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【小松泰信・地方の眼力】毒饅頭ときどき怖い?2018年9月19日

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【小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 「毒饅頭」といえば、たった今も永田町や沖縄で飛び交っているはずの、裏金や重要ポストの密約などを指す隠語。しかし、毎日新聞(9月18日付)が紹介している「毒饅頭」は、正真正銘のおまんじゅう。静岡県熱海市にある和菓子メーカーが、温泉地定番のお土産に付加価値を付けようと、整腸・利尿作用や解毒作用まであるドクダミを生地に練り込んだもの。植物名と「解毒」からのネーミングとのことであるが、腹黒き方々には毒消しとして食していただきたい。なお、原材料に凝ったために大量生産できず、熱海市内の店舗で週数回の販売とのこと。どうも、コリには効かないようだ。

◆世界を狂わせた毒饅頭

小松 泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) 2007年、米国における住宅バブルの崩壊で、低所得者向け高金利住宅ローン「サブプライムローン」が焦げ付き、毒となる。毒と化した「サブプライム証券化商品」を組み込んだトリプルA級の債券ファンド「毒饅頭」が暴落し、不良債権となる。多額の不良債権を抱え込んでいたアメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズは、10年前の2008年9月15日に経営破綻。これが引き金となって、世界的な金融・経済危機に発展したことが、いわゆるリーマン・ショック。
 ウィキペディアには、「日本は長引く不景気から、サブプライムローン関連債権などにはあまり手を出していなかったため、金融会社では大和生命保険が倒産したり農林中央金庫が大幅な評価損を被ったものの、直接的な影響は当初は軽微であった。しかし、リーマン・ショックを境に世界的な経済の冷え込みから......、結果的に日本経済の大幅な景気後退へも繋がっていった」と記されている。

 
 
◆農林中央金庫の古傷と更生

 日本農業新聞の論説(9月14日付)は、リーマン・ショック以降、「金融では国際取引を担う農林中金の経営が急速に悪化、大幅な赤字決算に陥り、翌09年には会員JAなどから1兆9000億円に上る大規模な増資を受けた」と、その古傷に触れている。その後の金融市場回復などにより危機を脱した農林中央金庫が、「存在意義を見つめ直し、農林水産業のリーディング金融機関として『原点回帰』の自己改革にまい進。JA全農との連携を強め、食農ビジネス支援などJA自己改革への強力な後押しを実践中だ」と、更生した姿をたたえている。
 そして、リーマン・ショックの中においても、「世界的に見れば欧州を中心に協同組合金融は健全性を保った」ことから、「先行き不透明な今こそ、協同組合の特色である地域密着と相互扶助を基軸に事業展開を強める時だ」として、"地域密着型金融"が農林中央金庫・JAバンクの活路であることを強調している。

 
 
◆十年一昔、喉元過ぎて熱さ忘れた?

 ところが同紙の9月1日、8日、15日には「なぜ注目??投資信託」というタイトルで、JAバンクが組合員の資産形成の一環として、投資信託やそれに関連した人材育成を充実させていることを取り上げている。
 まず、1日付では、農林中央金庫が、片働き夫婦の場合、ゆとりある老後生活を送るためには、月額13万円が不足することを推計した。そこで、「超低金利が続き、預貯金で資産を増やすことが難しい中、老後の資金をどう確保するかが課題」とする。その課題解決策として、「多くの投資家から集めたお金をまとめ、運用の専門家が株式や債券などで投資・運用する商品。専門家に任せることで手間が軽減できるなどのメリットがある」として、投資信託への道筋を付ける。
 8日付は、投資信託における元本割れリスクからはじまる。しかしそれへの不安はその道のプロの経験談でとりあえず解消させたうえで、「安定的に資産形成するためには、これらの方法を活用し、リスクに対処することが重要」と、ためらう背中を押す。さらに農林中金総合研究所が行ったアンケート調査結果から、組合員にも投資信託へのニーズがあるので、そのニーズに信用事業として応えなければならない、という結論を導き出す。
 そして最終回の15日付では、農林中央金庫が、「低金利が続く現状を踏まえると、組合員らの将来への備えとして、投信も考慮した資産形成が必要と判断。昨年7月にJAバンク資産形成推進部を立ち上げ」、JA職員の育成に向けた3ヶ月間の「資産形成サポートプログラム」を31年度から本格開始することを紹介している。

 
 
◆信用金庫から学ぶ

 農業協同組合経営実務(2018年8月号)に掲載の、田口さつき氏(農林中金総合研究所)による「信用金庫の取引先支援-貸出金残高減少に歯止めをかける-」は、横浜信用金庫、津山信用金庫、富山信用金庫の事例から貸出金残高の減少に歯止めをかける取引先支援のあり方を紹介している。取引先の支援に向かわせたのは、貸出における低金利競争という消耗戦に巻き込まれたことへの反省や地域密着を基本としてきた推進体制の再認識である。
 「財務予測で経営判断支援」の横浜信用金庫、「補助金申請書の作成支援」の津山信用金庫、「事業再生の支援」の富山信用金庫、それぞれが貸出金残高の増加や減少への歯止めに成功している。
 より興味深いのは、数値では表れない効果である。それらを、次のように再整理した。
(1)経営に踏み込んだ支援への驚きと期待からもたらされる「取引先からの情報」
(2)具体的支援策の職員間共有による「組織の活性化」
(3)取引先も気づかない技術力などを応用した商品づくりを提案できるまでの「目利き力の向上」
(4)各種補助金の申請支援や他金融機関との協調融資などから生み出される「新しい金融サービスの開発」
 結論は、"貸出金残高増加に近道なし。地道な取組みをより意図的かつ継続的に行うのみ"と要約した。

 

◆古傷を舐める

 何を隠そう、当コラムもバブルがはじけて投資信託で大損。ネット株で買った会社が次の日に清算手続きでパァ。思い出しただけで古傷が疼く。こうやって古傷を舐めるのも同じ過ちをしないため。組織もしかりである。農林中央金庫が玄人だとしても、JAも担当職員も組合員もずぶの素人。素人が手を出す世界ではない。農業協同組合ならではの取り組みを誠実にやり続けてこそ、資産は形成される。もちろん、組合員を奈落の底に落とすことはない。素人に勧める前に、玄人がその道を究め、JAへの還元を増やすことにご精励いただきたい。投資信託がJAバンク生き残りの「奥の手」とは言わせない。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

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