【特殊報】キクにクロゲハナアザミウマ 県内で初めて確認 島根県2024年9月9日
島根県病害虫防除所は、キクにクロゲハナアザミウマの被害を県内で初めて確認。これを受けて、9月9日に令和6年度病害虫発生予察特殊報第1号を発表した。

(提供:島根県病害虫防除所)
島根県病害虫防除所によると、6月下旬に県東部の施設栽培のキクにおいて、葉の表面および裏面にかすり状の白い食害痕と黒褐色の汚れを観察(図1)。また、葉上にはアザミウマ類の成虫・幼虫が多数観察された。
被害様相が従来のアザミウマ類によるもの(ケロイド状の食害痕)と異なっていたため、これらのアザミウマ類を採集し農林水産省神戸植物防疫所に同定依頼したところ、島根県では未発生のクロゲハナアザミウマと同定された。被害を発見したほ場の周辺を追加調査したところ、複数のほ場で同様の被害とクロゲハナアザミウマの寄生を確認した。
クロゲハナアザミウマは、日本を含む全世界の温帯域に広く分布し、日本では全国に生息している。同種はヒマワリ、トルコギキョウ、バラ類など様々な作物に寄生するが、特にキク科の植物に好んで寄生する。
国内では全国各地で被害が報告されており、2011年に静岡県で、2012年に沖縄県で同種が露地栽培キクにおける最優占種とされていることがそれぞれ報告されている。また、2022年には岩手県で特殊報が発表されている。
白いかすり状の食害痕がハダニ類の被害と似る。同種は茎頂付近に好んで寄生するため、被害が上位葉まで及ぶことで出荷に影響する場合がある(図2)。島根県では花への寄生も確認されており(図3)、蕾の内部に侵入し花弁を食害するため、出荷直前の花に被害が及ぶと品質低下を招く。
クロゲハナアザミウマの体長は雌成虫約1.3mm、雄成虫約1.0mm。体色は黄色で、胸部にある褐色斑が特徴(図4)。触角は7節あり、第1節のみ淡色、他の節はすべて褐色。前胸背板前縁の刺毛や複眼後方の刺毛は目立たず、前胸背板後縁の刺毛は長く目立つ。
同種の卵から成虫になるまでの発育期間は25℃で約15日。国内における発生経過は詳しく解明されていないが、年3~4回の発生と推定される。また、キクへの被害は4~6月の生育初期に多く、施設栽培では冬季でも発生する。越冬は成虫で行い、蛹化は植物下の土中で行われる。
同防除所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇クロゲハナアザミウマによる白いかすり状の食害痕はハダニ類の被害と似ているため、加害種をよく確認した上で薬剤を選定する。
〇同種は葉裏に多く寄生しているため、薬剤散布を行う場合は、薬剤が葉裏まで行き渡るように丁寧に散布する。
〇薬剤の使用に当たっては、農薬ラベルに記載の使用方法・注意事項を遵守する。
〇薬剤防除に当たっては、薬剤抵抗性の発達を防ぐため、系統の異なる薬剤のローテーション散布を行う
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