【リレー談話室・JAの現場から】100円乳価2017年6月4日
◆生産回復の道筋を
日本で一番遅いといわれる桜の花も終わり、草地も緑一面となってきた。半年余り畜舎に閉じ込められていた乳牛たちも放牧地でのんびり草を食んでいる。一方でその乳牛から生産された生乳取引をどのような仕組みにするか、東京では熱い議論が始まった。50年間維持されてきた加工原料乳生産者補給金等暫定措置法が廃止となり、畜産経営安定法に組み込まれることになっている。暫定措置法から恒久法に組み入れられるのだから単純に解釈すればよかったなあということになるはずだが、そうもいかないようだ。
50年間といえば概ね2世代にもなり、全国で90数パーセントの酪農家がその対象になっているのだから一体どうなるんだと不安になるのも当然である。しかも自分たちで運営している指定団体が中心となり、需給調整や乳業メーカーとの価格交渉など必死になってやってきたという自負もある。
いずれにしても、来年4月から新たな仕組みで取り引きを開始すべく一連の法改正の作業が始まったと報道されているが、生まれた子牛を搾乳できるまで2年余り育て、日に2回の搾乳を欠かさず行っている酪農家に対し、今まで以上の制度となるよう是非とも関係者の方にお願いしたい。
先日、4月に出荷した乳代の精算表が届いた。当組合傘下の酪農家に支払われた乳価の平均が1kg当たり100円18銭(補給金込)となった。昨年同期より3円35銭の値上がりとなり、初めて100円を突破した。本州の夏乳価では普通のようだが、当組合では初めてのことである。
10年前には70円台前半(補給金込)で取り引きされていたことから比較すると30円近くも上がったことになる。今は空前の価格で生産者側としてはいうことがない状態である。しかし、食卓から欠くことができない牛乳でも需要と供給のバランスで価格が決定されており、この先どうなるのかいささか不安に思える。商品となった牛乳、乳製品の小売価格は、確かに当時より値上がりはしているが、原料の値上げがストレートに反映されているとは思えない。物流の中で誰かが、どこかでコストダウンを余儀なくされているのであればそのうちほころびが出るのではないかと感じる。
生乳は毎日、生ものが液状で大量に生産される。しかも温度管理が命である。その特殊性から関わっている方々が役割をきちんと理解し、滞りなく熟していかなければ大変なことになる。1日たりとも止まることがあってはならないのである。
バター不足に端を発し、制度改変にまで進んでしまったのは生乳生産量の減少が大きな要因である。全国の生産量の推移をみれば1996年には860万tあったものが20年たった現在は、740万tまで減少してしまった。特に、本州の減退が著しく回復は難しいと言われている。全国的に関係者の方々はいろいろ知恵を絞って生産回復を模索しているが、効果的な対策は今現在でも見出せていないのである。
追い打ちをかけるように自然災害や猛暑などに見舞われ、残った酪農家は必死の思いで生産確保に日々努力している。100円乳価と言ってもいつまで継続されるのか全く予想がつかない。先が見えれば新たな投資や新規にチャレンジする者がもっと出てくるだろう。農業は地道に細く長く、が大事で決して大きく目立つ産業ではない。政府は競争原理を導入すれば成長産業になると声高くあおっているが、酪農も含め農業は競争ではなく協同なのだ。
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】ブロッコリーの黒すす症状 県内で初めて確認 愛知県2025年7月3日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 富山県2025年7月3日
-
【注意報】花き類、野菜類、ダイズにオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 愛知県2025年7月3日
-
【注意報】ネギ、その他野菜・花き類にシロイチモジヨトウ 県下全域で多発のおそれ 富山県2025年7月3日
-
【注意報】りんご、なしに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 宮城県2025年7月3日
-
【注意報】ねぎにシロイチモジヨトウ 県内全域で多発のおそれ 宮城県2025年7月3日
-
【注意報】セイヨウナシ褐色斑点病 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月3日
-
【注意報】いね 斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月3日
-
米生産に危機感 高温耐性品種など急務 日本作物学会が緊急声2025年7月3日
-
【人事異動】農水省(7月4日付)2025年7月3日
-
花産業の苦境の一因は生け花人口の減少【花づくりの現場から 宇田明】第63回2025年7月3日
-
飼料用米 多収日本一コンテストの募集開始2025年7月3日
-
米の民間在庫量 148万t 備蓄米放出で前年比プラスに 農水省2025年7月3日
-
【スマート農業の風】(16)温暖化対応判断の一助にも2025年7月3日
-
令和7年度「家畜衛生ポスターデザインコンテスト」募集開始 農水省2025年7月3日
-
農業遺産の魅力発信「高校生とつながる!つなげる!ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」開催 農水省2025年7月3日
-
トロロイモ、ヤマノイモ・ナガイモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第347回2025年7月3日
-
【JA人事】JA町田市(東京都)吉川英明組合長を再任(6月26日)2025年7月3日
-
【JA人事】JAふくおか嘉穂(福岡県)笹尾宏俊組合長を再任(6月26日)2025年7月3日
-
国産農畜産物で料理作り「全農親子料理教室」横浜で開催 JA全農2025年7月3日