資源作物「エリアンサス」で世界初の燃料の地域自給2017年9月14日
農研機構とJIRCAS(国際農林水産業研究センター)は9月12日、行政、企業との連携で地域自給燃料の実用化に成功したと発表した。
温室効果ガス排出削減のため再生可能エネルギーのひとつとして資源作物から作られるバイオ燃料が期待されているが、食料生産と競合しないことも求められる。
両研究機関は2013年に共同で資源作物「エリアンサス」を育成した。エリアンサスは食料生産と競合せず、収量が高く低コストで栽培できるイネ科の多年草で品種「JES1」として開発した。
この「JES1」を栃木県さくら市内の(株)タカノが市内の耕作放棄地で栽培するとともに、ペレット燃料に加工、それをさくら市が市営の温泉施設のボイラで使用している。
2017年4月から本格稼働を始め、これまでに燃料の地域自給が達成されていることが確認され、同市内の耕作放棄地の減少と雇用の創出に貢献し、地球温暖化抑制にも寄与している。
農研機構によるとエリアンサスを地域自給燃料として事業化した世界初の事例だという。
エリアンサスはイネ科の草木の一種で熱帯・亜熱帯地域に自生している。多年生のため越冬ができれば10年以上の栽培と可能が考えられるといい、晩秋から晩冬が収穫適期で、茎と葉を刈り取ると春には刈り株から新しい葉が再生する。
「JES1」はエリアンサスの国内外ともに初となる品種。関東北部では11月上旬ごろに出穂が始まるが低温のため種子ができず、雑草化の懸念がない。一方、熱帯・亜熱帯地域では種子が稔り雑草化することが想定されるため、「JES1」の普及地域はわが国では九州地方以北とすることにしている。南西諸島と小笠原諸島には種苗を持ち込まないことを品種利用上のルールとしている。 他方で越冬性の問題から栽培北限は東北南部の低標高地と考えられるため、九州から東北南部の低標高地、非積雪地で普及を進めたいという。
また、今回の実用化にはペレット化の成功も要因だ。草本系原料は造粒が難しいといわれてきたが、(株)タカノが技術開発を行って実現した。
地域によっては耕作放棄地の拡大が深刻だが、農業者不足のなかでその解消をめざすためには省力的、低コストで生産持続可能な作物とその利用法が期待されていた。農研機構は今回の事例は小規模でも地域内での自給燃料生産・利用という事業モデルとして各地の役に立つとしている。
(関連記事)
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