独自のゲノム編集技術でゲノム編集ニワトリ個体の作出に成功 セツロテック2023年1月11日
ゲノム編集受託サービスを提供する徳島大学発ベンチャー企業のセツロテックは、独自のゲノム編集技術・ノウハウを活用し、国内の大学発ベンチャーとして初めて、ゲノム編集したニワトリ個体を作出することに成功した。この成果は、ゲノム編集技術による効率的なニワトリ新品種作出につながるもので、家禽類の育種改良の高速化や高付加価値化が実現できる。
研究内容
セツロテックは、生物の遺伝子を自在に編集できるゲノム編集技術を活用し、顧客のニーズに応じて、農業畜産分野での新品種開発に取り組む研究開発受託サービス「PAGEs」を展開。同研究開発では、ゲノム編集ニワトリ作出技術の確立を目的とし、cVasa遺伝子の発現を蛍光タンパク質で可視化することをモデルとして、ゲノム編集ニワトリの作製した。今後は、同成果を基盤として、豊田通商をはじめとするニワトリ事業を展開する企業と広く共同開発を進め、消費者が求める形質を持ったゲノム編集ニワトリ新品種の開発、育種改良の高速化や高付加価値化など、効率的な新品種作出に向けて取り組む。
ニワトリは、近年では食品としての利用だけでなく、鶏卵由来のワクチンやバイオ医薬品などの生産にも利用されるなど、その利用価値は非常に高いが、現在の養鶏業は、新たな感染症への対策や気候変動への対応、アニマルウェルフェアの向上などの様々な課題を抱え、新たな品種改良技術の開発・普及が求められている。
ゲノム編集技術を多様な生物種へ適用し、新品種の開発を目指す「ゲノム編集育種」は、世界のホットトピックの1つ。マウスやブタなどの哺乳類の場合、体外受精等によって受精卵を比較的容易に入手できるため、受精直後の受精卵(1細胞期)の段階でゲノム編集が行なわれる。一方、ニワトリの受精卵(1細胞期)は、殻がついていない状態でメス体内(輸卵管)にあり、体外に産み落とされた有精卵はすでに2万細胞以上へ分裂。このため、受精卵(1細胞期)や、産み落とされた有精卵の段階でのゲノム編集は難しい。そこで、精子や卵子の「起源」となる始原生殖細胞(PGC)の段階でゲノム編集を行い、ゲノム編集PGCをニワトリ個体に移植することで、ゲノム編集ニワトリを作出することが一般的だ。
PGCを活用したゲノム編集ニワトリ作製には、PGCを安定的に培養する技術、PGCをゲノム編集する技術、PGCをレシピエントニワトリに移植する技術など高度な技術が求められるため、これまでゲノム編集ニワトリの作製に成功したという報告は少ない。
セツロテック研究開発部の竹本龍也氏、陳奕臣氏らの研究グループは、ニワトリ胚からPGCを摘出し、体外培養後、PGC特異的に発現するcVasa遺伝子座に蛍光レポーター遺伝子mCherryを挿入するゲノム編集(cVasa-mCherry)を行い、得られたゲノム編集PGCを、レシピエントニワトリに移植。このレシピエントニワトリの生殖巣(精巣・卵巣)には、移植されたゲノム編集PGCが定着している。成鶏になったニワトリ(F0 個体)を野生型ニワトリとかけ合わせ、ゲノム編集ニワトリ個体(F1)を誕生させることに成功した(図A)。

ゲノム編集ニワトリを解析したところ、設計したとおりに、cVasa遺伝子座に蛍光タンパク質遺伝子が挿入され、cVasa遺伝子の発現と一致。精巣・卵巣で赤い蛍光が確認された(図B)。これらのF1ニワトリ個体を構成するすべての細胞は、cVasa-mCherryヘテロ接合型となり、次世代以降にもこの遺伝型・形質が維持される。
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