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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

第14回 辺境から革命は興るーー酒田スーパー農業塾卒塾生の実践ーー2017年5月13日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

今村奈良臣 東京大学名誉教授 特定農業生産法人、株式会社和農日向(わのうにっこう)というのが、島海山の麓の中山間地域である山形県酒田市(旧八幡町)日向三ヶ字地区に2007年2月11日に誕生した。加工・販売等の分野からならともかく、農業生産を主たる活動分野として農村の内部から地域を基盤に内発的に株式会社の組織形態を選択して設立されたという前例を、私は全国でもいまだ聞いたことがない。
 株式会社を選択した意図のなかには、非常に重要な要素が含まれているが、その点は後に詳しく考察してみたい。
 また、庄内平野の中心部の歴史的にみても優良な水田地帯から新しい動きが起こらずに、島海山麓の日向川上流の中山間地域からこういう斬新な発想のもとに革新的な実践が出てきたことに、かなり古めかしい表現だが、私は「辺境から革命は興る」という言葉を想起したのである。

<共同活動の積み重ねを生かす>
 日向三ヶ字地区(下黒川、上黒川、草津)は、東経140度、北緯39度という記憶に残る地点にある。
 この地区では、かねてより、中山間地域等直接支払制度を生かすべく集落協定を組織化し、水田のほ場整備事業を実施し、さらに高齢化・兼業化の進展のなかで農用地利用改善団体を設立するなど、多面的な地域の共同活動をすすめてきていた。そういう共同活動の積み重ねのなかで、登場した品目横断直接支払い制度という農政改革にいかに対応すべきかという討議を深めてきた。
 その討議のなかで、単に農政改革に対応する水田農業改革にとどまったのでは、地域の将来展望が見いだせないのではないかーこういう考え方のもとに地域全体を基盤に置く株式会社という組織形態を選択したのである。
 そこで、なぜ株式会社という組織形態を選択することにしたか、その背景と理由ならびに根拠について詳(つまび)らかにして整理しておこう。

<なぜ、株式会社か>
 第1、定款を見ると、農業および農業関連事業と併せて、農畜産物の加工・販売、林業にかかわる事業、除雪や建設などの請負事業、農業生産資材の製造・販売など広範な事業分野が盛り込まれている。
 農村地域社会、とりわけこの地区のような中山間地域では水田農業のみで成り立っているわけではなく、林業関係はもちろん豪雪地帯であるため除雪などの多分野にわたる活動をしなければならないことを意図しているのである。
 第2に、農業については、地区内農家62戸のうち53戸から50haの水田の利用権の設定をこの株式会社が受け、多面的に活用しようとしている。食用の水稲はアキタコマチを中心に約30haの作付け(生産調整の割当てを遵守)のほか、後に述べるホール・クロップ・サイレージやソバ、赤カブ、山菜、花木などのほか、加工・販売等々、多彩な作付け体系のうえで高度活用をめざしている。
 第3、この地区の非常に大きな特徴は、ホール・クロップ・サイレージづくりを通して、耕畜連携の望ましい方向を打ち出しているところにある。ホール・クロップ・サイレージとは、水稲の登熟期に実もワラも併せて刈り取り、ラッピングして乳酸菌などを加えて熟成させ、乳牛などの良質発酵飼料となるものである。
 すでに、中山間地域等直接支払制度の交付金で調達したラッピング・マシンなども引き継ぎ活用しているが、ここで作られた飼料は鳥海高原牧場や遊佐町など近隣地域の酪農家に高く評価され、飼料高騰のなかで引く手あまたの状態である。他方、畜産廃棄物であるふん尿は堆肥として全量引き取り、10a当たり2tを水田に還元して地力の向上に役立てている。
 第4、株式会社を選択したいまひとつの、かつ最大の理由は、農事組合法人などの場合は構成員全員の1人1票の原則のため容易に意志決定ができにくい場合が多いが、株式会社の場合には取締役会で迅速な意思決定ができ弾力的かつ的確な運営が行える利点が大きいという。もちろん取締役会の自己責任の原則を徹底するとともに地権者等構成員関係者への情報公開と意見の汲み上げは徹底して行っている。

<地域興しは人材が基本である>
 以上、日向三ヶ字地区での株式会社和農日向が、なぜ株式会社を選択したか、その理由と根拠について整理して述べてきたが、ここで強調しておきたいことは、取締役会などのリーダーの資質についてである。
 取締役社長の阿曽千一君と取締役(販売・営業担当)の阿曽右貢君の両君は、私が塾長を務めている酒田スーパー農業経営塾の卒塾生である。その卒塾論文では、三ヶ字地区の将来像とそのために株式会社を設立して新しい時代を切り拓くという内容を2人とも明快に展開していた。
 この卒塾論文に結実する前提には2006年7月に三ヶ字地区でスーパー農業経営塾の公開研究会を地区の公民館で開催したことが大きな契機になったと思っている。この地区の会合には塾生たち全員はもちろん、地区の長老や役員はじめ住民の皆さんも多数参加した。
 この席上で、私は「今の小学生、中学生がこの村に残るか、残って農業をやるだろうか、農業をやってもらうためにはどうすべきか」という問題提起をした。議論は白熱した。それを紹介するいとまはないので省略せざるをえないが、村のリーダーたちはもちろん、村人たちの将来構想に向けての意思は、これをきっかけに固まっていったように思う。
 さて、両阿曽君以外に取締役3人、監査役2人がいるが、これらの方々はいずれも市内の有力企業などに勤めており、それぞれ経理や建築士、あるいは大型免許をもつなど多部門のエキスパートが揃っている。また、社員は1人専従でいるが、農業技術はもちろん、大型機械の免許をほとんどもっている有能な人材で、この会社を支えている。

<多様性のなかに真に強靭な活力は育まれる>
 私はかねてより、「多様性のなかに真に強靭な活力は育まれる。画一化のなかからは弱体性しか生まれてこない。多様性を真に活かすのがネットワークである」との信念をもち、もちろん農民塾生たちにもそのことを強調し、説いてきた。
 株式会社和農日向は、まさに地域に根ざし多様な農業、多様な地域資源の組織化、そして多様な人材をそれぞれの持場で活かしながら新しい時代の先端を切り拓いてくれているように思う。
 新しい時代にふさわしい地域の特性を踏まえた「ネットワーク」を各地で作り上げてほしいと思う。

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