかし、フェロモン設置範囲の周縁部ではどうしても効果が低くなるのでフェロモンのみで完全に防ぐことは難しい。加えて、フェロモン設置の経費負担も大きくなるので、多くの場合、産地全体で取り組んだり、行政の支援が必要であり、生産者単独での導入はコスト面で不向きな技術だ。
(5)天敵の活用
①ハスモンヨトウに対しては、ハスモン天敵という製品があり、それはハスモンヨトウ核多角体ウイルスを成分とする水和剤で水に希釈して散布する。この成分は昆虫に感染するウイルスであり、ハスモンヨトウに感染した後ハスモンヨトウ体内の組織を侵し5~10日で死亡させる。しかし、このウイルスは紫外線下では殺虫活性が低下したり、中齢幼虫以降の幼虫には効きにくくなるので、大豆の茎葉が繁茂して紫外線が避けられる状態で、中齢未満の幼虫が多いハスモンヨトウの発生初期を逃さず処理する必要がある。
②害虫の密度を抑制する土着天敵として、クモ類、アシナガバチ類、アマガエル、寄生蜂、寄生性糸状菌が知られているが、これらだけでは害虫被害を防ぎきることができないので、天敵に影響の少ない薬剤を中心にして、特に天敵への影響が少ないIGR剤(昆虫成長調整剤)やBT剤などと組み合わせて活用するとよい。
2 種子処理剤の活用
モザイク病や萎縮病、紫斑病などの種子伝染性病害は、できるだけ無病種子を使用することが肝要であるが、種子消毒や種子処理によってもあらかじめ種子に薬剤を処理することによって病害虫の発生を未然に防ぐことができる。
種子消毒や種子処理による防除が可能な薬剤と対象病害虫を次表に示したが、これらの剤は病害虫の発生前に処理することができるので、効率の良い防除が可能である。なので対象病害虫と処理法を事前に確認して使用できる場合は積極的に活用してほしい。
特にクルーザーMAXXなど多数の成分を含む薬剤は、一度の処理で多数の病害虫を効率的に防除することが可能なので適宜活用すると良い。病害虫の発生状況によっては、散布剤での防除を行うことなく栽培期間を終えることができる場合もあるので、栽培後期の病害虫の発生が少ない場合は種子処理を試してみると良い。
3 土壌処理剤の活用
大豆には様々な害虫が発生するが、それらの多くは土壌処理剤で予防的に防除できる。特に土壌で増殖するダイズシストセンチュウなどセンチュウ類の場合は土壌処理が必須であるし、アブラムシ類やコガネムシ類幼虫、タネバエ、ネキリムシ類、フタスジヒメハムシなど大豆の発芽後から発生する害虫についても発生前に予防的に土壌処理することで、効率的に防除できる。
その主な処理薬剤と対象害虫を次表に示したので参考にしてほしい。ただし、使用方法等は事前に製品ラベルをよく確認して正しく使用してほしい。
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