遺伝子組換え作物栽培面積20年で100倍に ―バイテク作物商業栽培20周年記念セミナー(上)2016年9月22日
バイテク(遺伝子組換え)作物(以下、GM作物)の商業栽培20周年を記念して、バイテク情報普及会が9月12日に都内で、セミナーを開催した。
◆南北アメリカ大陸が87%占める
このセミナーで講演したポール・テン国際アグリバイオ事業団(ISAAA)会長によれば、GM作物(ダイズ・トウモロコシ・ワタ・ナタネなど)の栽培面積は、1996年の170万haから2015年には1億7970haへと「100倍に増加した」。
15年は「農産物価格の低迷による作付面積の減少」(14年は1億8150万ha)、特にトウモロコシが3%、ワタが4%減少した。しかし米国ではトウモロコシ、ダイズの作付は減少したがGM作物の比率は維持されたとしたうえで、農産物価格の水準が回復すればGM作物の栽培面積は再び増加すると予測した。
15年現在、GM作物を栽培しているのは、アメリカ(7090万ha)、ブラジル(4420万ha)、アルゼンチン(2450万ha)、インド(1160万ha)、カナダ(1100万ha)、中国(370万ha)など、28カ国で、南北アメリカが87%、アジアが11%、アフリカが2%となっている。
そして、15年にはベトナムで初のGM作物としてスタック形質(害虫抵抗性と除草剤耐性をあわせもつ)トウモロコシを栽培し、アジアで8番目のGM栽培国となったこと。米国における乾燥耐性トウモロコシの栽培面積が13年の5万haから15年には81万haへと15倍になったこと。世界のGM作物栽培面積のうちスタック品種が33%を占めたことをトピックスとしてあげた。
◆GMトウモロコシが1億ha増加する
今後について「既存の主要なバイテク作物市場では、すでに高い割合(90%から100%)でバイテク作物が導入されており、拡張の余地は少ない」と、拡大傾向が「頭打ちとなった」と語ったが、「しかし、栽培面積が拡大する可能性をもつバイテク作物も存在する」として、GMトウモロコシは「世界で栽培面積が約1億ha増加する可能性がある」とした。それは、アジアで6000万ha、なかでも中国で3500万ha拡大すると予測。さらにアフリカの一部地域でも3500万ha拡大するとみている。
また、害虫抵抗性ワタについてはアフリカの最大10カ国で「それぞれ10万ha以上栽培面積が拡大する可能性がある」と語った。
◆今後の注目はゲノム編集技術
こんごの技術開発について、その作物固有な遺伝子を編集して非組換え作物を作り出すことができる「ゲノム編集技術CRISPR」のような「新育種技術NBT(New Breeding technologies)」が強力なツールであるという認識が高まっているとし、その具体的な事例として、世界初のゲノム編集による非組換え作物「SU Canola」が、15年に4000haで商業栽培されていることをあげた。そして、ダイズ・トウモロコシ・ムギ・イネ・バレイショ・トマト・落花生などが、ゲノム編集作物として開発段階にあるとも。
そして、2050年には世界の人口が97億人になると予測されているが「従来技術による品種改良だけでは、作物生産量を2倍にすることはできない。バイテク作物はすべての問題を解決するわけではないが絶対に必要な技術である」と講演を結んだ。
・―バイテク作物商業栽培20周年記念セミナー (上) (下)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(163)-食料・農業・農村基本計画(5)-2025年10月11日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(80)【防除学習帖】第319回2025年10月11日
-
農薬の正しい使い方(53)【今さら聞けない営農情報】第319回2025年10月11日
-
食料自給率 4年連続38%で足踏み 主食用米消費増も小麦生産減 24年度2025年10月10日
-
【特殊報】トマト立枯病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内の園芸作物で初めて確認 高知県2025年10月10日
-
【特殊報】スイカ退緑えそ病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【特殊報】ショウガ褐色しみ病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【注意報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年10月10日
-
26%が米「買い控え」 米価上昇が家計に影響 住友生命「台所事情」アンケート2025年10月10日
-
コシヒカリ3万3000円に JA常総ひかりが概算金改定 集荷競争激化受け2025年10月10日
-
大豆の吸実性カメムシ類 甲信、東海、北九州一部地域で多発 病害虫発生予報第8号 農水省2025年10月10日
-
(456)「遅さ」の価値【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月10日
-
「いちご新規就農者研修事業」2026年度研修生、若干名を追加募集 JA全農岐阜2025年10月10日
-
10月23日に生活事業総合展示会 贈答品や暮らしを豊かにする事業を提案 JA全農いばらき2025年10月10日
-
本日10日は魚の日 岡山県産「冷凍かき」など90商品を特別価格で販売 JAタウン2025年10月10日
-
収穫が遅れた完熟の「黄かぼす 食べて応援企画」実施中 JAタウン2025年10月10日
-
国消国産の日 一斉行動日イベント「国消国産×防災」開催 JA全中2025年10月10日
-
「日産ビオパーク西本郷」と「小野田工場ビオトープ」が環境省「自然共生サイト」に認定 日産化学2025年10月10日
-
「えひめ・まつやま産業まつり-すごいもの博 2025-」に出展 井関農機2025年10月10日