米価の力強い回復を2015年12月14日
10月の新米の米価は、1万3116円だった。昨年産米と比べて約1000円上がったが、まだまだ安い。生産費は1万5416円だから2300円も安い。それだけ、農業者に赤字を強いている。
上がったとはいうものの、その勢いは強くない。9月は1万3178円だったが、10月はさっそく小幅ではあるが下がってしまった。
今後、米価はどうなるのだろうか。そして、政府はどうするつもりなのか。
政府に危機感はない。このままでは、米作りの後継者は、ますます減るばかりだろう。日本の米作りは、壊滅の方向へ向かって、急速に進んでいくだろう。食糧安保は危機的な状況になるし、農村は疲弊して、地方の衰退は止められなくなる。
上の図は、最近6年間の米価の推移である。毎年9月から当年産米の米価に切り替えている。
図の右端にある2つの点が、本年産米の9月と10月の米価である。前年産米の米価は約1万2000円だったから、約1000円上がったことになる。
ちなみに、第2次安倍晋三内閣が発足した2012年12月の米価は、1万6540円だった。しかし、その後つるべ落としのように下がり、今年の5月には、1万1891円にまで下がった。実に、4649円の下落だった。率にして、28%の下落だ。約500俵の米を作っている5haの大規模農家にとって、230万円の減収になった。1haの小規模農家にとっては、46万円の減収になった。
◇
政府には、このような低米価に対する危機感がない。むしろ望ましいことと考えている。
政府の米政策は、低米価をテコにして、いわゆる農業改革をし、コストを下げ、各種の補助金を節約することを基本にしている。
このためには、TPPで米価が下がることは、むしろ歓迎する。低米価の圧力によるコスト切り下げで、TPPによる輸入米と競争して打ち勝とう、というのである。そんなことが出来るはずがない。
また、低米価を圧力にしたコスト切り下げは、いわゆる農業改革をすれば可能だとする。ここでいう農業改革とは、現場の実情を無視した規模拡大の強行であり、兼業者や高齢者の切捨てである。
◇
こうした状況のなか、政府はTPP交渉で、アメリカとオーストラリアに対して、7.84万トンの米の輸入枠を新しく作る、という合意をした。
これは、米価下落の圧力になる。それに見合った量だけ備蓄米を増やす、というのだが、それは在庫圧力になって米価を下げる。また、備蓄後は飼料にするというが、その分だけ飼料米が供給過剰になり、米価は下がる。だから、その分だけ国産の飼料米を減らすことになる。そうしなければ、米価は下がる。
このような理不尽なTPP合意にもとづく協定を、国会が批准してはならない。
◇
TPPは、「高い水準の貿易自由化」であり、「国際ルールの尊重」だった筈だ。だが、輸入枠などは、貿易自由化とは全く相容れないものである。
それは、強者のアメリカにとっての自由であって、弱者にとっては、自由とは正反対の、力による束縛である。圧迫であり、それへの屈服である。
また、それは、国際ルールどころか、ルールでさえない。軍事力を背景にした強者が、怯える弱者に対して無法を押し付けるものである。アメリカが唱える国際ルールとは、ジャングルの掟なのだ。また、アメリカが唱える法治とは、無法のことなのだ。それに安倍政権が追随している。
もしも、TPP協定を国会が批准して発効すれば、これが現実のものになる。それには、断固として反対し続けねばならない。
◇
民主党は、半年後の参院選をひかえ、TPPを主要な争点に据えることにし、党を挙げて反TPP体制を整えた。他の野党にも呼びかけ、協力しあえば、危機感のない与党を震撼させることになるだろう。
そして、それは米価回復へ向けての、力強い第一歩になるだろう。
(2015.12.14)
(前回 マレーシアの米価は1㎏当たり52円)
(前々回 TPPは消費者にとってソンだ)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】ブロッコリーの黒すす症状 県内で初めて確認 愛知県2025年7月3日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 富山県2025年7月3日
-
【注意報】花き類、野菜類、ダイズにオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 愛知県2025年7月3日
-
【注意報】りんご、なしに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 宮城県2025年7月3日
-
【注意報】ねぎにシロイチモジヨトウ 県内全域で多発のおそれ 宮城県2025年7月3日
-
【注意報】セイヨウナシ褐色斑点病 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月3日
-
【注意報】いね 斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月3日
-
【スマート農業の風】(16)温暖化対応判断の一助にも2025年7月3日
-
令和7年度「家畜衛生ポスターデザインコンテスト」募集開始 農水省2025年7月3日
-
農業遺産の魅力発信「高校生とつながる!つなげる!ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」開催 農水省2025年7月3日
-
トロロイモ、ヤマノイモ・ナガイモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第347回2025年7月3日
-
仙台牛・仙台黒毛和牛取扱い25周年記念「食材王国みやぎ美味いものフェア」実施 JA全農みやぎ2025年7月3日
-
酪農危機に挑む夏 福岡の温浴施設が雪印メグミルクとコラボイベント開催 ナカシロ2025年7月3日
-
福井県と「産業振興に関する連携協定」締結 タイミー2025年7月3日
-
農水省準拠バイオスティミュラント試行導入・効果検証 JAで開始 AGRI SMILE2025年7月3日
-
奈良にコメリパワー「平群店」16日に新規開店2025年7月3日
-
あの農産物も実はJGAP イトーヨーカドーで店頭イベント開催 日本GAP協会2025年7月3日
-
「小田原食と緑の交流推進協議会」総会 4議案全会一致で可決 パルシステム神奈川2025年7月3日
-
農産物の鮮度保持技術でベルグリーンワイズと協業開始 タカミヤ2025年7月3日
-
伊勢崎市で夏の農業体験 枝豆を収穫・試食 パルシステム群馬2025年7月3日