TPPという自由貿易体制は悪だ2014年4月25日
日米首脳会談が終わった。だが、TPPについての合意はできず、「前進する道筋を特定した」というだけで、合意は先送りになった。
農協をはじめとする多くの国民の反TPP運動は、とりあえず成功した。だが、両首脳はTPPをあきらめたわけではない。
ここで、あらためて自由貿易について考えよう。
太田原高昭教授の名言によれば、世界政府ができるまでは、自由貿易は決していい貿易体制ではない。その世界政府ができるのは、宇宙軍が地球に攻め込んできて、それに対抗する地球防衛軍を組織してからだ、と言っている。つまり、自由貿易は半永久的に、いいものではない、と言っている。世界政府ができるまでは、自由貿易を唱えながら、他国の利益を犠牲にして自国の利益を追求する国を制裁できない、というわけである。
制裁とは、反社会的、反国際的な行動に対する、警察だけでなく究極的には軍隊による、実力的、暴力的な阻止行動である。
◇
世界政府ができる前に、自由貿易体制になると、なにが起きるか。
TPPは、極端な自由貿易体制をめざしている。だが、世界政府はできていない。そこでなにが起きるか。
自由貿易は、国際的な分業をもたらす。ある国は農業をやめることになる。その国は食糧主権を奪われることになる。第3の武器といわれる食糧を失い、食糧を持っている強国の言いなりになる。世界政府がないから、強国のこうした主権の侵害という不法行為を阻止できない。
◇
TPPは、太平洋を囲むいくつかの国で自由貿易圏を作ろうとしている。世界経済のブロック化である。
世界がブロック化すれば、いずれ異なるブロックの間で利害が対立する。経済的な対立は、やがて政治的な対立になっていくだろう。この利害対立を解消するための有効な調停機関や制裁機関がない。だから、不法行為を阻止できない。世界政府がないから、強国の無法が支配する世界になる。
◇
TPPは、いまやアメリカがアジアに乗り込み、その盟主になって支配圏を拡大しようとしている。そしてアジア諸国の国家主権を奪おうとしている。その旗印が自由貿易である。
強国であるアメリカは、自由貿易といいながら、自国の砂糖や乳製品の関税は維持しようとしているし、日本への自動車などの輸入割当をもくろんでいる。これらは、自由貿易とはかけ離れた、なりふりかまわぬ強国の国益の、あくなき追求である。強国の無法といっていい。
強国の国益といっても、それは1%の人の利益であって、99%の人の利益ではない。そして、それは地球規模での格差の拡大である。
◇
こんどの日米首脳会談で、日本はアメリカに軍事同盟を強化してもらった負い目があるという。アメリカはTPPに執着し、日本の妥協を期待したが、日本はTPP合意という「お土産」を持たせなかった。
アメリカはTPPをあきらめたわけではない。今後ますます強い圧力をかけてくるだろう。
この圧力をはねのけるには、自由貿易の条件が整うまで、しばらくの間ご勘弁を、というのではだめだろう。
アメリカに対して、国家主権を奪うような自由貿易体制は受け入れられないことを覚らせねばならない。互いに国家主権を尊重しあいながら、切磋琢磨の糧になるよいうな貿易体制を受け入れさせねばならない。
(前回 TPPの分断政策には乗らない)
(前々回 TPPで半失業社会がやってくる?)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。【コチラのお問い合わせフォーム】より、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】なぜ多様な農業経営体が大切なのか2024年3月28日
-
全国の総合JA535から507に 4月1日から 全中2024年3月28日
-
消える故郷-終りに、そしてはじめに-【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第284回2024年3月28日
-
岩手銀行、NTT東日本、JDSCが「岩手県の『食とエネルギーの総合産地化』プロジェクト」を共同宣言2024年3月28日
-
「日曹コテツフロアブル」登録変更 日本曹達2024年3月28日
-
適用拡大情報 殺虫剤「プレバソンフロアブル5」 FMC2024年3月28日
-
飼料用米を食料安保の要に 飼料用米振興協会が政策提言2024年3月28日
-
肥料袋の原料の一部をリサイクル樹脂へ置換え 片倉コープアグリ2024年3月28日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2024年3月28日
-
純烈が熱唱 新CM「おいしい雪印メグミルク牛乳 ゴクうまボトル」公開2024年3月28日
-
むすびえ「ウェルビーイングアワード 2024」活動・アクション部門グランプリを受賞2024年3月28日
-
「物流の2024年問題」全国の青果センターの中継拠点化で「共同輸配送」促進 ファーマインド2024年3月28日
-
ポストハーベスト事業 米国子会社を譲渡 住友化学2024年3月28日
-
農業の「経営技術」を習得 無料オンライン勉強会を隔月で開催 ココカラ2024年3月28日
-
森林由来クレジット販売プラットフォーム立上げ第一号案件を売買全森連×農林中金2024年3月28日
-
新規需要米に適した水稲新品種「あきいいな」育成 耐病性が優れ安定生産が可能に 農研機構2024年3月28日
-
食品ロス削減に貢献 コープ商品6品を3月から順次拡充 日本生協連2024年3月28日
-
最適な雑草防除をサポート「my防除」一般向け提供開始 バイエルクロップサイエンス2024年3月28日
-
国産和牛が当たる 「春の農協シリーズキャンペーン2024」4月1日から実施2024年3月28日
-
れんこん腐敗病の課題解決へ JA大津松茂と圃場検証を実施 AGRI SMILE2024年3月28日