【森島 賢・正義派の農政論】食糧安保政策の科学2019年4月1日
食糧自給率は、ここ20年の間、42-38%の間で奇妙な均衡を保っている。上げる力と下げる力との間の衝突の結果によるものだが、この2つの力の間で不思議な均衡を保っている。
与党も野党も、それぞれが自給率の向上を重要政策にしているが、しかし、それにもかかわらず自給率は、いっこうに向上しない。むしろ、下がり気味である。
これは、激しいぶつかり合いの結果による均衡か。それとも皮相的で無気力なぶつかり合いによる均衡か。
上の図は、1960年以後の食糧自給率である。 見慣れた図で、この長期的な下落は危機的な状況である。この傾向的な下落を反転させねばならない。
この下落傾向をやや詳しくみると、1997年以後は、横ばいを続けている。ここに注目しよう。
これは、静かな均衡ではない。政治の表面には出ない水面下では激しい攻防があって、均衡にみえるのは、その結果である。
◇
なぜ表面に出ないのか。それは、自給率を引き下げようとする勢力がいて、水面下で画策しているからである。なぜ水面下で画策するのか。
それは、95.6%(内閣府の世論調査)という大多数の国民が、自給率を下げることに反対しているからである。しかし、下げたい。それは、財界の強い要求だからである。
この要求は、市場原理主義に基づく貿易自由化の要求である。そのためには、食糧自給率の低下をもいとわない、という考えである。
だから、財界に支配されている多くの政治家は、95.6%の国民の反対意見を水面下に抑えつづける。そうして、水面下で自給率を引き下げる政治を強力に推進している。これほど国民を愚弄する政治はない。
◇
それは、与党だけではない。野党も、この議論をするときには必ず「自由貿易に反対ではないが・・・」というまくら言葉をつけて、財界に媚を売っている。
だから、水面下で激しく攻防を繰りかえしているのは、与党と野党ではない。与野党の政治家と95.6%の国民との間の攻防である。これが、水面下での真相である。こうした政治は、民主主義の名のもとで、転換しなければならない。
◇
冒頭の図にもどろう。ここでは、1997年以後の均衡状態に注目しよう。
この均衡の基礎には、95.6%の国民と、その声を組織した政治の力がある。その中心に、農協がいる。
それは、自由貿易、つまり、農産物輸入の自由化、ことに、ガット・ウルグアイラウンドの米の輸入自由化に反対する勢力である。
この勢力の運動は、農協の敗北だった、とする評価がある。結局のところ、米の輸入は自由化されたではないか、というわけである。
しかし、それは違う。
もしも、この運動が失敗したのなら、米の自給率は、麦や大豆のように、10%以下にまで下がっただろう。そうして、食糧全体の自給率もそれにつれて、大幅に下がっただろう。10%以下になったに違いない。
◇
このように考えると、1997年以後の自給率の横ばいは、財界を起源にする下げる力と、農協を中心にした95.6%の国民の上げる力との均衡である。
この均衡を打ち破り、95.6%の国民の要求にしたがって自給率を上げるには、農協の力にだけ依存するのではなく、野党を中心にして、95.6%の国民の政治力を組織し、結集しなければならない。
しかし、それが不十分だから自給率が低迷している。それが、図でみられる均衡の実質である。それは、調和的な均衡ではない。それとは程遠い、水面下での激しい攻防の、現時点での状況である。
この攻防を、水面上に浮かび上がらせ、自給率を下げようとする政治勢力を国民の前に引っ張り出して、糾弾しなければならない。そして、その最前線に野党が立たねばならない。
このことが、7月の参議院選挙で、野党に厳しく問われている。
(2019.04.01)
(前回 食糧安保政策を検証せよ)
(前々回 愚民化政治の跋扈)
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