【リレー談話室・JAの現場から】20歳と農協そして准組合員2018年7月23日
◆大学生と共同研究
「農業、野菜、古い」これは何か? 東京に住む大学2年生の農協に対するイメージだ。当組合では4月から日本大学商学部川野ゼミ2年生の受け入れを行い、1年半かけて現在の中期計画の評価と次期中期計画への提言を受けることを目的に共同研究を進めている。
川野ゼミは川野克典教授主催のゼミナールであり、同教授はJAの経営管理の高度化支援を行うなど農協への造詣が深く、農業や農協への想いが強い方だ。川野ゼミは管理会計を主体としたゼミであるが、実践型人財の育成を重視しており、今までも東京都内や神奈川県そして愛媛県で農協の研究を行っている。
また、11月にはJA全中が協賛する第2回アグリカルチャーコンペティション(以下、アグコン)の開催を予定している。このアグコンとは「農業や食、地域、農協」に関する大学生の研究発表大会である。このような大会を開催していただけることは私たち農業者団体にとっても大変ありがたいことであり、日本の農業振興に寄与する取り組みとして積極的に支援していくべきと考えている。
◆農協へのイメージ
現在5人のゼミ生が当組合の中期計画の研究を進めており、調査として同級生に農協のイメージを尋ねたところ冒頭の回答が返ってきたということだ。中には「農協なんて私には関係ないし、興味もない」との回答もあったそうだ。ゼミ生が気を使って私にだけこっそり教えてくれた。そこでゼミ生に頼んで同級生にいくつか質問をしてもらった。
ゼミ生「野菜は好きですか?」
同級生「嫌いじゃないけど食べないよ。たまに健康のために野菜ジュースを飲むくらいかな」
ゼミ生「たとえば学食の食材が地場産だとしたらどんな感想を持ちますか?」
同級生「ふ~ん、そうなんだ。程度かな」
ゼミ生「農協が住宅ローンを取り扱っていることを知っていますか?」
同級生「知らなかった」
ゼミ生「農協と銀行の住宅ローン金利などが全く同じだとしたら、どちらを選びますか?」
同級生「銀行かな」
ゼミ生「どうして?」
同級生「ローンは銀行から借りるイメージだし、銀行の方が便利そうだし」
ゼミ生「農協の住宅ローン金利が0.9%で銀行が1%だとしたら?」
同級生「銀行かな」
ゼミ生「どうして?」
同級生「そもそも農協は野菜などを取り扱う組織というイメージだし、農協でお金を借りるイメージは湧かないよ」。
ここでは、農協に対して農業や野菜というしっかりとしたイメージが構築されている。と前向きに考えることにした。都市部住民が20歳になるまでの間に幼少期は芋掘り体験、小学校では職場見学(一部では学校給食)、中学校では職場体験など農業や農協との接点は少なからずあったはずである。しかしながらそれは学校のプログラムや親の意向であり、自らの意思ではないと思われる。20歳になれば嗜好は形成されているため、自らの趣味やファッションなどについてはSNSで情報を得ているが、農協のSNSサイトを見ることはないだろう。
◆農協法第1条と20歳
農協法第1条は「この法律は、農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする。」である。ここに20歳の若者が入り込む余地はあるのか?
ポイントは「農業生産力の増進」である。この「農業生産力の増進」をプロダクトアウトで見るか、マーケットインで見るかにより農協の対応方法は大きく異なる。特に大きなマーケットを持つ都市型農協は積極的にマーケットインの考えをもって対応することが「農業生産力の増進」の実現性を高めることになるのではないだろうか。
ヒントは20歳の農協への確固たるイメージにある。農協と20歳の繋がりは「農業、野菜」からイメージできる方策が有効であり、イメージがないとSNSなどで情報を見つけにはいかないのである。農協が率先して若者を含め地域住民の「農業や食」への意識を高める方策が、自己改革を進めるにあたり最大のカギであり、さらに農業生産力を増進させ、ひいては食料安全保障に繋がる。
また、准組合員に対しても日々の農協の総合事業利用が"どのようなかたち"で「農業生産力の増進」に貢献しているかを伝えることがこれからの"伝える自己改革"なのだろう。
◆准組合員と共通の願い
作る人が正組合員、それ以外の人は准組合員。というプロダクトアウトの発想では、正組合員が主人公であり准組合員は単なる応援団となる。農協は「農業生産力の増進」を「正組合員と准組合員で達成する共通の願い」とあらためて定義することにより、准組合員もまた主人公であり、農業振興のパートナーであると認識することができる。これが准組合員に担ってもらうべき役割であり、農協としての位置付けなのではないだろうか。
農林水産省からは「農協が准組合員の位置付けを明らかにし、准組合員の意見や参画、意思反映をどうするのかを自ら考えて社会に提案すること」が求められている。私たち農協は農協法第1条をもう一度よく考え、准組合員の定義を明確にし、行動に移していくことが重要である。
農協は考えることを諦めたら農林中金の代理店となり、農協が動くことをやめたら地域は崩壊する。
座して死を待つよりも私たちは考えて実践あるのみ! それが今日の農協運動なのである。
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