肺腺がん当事者に聞く 高額療養費制度引き上げの影響 パルシステム共済連2025年6月12日
パルシステム共済生活協同組合連合会は6月5日、高額療養費制度の引き上げが暮らしに与える影響を聞く学習会をオンラインで開催。中高生の子どもを育てながら肺腺がんと闘病する水戸部ゆうこさんが、治療継続の断念につながりかねない高額な治療費の現状を話した。
オンラインで自身の経験を伝える水戸部さん
がんを"自分ごと"にできる社会へ
水戸部さんは、子どもが小学2年生と5年生だった2018年、ステージⅣの肺腺癌が見つかり、手術や放射線による治療ができず、期限を設けられない抗がん剤治療を開始。服薬が毎日必要な抗がん剤は1錠2万円と高額で、体に薬への耐性ができるなど副作用もあり肉体的、精神的負担が続いた。職場の理解はあったが仕事を続ける気力を保てず、半年ほどで離職した。
自身の闘病中に父親の食道がんが見つかり、9か月後に看取った水戸部さんは、自分も死への不安で辛くなり、精神腫瘍科やレリジエンス外来での心のケアも受診。離職して治療しながら、子育てと家事中心の生活になり、収入も社会とのつながりもない同じ境遇の人たちとのコミュニケーションを求めるようになった。
オンラインサイトのコミュニティで悩みを相談し合う中、働きたいがん患者をサポートしたいとの広告に目が留まり応募したところ、すぐに就職が決まった。同時に抗がん剤への耐性が見つかり入院することになったが、理解を得ながら病院内でも仕事をするなか、社会のがんへの理解を深めたいと、自身の闘病経験を生かしていくことを決意した。
水戸部さんは2022年、地域のなかで自身や家族のがんを打ち明けられずにいる人たちとのつながりを作ろうと、「がんサロン」を開始。カフェや銭湯の一角を借り、参加者が自ら抱える思いを伝え合い、誰もががんを「自分ごと」として捉えることのできる社会への期待を発信する居場所づくりを試みた。
子のため治療の断念もよぎる
活動を継続するなか2024年12月、政府による高額療養費制度限度額引き上げが報じられた。同制度は医療費の家計負担を軽減する目的で、年齢と所得に応じた1か月の医療負担の上限額との差額が支給されるもの。水戸部さんのように長期にわたり高額な医療費を支払い続ける必要のあるがん患者にとって、限度額引き上げは死活問題となる。
子どもたちの受験も控えるなか、終わりの見えない自身の高額な治療費のため、進路選択の幅を狭めることにもなりかねない。子どもを持つがん患者を対象としたアンケート調査では「引き上げなら子どもの将来のため、自身の治療をあきらめる」との声もある。
水戸部さんは患者の現状を訴えるため、国会でのヒアリング対応や厚生労働省での記者会見、永田町でのアピールなどで、制度の必要性を訴え、地域の仲間と呼びかけたオンライン署名には5万8154筆の賛同を得たという。
水戸部さんらの訴えにより、8月の引き上げは見送りとなったが、再検討が予定され白紙撤回にはなっていない。
水戸部さんは「一人のがん患者が政治に関わるとは思っていなかった。多くの人たちの賛同をもらい、支えてくれる人たちに感謝しきれません」と話す。自分を信じて国の改定を踏みとどまらせるため挑戦したことで、多くの人政治への関心を深めてくれたと伝える一方、「がん患者自身がこんなことをしなければならい日本が心配」と参加者たちに訴えた。
がんに関する啓発アクション
日本人の2人に1人が、生涯のうちで何らかのがんに罹患すると言われるなか、早期発見の検診啓発や治療選択の知識、患者の暮らし支援の周知がますます重要になっている。
パルシステムグループは、がん全般の正しい知識を広めるため、「がんに関する啓発アクション」を呼びかけている。10月には「もしも」に備える保障の案内に加え、利用者向けに検診や治療の大切さを伝えるWebサイトを公開。「がんと食事」をテーマとするQ&Aを掲載するなど、がんへの罹患を自分ごととして捉えるきっかけづくりをしていく。
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