【小松泰信・地方の眼力】野党共闘ってマジすか2019年4月24日
4月20日、安倍晋三首相は、衆院大阪12区補選の自民党公認候補を応援するために大阪入り。籠池夫妻に睨まれながらの演説。終えて向かった先は、大阪・なんばグランド花月。吉本新喜劇に飛び入り出演。場所が場所だけに、飛んで火に入る笑い者。
近々立ち上がる農福連携を推進するための官邸会議の有識者メンバーに、城島茂氏(TOKIOのリーダー)が選ばれることを 日テレNEWS24(4月23日18時2分)が伝えている。人気テレビ番組での農業への取り組みが選出理由のようである。取り込めるものは何でも取り込んでいく魂胆見え見え。
◆なりふり構わぬ自民党。大ウソ警報発令!
日本農業新聞(4月20日付)は、自民党が夏の参院選に向け、農業票固めに本格的に動き出したことを伝えている。一つは、首相が「前回参院選で負け越した東北など地方区の1人区対策として農家向け政策パンフレット作成を岸田文雄政調会長に指示」したこと。「首相自ら農家向けパンフレット作成を指示するのは異例。関心の高い米政策などを重点的に盛り込み、5月の大型連休明けにも農業地帯に配布してアピールする」そうだ。もう一つは、18日夜に二階俊博幹事長の仲介で、JA全中の中家徹会長と会談・会食し、選挙での支援を要請したこと。そこには、二階幹事長や森山裕国会対策委員長らも同席したそうだ。
中家会長と太すぎるパイプを持つ二階氏は、JAグループから長澤豊全農会長、金原壽秀全中副会長らを同行させ、24日から29日まで安倍晋三首相の特使として、中国を訪問する。
毎日新聞(4月24日付)は、この訪中を二階氏の「失地回復」と参院選への側面支援の目論みとして伝えている。
失地とは、自派の桜田義孝前五輪担当相辞任や衆院補選敗北などによって失われつつある党内での求心力。
参院選への側面支援とは、18日に繰り広げられた銀座の夜の物語に加えての、JAグループ幹部の外遊への誘いによる「農業票」の取り込み。県知事が参加する山梨、滋賀、高知の三県も、参院選の勝敗を左右する1人区。「外遊に連れて行くのは二階氏流の人心掌握術だ」(自民党関係者)そうだ。心だけではなく、急所までも握られたかどうか見させていただきましょう。
◆「国家ビジョン」が求められる野党
「昨今のわが政界は、『緩む』政権と『おごる』野党との、なんとも情けない〝争い〟と堕している。困ったものである」で始まるのは、小林吉弥氏(政治評論家)による日本農業新聞(4月14日付)の「連載永田町ズバリ核心」。「緩む」政権の象徴が、「忖度」発言の塚田一郎前国土交通副大臣と、一議員への応援を「復興」以上に位置づけた桜田義孝前五輪担当相。「おごる」野党を示したのが、統一地方選前半戦において「結局は党利党略、主導権争いが横たわり、参院選へ向けての地ならしとしての野党『共闘』は、片鱗すらうかがえなかった」こと。
政治部野党担当キャップの「参院選の勝敗を左右する32選挙区の1人区の統一候補も、現状では愛媛、熊本、沖縄の3選挙区しか決まっていない。与党候補はすでに全力投球なのに、もはや出遅れ状態になっている。これで『参院選勝利』などと口にするのは、あまりに選挙を知らないか、〝おごり〟以外の何物でもない」という、辛辣な発言を紹介している。
そして小林氏は、「与党の揚げ足取りと狭い自己主張では、永遠に政権交代などは果たせない。......自民党が提示できないでいるこの国の5年先、10年先の具体的『国家ビジョン』を愚直に、真摯に掲げるしかすべはないと――。それがないと、野党の政権交代の野望は永遠に〝塩漬け〟でおわるだろう。万年野党である。芽が出ることはない」と、「むなしい主導権争いに明け暮れる野党」にサジを投げた感あり。
◆野党に期待を寄せる地方紙
統一地方選と衆院補選を終え、野党にため息混じりのエールを送る地方紙の社説を紹介する。
「大阪では野党共闘にも課題を残した。共産党は先月末に比例選出の現職議員を無所属で擁立し、野党統一候補としての支援を求めたが、支援態勢は広がらなかった。首をかしげたのは立憲民主党の対応だ。衆参で野党第1会派を握っていながら、共闘のまとめ役としての姿勢が見られなかった。沖縄の結果は政権との対立軸を明確にし、早くから候補を一本化して準備すれば、巨大与党にも太刀打ちできることを示した。参院選に向けた態勢構築が急がれる」(北海道新聞、4月22日付)
「立憲民主党や国民民主党などの野党は沖縄では勝利したが、大阪では共闘を築けなかった。全国の統一地方選の結果を含めて総括すれば、野党が大きな存在感を示したとは言い難い。今回の2補選は夏の参院選の前哨戦と位置づけられた。野党の支持率が伸びない現実を踏まえれば、新潟選挙区などの1人区でどれだけ共闘できるかどうかが、参院選の結果を左右する可能性は高い。統一選と同時に行われた2補選は、与野党双方に課題を突き付けたといえる」(新潟日報、4月23日付)。
「立憲民主党など野党の存在感は希薄だった。大阪12区では共産元職が辞任して無所属で挑み与野党対決を演出したが、勝利には届かなかった。立民などの国会議員が応援に入ったが本腰を入れたとはいえない。安倍1強に対し有効な選択肢を示すのは野党の責任だが、共闘の本気度が疑わしい事態だ。参院選に向け調整できるかが問われる」(京都新聞、4月23日付)。
「大阪12区は、日本維新の新人がダブル選からの勢いそのままに自民から議席を奪った。自民は、安倍首相が最終日に公認候補の応援に入るなどの総力戦で敗れた。有権者の強い不信があったことは否定できない。長期政権のほころびが目立ち始めたものの、それに代わる選択肢が見当たらない。野党共闘は沖縄では奏功したが、大阪では存在感を示せなかった。野党各党は参院選での共闘のあり方を真剣に協議するべきだ」(神戸新聞、4月23日付)。
◆野党共闘の難しさと覚悟
日本海新聞(4月12日付)は、参院選鳥取・島根選挙区で、鳥取、島根両県の立憲民主党と国民民主党の4県連の幹事長が11日、3回目の会合を開いたことを伝えている。「具体的な候補の決定には至らず、無所属の統一候補を必ず擁立することと、共産党とは共闘しないことを確認するにとどまった」との記事を読んで、言葉を失った。共産党は元衆院議員の中林佳子氏の擁立を決定しているが、「共闘はない。中林さんに乗ることはない」とのことである。
3回集まっても候補者を決定できない組織がよく言うよ。島根県は先の知事選において、国会議員に自民党県議が反旗を翻し、保守分裂選挙となった。その後遺症は簡単に癒えていないはず。にもかかわらず共闘しないとすれば、千載一遇のチャンスを逃すこと必至。ここまで来れば、共産党はこの地での共闘について、こだわるべきではない。自らの信念を、有権者に徹底的に訴えていくしかない。名ばかり共闘は野合ゆえに、苦楽をともにしてきた支持者への裏切りとなることを覚悟すべし。
「地方の眼力」なめんなよ
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