安倍政権の憲法改正と新自由主義改革への挑戦は成功するか2017年11月27日
「剛強なるは必ず死し、仁義なるは玉たり(『古文真宝』)」
右記の『古文真宝』の言葉は「自らの強さをたのみ力をもって世を制しようとする者は必ず滅びる。これに対し、仁義で立つ者は王となる」という意味です。強大な権力をもって国民を抑えようとする政治権力者は必ず滅びます。これは天理です。歴史法制です。
安倍首相は10月22日の衆院選で大勝し、巨大権力者になりました。自民党内で安倍首相を批判する者はごく少数です。対する野党は分裂し、さらに弱体化しています。安倍首相にとって「わが世の春」というべき状況です。
しかし国民は、安倍首相の勝利は野党の分裂によってもたらされたものであることを知っています。このため、安倍首相と安倍内閣の閣僚は、衆院選直後は一斉に「謙虚」を叫びました。
ところが、安倍首相が一連の外交日程を無難にこなし支持率が上昇すると、「謙虚」を合唱したことを忘れたかのように、強引で傲慢な振舞いを始めました。
戦後72年間政局を私は眺めてきました。政治家は勝利した時に強引で乱暴な政治に至り失敗することが多く、失敗して国民の支持を失った時に反省し真面目に考える・・・ということを繰り返してきています。とくに保守政治家にこの傾向が強いのです。強大化した安倍政権は、いまきわめてあぶない立場にいると私は思います。「驕れる者久しからず」は真実です。必ず起こります。
◆「安倍だけ、官邸だけ、自民だけ」の限界
最近の政府自民党と官僚は、安倍首相を守ることにのみ熱心です。森友学園問題では財務省官僚の異常な「忖度」が目立ちました。財務省官僚の信用は失墜しました。
加計学園問題では、首相官邸で働く首相側近の官僚の信用が急落しました。「記憶にありません」発言を繰り返して安倍首相を擁護する官僚の姿はあまりにもみじめでした。
昔の指導的地位にある役人には公務員としての誇りがありました。自己犠牲の精神がありました。武士道がありました。
時代が変れば役人の意識も変わりますが、役人の人事の決定権を、各省庁から取り上げて首相官邸の権限にしたことが、一因です。各省庁のトップをめざす役人たちは、首相官邸におもねり始めたのです。「政治家主導」の美名のもとに行われた役人の人事権の政権への移譲は、役人を堕落させました。「政治主導」は大失敗だったのです。
かつての役人は国民第一主義でした。しかし、いま、出世したり指導的官僚たちは政権第一主義者に変ってしまったのです。
◆憲法改正と新自由主義改革へ
安倍首相がこれから挑戦するのは、憲法改正と新自由主義改革(主として農政改革)です。
この二つの課題について、11月17日の所信表明演説では、次のようにさりげなく語っているだけですが、やる気十分です。憲法改正についてこう述べました。「互いに知恵を出し合いながら、共に、困難な課題に答えを出していく。こうした努力の中で、憲法改正の議論も前に進むことができる。」
憲法改正には二つのことが必要です。
第一は衆参両院における発議です。これには3分の2の賛成が必要です。公明党が同調すれば衆参両院で発議できますが、公明党が反対すれば参院での発議は困難です。安倍政権と自民党は公明党への働きかけを強めるでしょう。憲法改正については公明党がキャスティングボートを握っています。
第二は国民投票です。安倍首相と自民党が発議にあたって強引なことをすれば国民投票で否決される可能性が出てきます。否決されれば安倍政権が終るだけでなく自民党も存在意義を失います。
憲法改正は簡単ではないのです。
安倍首相は、所信表明演説で、農政改革についてこう述べました。
「農林水産業全体にわたって改革を展開し、若者が将来に夢や希望を持てる農林水産新時代を切り拓いてまいります」
安倍内閣の農政改革の根本にあるのは新自由主義です。新自由主義革命は、日本の現状に十分に立脚せず、日本の経済社会に混乱をもたらしてきました。農業改革においても新自由主義の農業改革が持ち込まれて混迷しました。首相官邸の指導下にある学者、有識者も多くは米国流新自由主義の信奉者です。ここに大きな不安があります。日本農業の実態に合った現実的な対策を考えるべきだと思います。安倍首相には日本農業を守るため、日本の国益を貫いて欲しいと思います。
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