【浅野純次・読書の楽しみ】第33回2018年12月25日
◎矢部宏治
『知ってはいけない2』
(講談社現代新書、950円)
前著『知ってはいけない』は日米関係を見る上で目から鱗の一冊でしたが、これはその続編。さらに踏み込んで日米密約の構造を解明していきます。
「日米安保体制」などと私たちは簡単に口にしてきましたが、その構造は恐るべき巧妙さの上に構築されていることを本書は明らかにします。日米安保、日米地位協定、日米合同委員会の仕組みを理解しないとこの構造はわかりません。
著者はまことに丁寧にその構造を明らかにしていきます。読み進むにつれていかに米国の対日対応が巧妙であり、米国に有利な取り決めがなされていったかを知りますが、逆に日本の政治家や外務官僚がよくぞここまで亡国の協定を結んできたものよ、と唖然としてしまいます。
日本はアメリカに占領こそされていないにせよ、アメリカの支配下にある従属国家ということは否定しがたいという気がしてきました(世界でこんな国はほかにないらしい)。
なぜこんなことになったのか。岸信介首相が大きな役割を果たしたにしても、一貫して私たちは知らずにいたことになります。しかしそのベールがはがされた今、私たちには大きな責任が生じたと言っていいでしょう。各章の初めの4コマ漫画も効いています。
◎横田増生
『仁義なき宅配』
(小学館文庫、788円)
3年前に刊行されて話題になったものが文庫化され、一部加筆されました。この間の宅配業界の動きは「目まぐるしい」の一語ですが、基本的な矛盾はほとんど変わっていません。現場がへとへとに働きその上に仁義なき価格競争が成立しているという構図です。
著者は非正規雇用で現場にもぐりこみ、働かされ方をリポートします。ヤマトと佐川が中心ですが、どこも体を酷使する日々であり、かつ見えないところでは品物の扱いは雑であり、クール便や冷凍荷物が規定どおりには扱われていないことが明らかにされます。
宅配残酷物語の背景には、アマゾンなどの仕事を極限の安値で引き受ける宅配業界側とそれをいいことに「送料無料」でシェア拡大を図るネット業者があります。
要するに「送料無料」につられてネット購入を拡大している消費者もまた「仁議なき宅配」の一端を担っていることになります。安いもの、ただのものほど怖いものはない。本書を一読し、考えてみることが必要でしょう。
◎久賀谷亮
『脳が老いない世界一シンプルな方法』
(ダイヤモンド社、1728円)
物忘れがひどくなったとぼやいておられる方にお勧めの本です。頭の常識をこの本は打ち破ってくれます。脳細胞は中高年に向け壊れていく一方で、新たには形成されることはないという説を聞いたことはありませんか。
本書によれば、脳は何歳からでも成長するのだそうです。最近、人の名前が出てこないとか「あれ」が増えたとかいう方、どうぞ本書をお読みください。
もちろん脳の退化は人によって違います。老化を防ぐ方法を追求すれば何歳になっても大丈夫なようで、そのためには運動、食事、睡眠、ストレスが決定的に重要だそうです。
昨今、マインドフルネスという言葉がやたら目につくようになりましたが、雑念を去り、ストレスから遠ざかる瞑想、休息法が最も大事だと言います。
そのためのアドバイス(難しくなさそうな)が多々提案されていて、これならなんとか乗り越えられるかも。試してみる価値はありそうに感じました。
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