地方消滅 東京一極集中が招く人口急減

- 著者
- 増田寛也 編著
- 発行所
- 中公新書
- 発行日
- 2014年8月25日
- 定価
- 本体820円+税
- 電話
- 03-3563-1431
- 評者
- 北出俊昭 / 元明治大学教授
消滅論に立ち向かう
地域づくり戦略こそ大切
『地方消滅』はこの報告を受け、増田寛也氏が座長の日本創成会議が「中央公論」2013年12月号、2014年6月号および同7月号に発表した論文を再構成し加筆したものである。
同書では社人研の推計を基に、2010年から40年までの間に「20?39歳の女性人口」が5割以下に減少する自治体が896、全体の49.8%に達するとし、これらの自治体を「消滅可能性都市」と規定した。
そのうえこの「地方消滅」は人口の「自然減」だけでなく、若年層の人口流出による「社会減」により加速されるので、東京都区部、大阪市、名古屋市、福岡市などは「社会増」を示すが、それ以外では大幅な「社会減」がみられ、地域により大きなバラつきがあるとする。
こうした動向を踏まえ著者は、「拠点社会」による大都市集中は集積効果のある経済構造ともいえるが、逆に大きな経済変動に弱い「単一的構造」であり、大規模災害リスクへの対応でも問題があるので、「東京一極集中」に歯止めをかける対策として「選択と集中」を強調する。具体的には全国の各地域で広域ブロック単位の資源や政策を集中的に投入した「地方中核都市」の形成を提起する。
その理由は、「地方中核都市」が発展すると若者の定住化が進み出生率も上がるので、人口流出を食い止める「ダム機能」も果たすからである。そして本書の最後では、全国の全市町村の将来推定人口による「消滅可能性都市」も具体的に示されている。
この地方中核都市構想では周辺市町村からの人口流出が一層促進され過疎化が進むことになるとして、「消滅可能性都市」とされた自治体は大きなショックを受けている。また、国民の60%以上が「住み慣れた土地を離れたくない」と思っている実態(内閣府調査)とも矛盾しているので、この提言に「地方創生に名をかりた地方切り捨て」とする批判があるのも当然である。
一方の『移住者の地域起業による農山村再生』は、本年4月に発刊がはじまった一連の「JC総研ブックレット」の「No.5」として出版されたもので、前者とは全く異なった地方活性化対策を示している。
同書の特徴は農山村への移住者の志向は、1990年代後半の農林漁業中心から2000年代後半では、「田舎暮らし」や「ライフスタイルの転換」も強くなっていることに注目する。このため定年退職者などの高齢者だけでなく若者も多くなり、移住後に希望する仕事も「なりわい」として「起業」も含め多様化していることを強調する。このため市町村の移住者の受け入れ対策でも多様な「なりわい」への対応が必要で、「就業」だけでなく「起業」や地域資源を活用した従来事業の「継業」までの取り組みを強調する。
そのうえでこれまでとは異なる移住者を取り入れた新しいコミュニティ(地域運営組織)形成が重要な課題であるとする。当然、自治体はこうした観点に基づいた「地域づくり戦略」をもつ必要があるが、これは注目すべき新しい見解であるといえる。
いずれにしても、11月末までの臨時国会に「まち・ひと・しごと創生法案」が提案され、政府も「同創生本部」(本部長安倍首相)を設置し「同会議」も初会合を開くなど、地方再生問題は国政上の重要な課題となっている。政府は当然「地方消滅」の論理による対策を進めるが、それに対応するうえでも地域課題への正しい認識が求められている現在、両書とも一読の意義があるといえよう。
【JC総研ブックレット『移住者の地域起業による農山村再生』】
筒井一伸・嵩和夫・佐久間康富 著 小田切徳美 監修
筑波書房(本体750円+税)
重要な記事
最新の記事
-
【2025国際協同組合年】「協同組合っていいかも!」 若い世代へ発信を 連続シンポ第6回2025年10月15日
-
イネカメムシをムシヒキアブが捕食 「天敵」防除に可能性 有機農研シンポで報告2025年10月15日
-
平成の大合併と地方自治【小松泰信・地方の眼力】2025年10月15日
-
公開シンポ「わが国の農業の将来を考える」11月1日開催 日本農学アカデミー2025年10月15日
-
令和7年度加工食品CFP算定ロールモデル創出へ モデル事業の参加企業を決定 農水省2025年10月15日
-
西崎幸広氏ら元プロ野球選手が指導「JA全農WCBF少年野球教室」草津市で開催2025年10月15日
-
元卓球日本代表・石川佳純が全国を巡る卓球教室 三重で開催 JA全農2025年10月15日
-
新米など新潟県特産品が「お客様送料負担なし」キャンペーン実施中 JAタウン2025年10月15日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」マロンゴールドで鹿児島の郷土料理「がね」を調理 JAタウン2025年10月15日
-
みなとみらいでお芋掘り「横浜おいも万博2025」さつまいも収穫体験開催2025年10月15日
-
JA全農京都×JA全農兵庫×JA全農ふくれん「ご当地ピザ」セット販売 JAタウン2025年10月15日
-
2027年国際園芸博にタイ王国が公式参加契約2025年10月15日
-
「水田輪作新技術プロジェクト」キックオフフォーラム開催 農研機構2025年10月15日
-
「第77回秋田県農業機械化ショー」にSAXESシリーズ、KOMECTなど出展 サタケ2025年10月15日
-
「直進アシスト搭載トラクタ」がみどり投資促進税制の対象機械に認定 井関農機2025年10月15日
-
東京駅「秋の味覚マルシェ」で新米や採れたて野菜など販売 さいたま市2025年10月15日
-
県民みんなでつくる「白米LOVE」公開 ごはんのお供をシェア 兵庫県2025年10月15日
-
16日は「世界食料デー」賛同企業など「食」の問題解決へランチタイムに投稿2025年10月15日
-
農機具プライベートブランド「NOUKINAVI+」公式サイト開設 唐沢農機サービス2025年10月15日
-
年に一度の幻のじゃがいも「湖池屋プライドポテト 今金男しゃく 岩塩」新発売2025年10月15日