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【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第35回 日本で一番最後に電灯がついた村は?(2)2019年1月10日

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【酒井惇一(東北大学名誉教授)】

 岩手県葛巻町と山形村のどちらが日本で最後に点灯した村だったのか、葛巻出身の中村君(秋田県立大准教授)はやはり葛巻が電化の最後であってほしいのか、それとも最後ではなかったと喜びたいのかなどと角田君(山形大教授)は中村君を冷やかすのだが、この点灯問題、地域格差問題について戦前戦後を知らない若い(といってももう中堅の学者なのだが)角田君と中村君はどう感じただろうか。

 角田君の感想はこうだった。
「電気の点灯で印象に深く残っているのはNHKの『おしん』で、彼女の奉公先の山形県酒田で電灯が初めて点くシーンだった。これは明治40年代の話、それから60年も過ぎて銀座でネオンが派手に点灯する高度経済成長の時代に岩手の葛巻で電気がやっと灯りはじめ、またバス路線が開通して住民が日の丸の旗を振って歓喜するシーン、これを同じNHKの番組で見て、東北の著しい地域間格差を改めて強く感じた。しかし、ある政治家が10年ほど前に『島根と鳥取は日本のチベット』と発言していたことをつい最近知り、島根県出身の私には大変なショックだった。この発言は農山村に対する偏見、勉強不足から来ているものと思われるが、中国山地の経済や農業の発展及びその地域格差についても今後調べていきたいと思っている。」

 一方、出身地の岩手・葛巻のことを話題にされた中村君はこう語る。
 「私が物心ついた時には葛巻全域に電気が通っていたし、カラーテレビが導入されていた。しかし、ブラウン管の中では、『方言』を話す人は常に『田舎者』として笑われるポジションにおかれていた。その構図を疑いもなく受け入れてしまい、自分自身が格差を設けてしまったように思う。『大都会』盛岡に行くと、すれ違う人、立ち寄ったお店の人と目を合わせられなかった。何となく笑われているような気がしたからだ。この『心の格差』を克服するのにずいぶんと時間がかかったように思う。都市と農村の関係はいまだに対等になっていないと感じている。タレントが『田舎』を突撃訪問してごちそうになったり、あげくの果てに泊まらせてもらったりする番組をみる時がそうだった。何となく地方を馬鹿にしているように感じてしまうのは、私のひがみなのだろうか。」

 日本に無点灯のむらがなくなってからもう半世紀、葛巻の小中学校が整備されてから70年近くにもなる。地域格差はさまざまな面から解消の努力が積み重ねられ、多くの成果をあげてきた。たとえば葛巻町は「ミルクとワインとクリーンエネルギーのまち」として知られるまでになった。
 しかし、中村君に聞くと、葛巻町毛頭沢(けとのさわ)分校は89年に廃校になったという。毛頭沢(けとのさわ)から東に一山超えた隣の吉ヶ沢小学校は一学年1人、計6人にまで生徒数が減ってしまったので今年度で廃校だそうだ。ようやく整備された道路を通って若者は街に出ていき、年寄りもやがていなくなり、集落の電灯の光がぽつりぽつりと消え、昔の無点灯集落に戻りつつある、それにともない農地が林野が荒れていきつつあるともいう。

 こうした状況は全国各地の農山漁村で起きている。それに対応して地方の中小の市や町もさびれ、かつての盛り場の電灯は消えていく。
 一方、大東京は、真夜中まで電車の灯りが動き回り、まばゆいばかりの色彩の電灯が輝く盛り場の道を若者がハロウィーンと称して狂ったように歩き回る。

 戦後の民主化でせっかく縮小した地域格差が異常な形で拡大している。
 何かおかしくはないか。こんなことを言って嘆くのは年を取ったせいなのだろうか。

 

(前回の記事)
第34回 日本で一番最後に電灯がついた村は?(1)

 

そのほか、本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

酒井惇一(東北大学名誉教授)のコラム【昔の農村・今の世の中】

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