食糧安保軽視、現場無視の来年度予算2013年12月24日
今朝の閣議で、来年度の予算案が決まった。一強多弱の状況だから、このままで成立するのだろう。
農林予算をみると、以前と違って、食糧自給率の向上による食糧安保の軽視が目立っている。
それに代わって、競争力の強化が前面にでてきた。だれを負かそうというのだろうか。それは、市場に任せるのではなく、政治が農村の現場を無視し、市場に介入して大規模を図るのだという。
これらは、これまでの民主党農政の全面否定であり、古い自民党農政の復活である。農政の対立軸が鮮明になってきた。
食糧安保は、農政の最重要な目的である。主食である米の安定供給は、いうまでもなく、政府の責任である。そのことを、民主党農政は鮮明に示していた。
しかし、いまの政府はその責任を放棄しようとしている。減反を野放しにして、米の安定供給の責任から逃げようとしている。
来年からの4年間は、減反助成金を半額にするという。責任を半分に減らす、というのだろう。
5年後からは減反助成金をゼロにして、責任を全く放棄する。
◇
減反助成金が少なくなれば、減反に協力しない農家が増える。その結果、米の作付面積が増え、供給量が増えて、過剰こなることは明らかだ。
過剰分を飼料米にすることで、過剰をなくすというのだが、この予算では、とうてい無理だろう。過剰分が飼料米で消化しきれず、主食米が過剰になって、米価が下がるだろう。
その結果、農村が混乱するが、その責任は、こうした制度にした政府が負わねばならない。
◇
来年度予算にみられる、もう1つの目玉は、大規模化の政策である。
大規模化のために、各都道府県に新しい組織をつくる、という。いったん、この組織に農地を集め、整理してから貸し出す、という構想である。農協をはずし、農業委員会をはずした、行政主導の大規模化である。
これでは、自分の農地を誰が耕作するのか、農地の貸し手には分からなくなる。行政を信用せよ、といいたいのだろうが、行政は、それほど信用されていない。農家は混乱するばかりだ。
◇
ここで言いたいことは、机上で空論するのではなく、現場の実態をよく見よ、ということである。
減反助成金を全廃するまでに、4年間の移行期間がある。この期間に、何が起きるかを注視せよ、といいたい。そして、供給が過剰になり、米価が下がったら、ただちに見直すことである。
また、大規模化が農協や農業委員会の協力なしで、順調にすすむとは思えない。行政の独りよがりは、事態を混乱させるだけだ。ここでも見直しが迫られるだろう。
これらの見直しを、与野党間で協力して行わねばならない。ゆめゆめ政争の具にしてはならない。極端から極端へ代わる猫の目農政で迷惑するのは、農業者であり、農村であり、食糧安保をねがう国民である。
(前回 飼料米増産の本気度)
(前々回 新しい米政策が目指す競争力強化は小農切捨て)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 石川県2025年7月4日
-
(442)エーカレッジ(作付面積)から見る変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月4日
-
【JA人事】JAながさき県央(長崎県)里山耕治組合長を再任(6月27日)2025年7月4日
-
人的資本を人事制度で具体化する 「令和7年度 人事制度改善セミナー」開催 JA全中2025年7月4日
-
洋菓子のコロンバン主催「全国いちご選手権」あまりんが4連覇達成2025年7月4日
-
野菜わなげや野菜つり 遊んで学ぶ「おいしいこども縁日」道の駅とよはしで開催2025年7月4日
-
北海道初進出「北海道伊達生産センター」完成 村上農園2025年7月4日
-
震災乗り越え健康な親鶏を飼育 宮城のたまご生産を利用者が監査 パルシステム東京2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「農政技術(森林)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「獣医師(家畜保健衛生分野)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
信州の味が集結 JA全農長野×ファミマ共同開発商品 長野県知事に紹介2025年7月4日
-
障害者のやりがい・働きがい・生きがい「ガチャタマ」で応援 パルシステム埼玉2025年7月4日
-
参議院選挙に行ってとんかつ割引「選挙割り」実施 平田牧場2025年7月4日
-
作物と微生物の多様な共生が拓く農業の未来 意見論文が米国植物科学誌に掲載 国際農研2025年7月4日
-
国産率100%肥料の商品を販売開始 グリーンコープ共同体2025年7月4日
-
3.11原発事故の被災者支援 2025年度は20団体へ624万円 パルシステム連合会2025年7月4日
-
「令和の米騒動」農家がリアルに考えた米の適正価格とは『現代農業』発売 農文協2025年7月4日
-
完熟桃の美味しさ存分に ヴィーガンパフェと贅沢スムージー 期間限定で登場 青木フルーツ2025年7月4日
-
【特殊報】ブロッコリーの黒すす症状 県内で初めて確認 愛知県2025年7月3日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 富山県2025年7月3日