「節水型乾田直播」は収量安定化が不可欠 超党派「農業の未来を創造する議員連盟」が農水省・農研機構からヒアリング(1)2025年11月11日
超党派の衆参国会議員で構成する「農業の未来を創造する議員連盟」は11月11日、参議院議員会館で総会を開いた。議連の体制を確認するとともに、農林水産省から直播(ちょくは)栽培、農研機構から農作物の品種改良に関するヒアリングを行い、意見を交換した。役員体制は、会長に宮下一郎衆議院議員(自民党)、幹事長に舟山康江参議院議員(国民民主党)、事務局長に長谷川淳二衆議院議員(自民党)など16人を確認した。
超党派「農業の未来を創造する議員連盟」総会の様子
衆参国会議員82人に拡大
宮下会長は、6月19日の設立総会後に加入が相次ぎ、当初の衆参国会議員約60人から82人に拡大したことを紹介。「農業は大転換期にあり、食と農の危機を新しい技術で乗り越えるため、党派を超えて同じ方向に向かっていこう」とあいさつした。
ヒアリングでは、農水省農産局の尾室義典穀物課長が「直播栽培の現状について」報告した。
直播技術のうち「湛水直播」「乾田直播」はすでに技術が確立しており、今後は「技術のブラッシュアップが必要」と述べた。直播栽培は「移植栽培と作業のピークを分散でき、組み合わせることで経営規模の拡大に貢献する」と説明。「家族経営では15~20haが限界だが、直播を組み合わせれば20~25haまで拡大できる」とした。
新技術である「節水型乾田直播」は「ネット発で広がっているが、現状では大規模農業者などに限られている」とし、メリットとして「田植えや代かきに加え、水管理も省力化できる」と説明。一方で「水稲栽培とは異なる管理が必要で、収量が極めて不安定な事例もある。収量安定化に向けた技術確立が課題」と指摘した。
また、乾田直播はメタンガス発生を抑える一方で、温室効果がメタンの約10倍とされる一酸化二窒素の発生が増加するトレードオフの関係にあると説明。節水型は「温室効果ガス抑制効果の実証がほとんど行われていない」として、データ収集の必要性を強調した。また、雑草管理の困難性や「連作障害の可能性があり、移植とのローテーションが必要。自由に入水できないほ場では管理が難しく、水路や水の確保は必須」といった課題も挙げた。
こうした課題から、乾田直播は「特に大規模経営体を志向する農業者向けの技術」と位置づけ、節水型については研究機関による技術体系の検証、実証栽培によるデータ収集・分析、経営評価の実施などを令和8(2026)年度当初予算に概算要求していると報告した。
乾田直播への質問相次ぐ
出席議員からは、節水型を含む乾田直播技術に関する質問が相次いだ。
「乾田直播は特別な技術を持つ農業者しか取り組んでいないが、研究を進めれば担い手を育成できるのではないか」との質問には、「地域ごとに『標準作業手引書(SOP)』を作成しているが、内容が教科書的で分かりにくいとの声もあり、ネット上で画像診断などを行える『遠隔営農支援システム』を検討している」と応じた。
また、「乾田直播に向く品種は」との問いには「一般品種でも構わないが、倒伏に弱い品種は不向き」と回答。「雑草対策では除草剤使用との両立が課題だが、稲を強くする方法は」との質問には、「バイオスティミュラント資材を種に処理する農業者もいるが、効果は検証中」とした。
栽培時の水確保については、「出穂期や春先の田植え後には水が必要。必要水分量が把握できれば収量安定につながる。春先に水を使わないだけで、水路の確保は必要。節水型はより少ない水でも栽培可能」と述べた。
これに対し、「節水型は水管理が省力化できるというが、実際には細やかな水管理が必要ではないか」との指摘には、「ユーチューブでは『湿りが弱まったら水をまけばよい』とも言われるが、結局は現地確認が必要」と認めた。
鳥害については、「忌避成分を種にコーティングする方法」のほか、「乾田直播は鳥害に強い」とも説明。「乾田直播では根の生育が早く、モミが土に埋まるため鳥に見えにくい」とした。
総会後、幹事長の舟山康江氏は「節水型は水管理の大変さもあり、単純に省力化とは言えない。農家に聞くと上手くいかなかった事例を数多く聞いている。新しい技術として否定はしないが、日本の長い歴史のなかでは、移植栽培が最も適していることに変わりはない」と感想を述べた。
節水型を含めた直播栽培には課題も多く残されており、現場の意見を参考にした実証・検証や技術の蓄積が必要になっている。(2)に続く。
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