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復刻版 協同組合の理論と実践

  • ●著者:賀川豊彦
  • ●発行所:日本生活協同組合連合会出版部
  • ●発行日:2012年11月30日
  • ●定価:1000円+税
  • ●電話:03-5778-8183
  • ◎評者:北出俊昭 / 元明治大教授

 賀川豊彦は敬虔なクリスチャンで青年時代に神戸のスラム街で生活し、その後布教はもとより貧民救済、労働運動、農民運動、平和運動などに取り組み、日本初のノーベル文学賞候補になりました。  また熱心な協同組合運動者であり、協同組合に関する多くの著作も残しています。その中で本書は1946年に発行されたが全集には収められておらず、今回の復刻版によりはじめて知ることができる貴重な文献です。

協同組合の社会的役割を重視

book1308090703.jpg 本書はまず、「賀川豊彦・人と働き」について述べていますが、これにより読者は彼の一生を簡潔に知ることができます。本文はそのあとにあり、序のほか29節で構成されています。それを大別すれば、第1節〜第8節「協同組合の本質」、第9節〜第12節「協同組合の前史」、第13節〜第15節「ロッチデールと日本の協同組合の歴史」、第16節〜第26節「協同組合の実際」(以上「解説」)、第27節〜第29節「協同組合と社会改革」となります。
 賀川豊彦の協同組合論には多くの特徴がありますが、本書からとくに指摘したい第一は、協同組合に対する信頼と協同組合社会実現の必要性を重視していることです。本書ははじめに「協同組合なき社会の恐るべき混乱」や「資本主義社会の悲哀」について述べ、「世界を一つの協同組合経済の世界とするために、あらゆる無用な経済はこれを破壊して、世界の経済を建て直す協同組合への道を獅子奮迅の勢いで努力せねばならない」と訴えているのはそれを端的に示しています。
 「協同組合による国家改造」や「協同組合代表による議会改造」のあと最後に「世界平和と組合国家」について述べているのも、協同組合国家は世界平和の実現でもあるという賀川の信念を示しています。賀川は協同組合を一面では精神運動と認識していたため教育を極めて重視しましたが、協同組合国家を実現しようとすればこれは当然のことです。
 特徴の第二は賀川がそこまで協同組合を重視した理由です。それは彼が「協同組合の本質」を「助け合いの組織」、「(キリスト教の)兄弟愛の組織」と認識し、自由放任で利己的な資本主義社会の対極にあるとみていたからです。本書で賀川は協同組合を人体に例え、生産は筋肉、消費は消化器、金融などは血行、販売は呼吸、共済は泌尿器、保険は骨格、利用は神経とし、協同組合の機能発揮にはこの7組合の「結合統治」が必要なことを強調しています。
 これは社会全体を一つの有機体と考えそれを健全に維持する上で協同組合の役割を説いたものですが、社会も人体と同じようにみて「多様な人々=器官」の「助け合い=総合調整」を述べたものとして興味あることです。
立体農業を提唱
 第三はロッチデールなど世界の協同組合の歴史と理念を重視するだけでなく、日本と地域の歴史と実体に即した協同組合活動を重視したことです。賀川は日本には無尽、頼母子講のような民間の共済制度があり、地割制度という一種の土地利用組合があって洪水などの天災時には助け合い組織として機能したことを強調しています。 これに関連し著書「産業組合の本質とその進路」では、地域の土地条件を多様に活用した複合的な農業生産と加工を取り入れた「立体農業」を産業組合の重要な活動として提示していますが、この意見は現在の6次産業化を70年以上前に提唱したことを示しています。そこには賀川の私心のない、地域とそこに住んでいる人々の幸せを心から求める気持ちが表れているといえます。
 賀川は広範な社会問題に先駆的に携わった敬虔なクリスチャンですが、究極的に辿り着いたのが協同組合運動だったといわれています。本書はその思想と実践について改めて学ぶ必要を痛感させる貴重な一書といえます。

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