中国農業の市場化と農村合作社の展開

- 著者
- 神田健策・大島一二 編著
- 発行所
- 筑波書房
- 発行日
- 2013年1月16日
- 定価
- 2500円+税
- 電話
- 03-3267-8599
- 評者
- 坂下明彦 / 北海道大学農学研究院教授
中国の胡錦涛政権は昨年で交代したが、この政権が最も重視したのが「三農問題」(農業・農村・農民問題)であった。その対策として農業税および関連する農民負担が廃止され、農村の教育費も中央経費とされ、農民への直接支払いは2兆円(2011年)に上っている。また、社会主義新農村建設や全国農業総合開発の資金投入も増加の一途をたどっており、この中には農業産業化経営(アグリビジネス化)に対する資金が含まれる。本書が対象とする農村合作社(農民専業合作社)はこの政策の一部である。
中国の農協、その最新動向を分析
1990年代半ばには、農産物は大勢として不足から過剰局面に入り、いかに販売するか、そのための生産・加工・流通体制の整備をどうするかが焦眉の課題となった。その主体として位置づけられたのが龍頭企業(農産加工流通企業)と農民専業合作組織であった。
前者は1990年代後半からの私営企業化の波に乗り急速に伸長したが、後者は政府の法制化の決断がつかず、膨大な組織が形成されたにも関わらず実効性が伴わなかった。法制化はこの政策下の2006年であった。
本書では、1章から3章において政府による農村合作社政策の展開の背景・内容・意義を整理している。編者らは中国で初めて設置された青島農業大学(山東省)の協同組合学科の設立や運営への支援を行っており、そこで得られた中央・地方政府、合作社の情報をもとに整理を行っている。4章から6章は、近年注目される合作社の事例分析をもとにその機能と課題を整理している。産地商人主導型の合作社形成の意味づけ、合作社によるスーパーマーケットとの先駆的な産直の動向、品目別専門農協の機能をこえた新たな信用事業合作社の設立などである。7章から9章は、日本への農産物輸出基地を意識して、日系を中心とした食品企業向けの原料農産物産地の動向を分析している。中国の農業動向が日本に直結する昨今、農協の動向を知る最新の書としてお勧めする次第である。
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米、稲WCSへの十分な支援を JAグループ2025年10月16日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】本質的議論を急がないと国民の農と食が守れない ~農や地域の「集約化」は将来推計の前提を履き違えた暴論 ~生産者と消費者の歩み寄りでは解決しないギャップを埋めるのこそが政策2025年10月16日
-
死亡野鳥の陰性を確認 高病原性鳥インフル2025年10月16日
-
戦前戦後の髪型の変化と床屋、パーマ屋さん【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第360回2025年10月16日
-
「国消国産の日」にマルシェ開催 全国各地の旬の農産物・加工品が集合 JA共済連2025年10月16日
-
静岡のメロンや三ヶ日みかんなど約170点以上が「お客様送料負担なし」JAタウン2025年10月16日
-
高齢者の安全運転診断車「きずな号」を改訂 最新シミュレーター搭載、コースも充実 JA共済連2025年10月16日
-
安心を形にした体験設計が評価 「JA共済アプリ」が「グッドデザイン賞」受賞 JA共済連2025年10月16日
-
東京都産一級農畜産物の品評会「第54回東京都農業祭」開催 JA全中2025年10月16日
-
JA協同サービスと地域の脱炭素に向けた業務提携契約を締結 三ッ輪ホールディングス2025年10月16日
-
稲わらを石灰処理後に高密度化 CaPPAプロセスを開発 農研機構2025年10月16日
-
ふるさと納税でこども食堂に特産品を届ける「こどもふるさと便」 寄付の使いみちに思いを反映 ネッスー2025年10月16日
-
「NIPPON FOOD SHIFT FES.」に出展へ 井関農機2025年10月16日
-
マルトモが愛媛大学との共同研究結果を学会発表 鰹節がラット脳のSIRT1遺伝子を増加2025年10月16日
-
マックスの誘引結束機「テープナー」用『生分解テープ』がグッドデザイン賞を受賞2025年10月16日
-
北海道芽室町・尾藤農産の雪室熟成じゃがいも「冬熟」グッドデザイン賞受賞2025年10月16日
-
夏イチゴ・花のポット栽培に新たな選択肢「ココカラ」Yタイプ2種を新発売2025年10月16日
-
パルシステムの奨学金制度「2025年度グッドデザイン賞」を受賞2025年10月16日
-
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月16日
-
鳥インフル デンマークからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月16日