2027年の介護保険制度改定に向け 要望書を提出 生活クラブ生協2025年6月5日
生活クラブ共済事業連合生活協同組合連合会は6月2日、2027年の介護保険制度改定に向けた要望書を内閣総理大臣、厚生労働大臣、財務大臣へ届けた。
生活クラブ生協は、生活を支える社会保障制度としてすべての高齢者が尊厳を保ち、自立した生活を送るという介護保険制度の基本的な理念を守る制度改正となるよう要望した。要望のポイントは以下の5つ。
1.ケアマネジメントは10割給付を維持してください
2. 在宅介護を支える訪問介護・通所介護の給付を充実させてください
3.利用者負担は現状を維持するとともに、低所得者への対策を検討してください
4.訪問介護の基本報酬を引き上げてください
5. 人材不足が危惧されるケアマネジャー、ホームヘルパーを増やすため、実効性のある施策を検討してください
<要望書 全文>
内閣総理大臣 石破茂様
厚生労働大臣 福岡資麿様
財務大臣 加藤勝信様
2027年度介護保険制度改正に向けた要望書
2025年6月2日
生活クラブ共済事業連合生活協同組合連合会
会長 村上彰一
生活クラブ共済事業連合生活協同組合連合会は、北海道から兵庫県まで42万人の組合員が構成している協同組合です。私たちは相互扶助の精神と実践に基づき、地域で暮らす人びとの様々な生活保障とたすけあいの地域社会づくりをすすめています。
今年は「団塊の世代」が75歳以上になり、2030年には国民の約3人に1人が後期高齢者になると推計されています。超高齢社会が進むなか、介護保険制度は介護を必要とする人、介護や支援をする人にとって重要な制度です。
65歳以上の被保険者の第1号介護保険料の全国平均月額は6225円ですが、2040年には1万円を超える可能性もあり、とくに低年金の人は厳しい家計のなかで、介護が必要になったときのために保険料を払い続けています。
あるべき生活を支えるための社会保障制度として、またすべての高齢者が尊厳を保ち自立した生活を送るという介護保険制度の基本的な理念を守り、介護保険制度が事業者にも利用者にも持続可能な制度改正となるよう要望書を提出いたします。
1.ケアマネジメントは10割給付を維持してください
2.在宅介護を支える訪問介護・通所介護の給付を充実させてください
3.利用者負担は現状を維持するとともに、低所得者への対策を検討してください
4.訪問介護の基本報酬を引き上げてください
5.人材不足が危惧されるケアマネジャー、ホームヘルパーを増やすため、実効性のある施策を検討してください
1.ケアマネジメントは10割給付を維持してください
ひとり暮らしや高齢夫婦世帯の認定者が増えるなか、定期的に利用者宅を訪問し、相談支援、ケアプラン作成を担当するケアマネジメント(介護予防支援、居宅介護支援)は非常に貴重な給付です。
『経済財政運営と改革の基本方針2024』(骨太方針2024)は「ケアマネジメントに関する給付の在り方」の検討を求め、財政制度等審議会は有料化を提案しています。
しかし、10割給付のケアマネジメントに利用者負担を求めることは、支援が必要な人の利用控えにつながる危険性が高く、給付を受けることなく心身の状態が悪化すると、かえって介護費や医療費の増加につながりかねません。
ケアマネジメントは10割給付を維持してください。
2.在宅介護を支える訪問介護・通所介護の給付を充実させてください
要介護認定者は訪問介護、通所介護の給付に支えられ、生活を維持しています。
『骨太方針2024』は「軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方」の検討も求めています。財政制度等審議会は要介護1と2を「軽度者」と呼び、訪問介護と通所介護の給付を地域支援事業に移すことを求めています。
介護保険は認定を受けた人に個別給付をする制度です。認定を受けたにもかかわらず、訪問介護と通所介護の給付を保障しないのは、制度の後退と言わざるを得ません。また、すでに介護予防訪問介護、介護予防通所介護は給付からはずれ、地域支援事業に移されていますが、要支援認定者への影響はどうなっているのでしょうか。
要介護1と2を「軽度者」とする給付の削減ではなく、さらなる充実をはかる施策を要望します。
3.利用者負担は現状を維持するとともに、低所得者への対策を検討してください
介護保険制度の利用者負担は、費用の1割(所得に応じて2割または3割)です。しかし、公的年金の引き上げ率をうわまわる物価上昇率となっているのが現状です。
とくに低所得の認定者の場合、介護保険料を払っているにもかかわらず、利用料が払えないので、サービスが利用できないという事態が拡大することが懸念されます。
『骨太方針2024』は「利用者負担が2割となる判断基準の見直し」を求めていますが、1割負担の原則を維持するとともに、支払いが困難な低所得の認定者には公費(税金)で補助するなどの対策を検討してください。
4.訪問介護の基本報酬を引き上げてください
2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬が引き下げになり、小規模訪問介護事業所を中心に、介護保険制度施行以来、最高の休業・廃業・倒産件数となっています。訪問介護の基本報酬を早急に引き上げてください。
5.人材不足が危惧されるケアマネジャー、ホームヘルパー、介護職員を増やすため、実効性のある施策を検討してください
ホームヘルパーを含む常勤の介護職員の平均給与額は、全産業より約7万円低く、賃金格差の解消に至っていません。また、この10年間、ケアマネジャーの賃金増加率は、介護職員の平均給与の増加率に追い付いていない状況にあります。介護保険制度を支えるケアマネジャー、ホームヘルパー、介護職員の給与引き上げにつながる介護報酬の見直しを基底に小規模事業所の持続可能な事業運営への支援を要望します。
以上
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