もう一つの農協
- 著者
- 佐藤喜作 著
- 発行所
- イズミヤ出版
- 定価
- 2000円+税
- 電話
- 0184-36-3338
- 評者
- 梶井功 / 東京農工大学名誉教授
「近隣の農協では農協職員が組合員農家を訪問すれば、若者は取り合わず、「親父、農協さんだ」と言う風景は、仁賀保では見られない」という。その仁賀保農協(現JA秋田しんせい)の組合長として、1973年から96年までの23年間、組合活動の中心にいた著者の体験に裏づけられた農協論が本書である。
自主・自立・互助
組合員が農協つくる
農業協同組合、生活協同組合は、「今そのいずれもが運動面と経営面で行きづまっている」が、著者は農協、生協という「この名称にも原因がある」として「…限りなく自由、勝手、競争社会に進む中で、弱肉強食となるとすれば、それに対抗するためには、弱者が力を合わせる以外にその道はない。その弱者とは人であるから、これを明確に表現する必要がある。そのためにも農業者協同組合、或いは農業人協同組合とすべきであり、もしくは農家協同組合とすべきではないか、又生協は生活者協同組合になるべきである」と主張し、農協模範定款例の第1条目的も「この組合は、組合員が協同して健康で心豊かな農業生活を実現するため、農業生産の持続的発展と、経済状態を改善し、社会的地位を高めることを目的とする」に変えるべき、と提言する。“もう一つの農協”とする所以だろう。
減反政策を契機とする全戸参加の総合互助制度、健康と農を守る自給運動、高齢者対策の百栽館運動など「自主、自立、互助、創造、奉仕をモットー」にして展開した仁賀保農協史から教えられることは多い。
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