【インタビュー 赤松光・コープネット事業連合理事長】協同組合の価値・役割を無視した農業WG「意見」(上)2016年12月3日
官が民間を規制する統制経済化めざすもの
「生産資材の価格」問題から始まった「農業改革」は、いつの間にやら「全農改革」へと変貌し、農業WGの高拍子な「意見」から自民党を経て閣議決定に至った。こうした動きを、同じ協同組合である生協の人たちはどう見ているのか。日本最大の生協組織であるコープネット事業連合の赤松光理事長に率直に語っていただいた(なお、このインタビューは11月29日に行われた)。
◆協同組合の自治・自立を侵すもの
――11月11日に出された規制改革推進会議農業WGの「農協改革に関する意見」について、どう見ておられますか。
農業WGの「意見」については、国際協同組合同盟(ICA)のチャールズ・グールド事務局長名で「独立した民間組織である協同組合の機能に対する不当な干渉」とする書簡を日本協同組合連絡協議会(JJC)委員長あてに出しました。
さらに11月18日には、インドで開催されていたICA太平洋地域総会が「協同組合の自治・自立を侵害しかねない日本政府の動き」として「強い懸念」と「日本の協同組運動への強い支援」を表明する決議を満場一致で採択しています。11月22日には、日本生協連も加盟するJJCは、「強い懸念を表明する」声明を出しました。
私も基本的に同じ考えですが、整理すると、まず、協同組合の持っている社会的な使命・役割についてまったく無理解であり、国連が定めた2012年の国際協同組合年で、地域社会のなかでコミュニティとしての役割を果たす協同組合の価値を日本国政府も認めているにも関わらず、そのことが全く無視されています。
二つ目は、民間である協同組合が行っている事業の懐に官が手を入れて、「官が民間を規制する」内容となっています。「自治・自立」の協同組合の事業は組合員が決定するものであり、国家が統制すべきものではありません。これでは健全な市民社会や市場経済が育つことはできません。あまりにも乱暴な介入であり、これでは「規制改革推進会議」ではなく経済統制を進める「規制推進会議」ではないかと、皮肉の一つでもいいたくなる内容だといえます。
◆ 農協の役割を重視し農業再生へ
――その後策定された自民党の「農業競争力強化プログラム」やそれにもとづく政府の「農林水産業・地域の活力創造プラン」改定については、どう見ておられますか。
「農業競争力強化プログラム」では農業WGの「意見」にあった乱暴なところは修正され、全農が中心的な役割を担うことが書かれていることは前進です。しかし全農の自己改革を与党および政府がフォローアップすることが明記されており注意が必要です。今後、規制改革推進会議のような乱暴な立場が反映されないようにしていかなくてはなりません。政府も、農協を悪者、規制の対象としてみるのではなく、農業再生の重要なパートナーとして共に進めることが必要です。
「競争力を強める」「大規模に集約化する」「輸出を拡大する」ことも重要ですが、それだけでは「農林水産業・地域の活力創造プラン」に書いてある国民の食を守り、美しく伝統ある農山漁村を将来にわたって継承することはできません。
――協同組合の価値が大事ということですね
地方・地域で果たしている農協や生協など協同組合の価値・役割も位置づけられなければいけません。いま、中山間地などの地域から農協や生協がなくなったらその地域は崩壊しかねません。だから、国際協同組合年で協同組合の価値が認められたわけです。
せっかくいま、地域に農協があるのですから、これを上手に使えばいいと思います。国や行政が切り捨てたセーフティーネットを助けてくれる役割だってもっているわけですから。
このまま彼らがいうようになれば、協同組合が協同組合ではなくなります。全農を株式会社化しろとか、農協は総合農協ではなく職能組合となり准組合員は切り捨てろといっています。つまり、地域社会における農協の役割をなくし、大規模生産者のためだけの「ギルド」にしろといっているわけですから。農協には競争力強化の役割と地域を守る役割の二つがあり両方とも重要です。
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