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国家私物化は「些細な問題」ではない2018年4月19日

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【鈴木宣弘・東京大学教授】

 昨今の国会審議などで官僚が、誰が見ても明らかなウソを平然とつき続ける光景を見て、何を守るために、ここまでして、国民の前で醜態をさらしても頑張るのだろうか、と不思議になる。かりに国家中枢からの命令とはいえ、そこまでして、自身の組織と地位を守り、あるいは大金が入ったとしても、役人としての矜持も人間しての尊厳もかなぐり捨てても、生きながらえたいのだろうか。志を高くして入省したであろう若き日を想うと、立場は相当違うが、同時期(昭和57年)に役所に入った一人として、悲しくてならない。
 しかし、いま国会で追及されている獣医学部新設の経緯などについて、一部の人たちは、「些細な問題で時間を浪費するのをやめて、もっと重要な案件(法案)を議論すべきだ」と主張する。筆者は、この指摘は、問題の本質を見落としているように思う。
 なぜなら、一連の問題は、「国家私物化」という規制「改革」の本質、「世界私物化」という自由貿易の本質と根っこが同じ根本的問題だからである。「政治家の口利きはよくあること」ですまされない。実際、まじめに努力している人たちが報われず、一部の「お友達」に有利なルール変更が行われ、巨額の税金が不公平に投入される、という事態がこれ以上繰り返されれば、巨悪がますます焼け太り、善良な市民が食い物にされて苦しむ。このような問題をうやむやにしていては、他のどんな案件もまともに議論できない。
 筆者は、獣医学部の問題が浮上するずっと前から、同様の構造が蔓延していることを国会でも指摘した。2016年5月19日の内閣委員会「国家戦略特区一部改正案」の筆者の質疑(議事録)の一部(下線は筆者による)を紹介する。

○山本太郎君
 鈴木先生にも石破大臣と同じ質問をさせていただきたいと思います。今回のように、農業を国家戦略特区に含めることで、地方創生、地方に暮らす人々の繁栄、豊かさにもつながっていくとお考えになりますでしょうか。
○参考人(鈴木宣弘君) 私の理解では、国家戦略特区は岩盤規制に穴を開ける突破口だというふうに定義されていると思います。端的に申し上げれば、特区は政権と近い一部の企業の経営陣の皆さんが利益を増やせるルールを広げる突破口をつくるのが目的ですから、地方創生とは直接結び付いていないと思います。むしろ、地方創生には逆行します。
 なぜならば、地域の均衡ある発展のために維持してきた相互扶助的なルールは、まさに、今だけ、金だけ、自分だけの一部企業が地域で利益を得るためには障害となります。そこで、それらを既得権益、岩盤規制との名目で崩し、既存の人々、農家の皆さんのビジネス、お金が奪われていきかねません。既存の業者や農家の方々が多く失業し、地域コミュニティも崩れていく可能性があります。つまり、地域全体としては衰退する可能性があるということを考えなきゃいけないと思います。
(中略) 日本でも、TPPに関連してあっせん利得罪の議論がありましたけれども、TPPを推進するアメリカの共和党の幹部は、巨大製薬会社から二年で五億円もの献金を得て、TPPで新薬のデータ保護期間の延長を要求しましたように、TPPには巨大なあっせん利得罪の構造が当てはまります。結果的に、TPPは政治と結び付く一部の企業の経営陣が利益を増やすルールを押し付け、広げていくことが大きな目的でありますから、これは国家戦略特区の思想とも同じです。

○国務大臣(石破茂君) 鈴木先生と私が農林水産大臣のときに毎日みたいにいろんな議論をさせていただき、政策づくりに当たっていろんな御示唆をいただいてまいりました。 (略)

○参考人(鈴木宣弘君) 1割の農地だけが非常に大きな企業で利益を得ても、その他ほとんど9割の地域農業が衰退するようなことにもしなったら、それは日本の地域創生にはなりませんし、安全、安心な食料を国民に提供し、国民の命を守ることもできなくなります。その点を考えた政策が必要だと思います。
 そういう意味では、私は、石破大臣が農水大臣のときにやっていただいたように、反対から賛成まで、あらゆる方々の意見をきちんと聞く農政改革会議をつくって、そして総合的に何が必要かを決めました。今の規制改革会議は、一部の利害関係者だけで決められる構造になっております。これをまず改善していただきたい。

 国家戦略特区に象徴される規制緩和はルールを破って特定企業に便宜供与する国家私物化であり、TPP型協定に象徴される自由貿易は国境を越えたグローバル企業への便宜供与で世界の私物化である。利権で結ばれて、彼らと政治、メディア、研究者が一体化する。これが規制緩和、自由貿易の正体である。
 このように、国民の声と政治は必然的に乖離する。「1%対99%」と言われるが、政治は1%の「お友達」の利益のために進められるから、99%の声は無視される。日本が最も極端であり、そうした日米のお友達企業の要求を実現する窓口が規制改革推進会議であり、官邸の人事権の濫用で行政も一体化し、国民の将来が一部の人達の私腹を肥やすために私物化されている現状は限度を超えている。ここで終止符を打てなくて、重要法案の審議も何もあったものではない。

 

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