【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】「忠実な助手」で国民を守れるか2019年5月20日
少し前に、ワシントンポスト紙に「日本の総理はトランプの忠実な助手」(Abe plays the role of Trump's loyal sidekick)の見出しの記事が出ていたのを思い出した。人によっては「従属的な助手」「忠実な手下」と訳している。「大統領選が来年あるのはわかっている。それまでにはちゃんと形にするから安心してほしい」と約束した(日経新聞、2019年5月8日)のと呼応する。
しかし、「忠実な助手」として、米国にやれと言われたとおりにやるだけで、日本国民の命と暮らしを守れるだろうか。 国民への安全な食料を安定的に供給できる能力は、一部の企業的農業が規模拡大しても中小規模の家族経営が疲弊してきている趨勢的な農業構造の脆弱化と迫りくる一層の自由化で、危機的なステージに向かう可能性を、もう一度総括表にした。
一層の貿易自由化を進めつつ、一部の企業的経営さえ伸びればよいという政策の方向性が有効でないことは、継続的な生産構造の脆弱化と農業生産の減少が止まらないことによって明確に示されている。
国内政策は、総じて、規模拡大要件が厳しく、家族経営が多様な形態で現状規模で持続するのをサポートしていない。この行き詰まりは、本総括表が如実に示している。いまこそ、これ以上の無秩序な貿易自由化に歯止めをかけ、多様な家族経営が現状規模で持続できる施策の充実が不可欠である。
世界的には、市場原理主義に基づく規制緩和・自由貿易の徹底では、世界の格差や貧困は悪化するとの疑念と反省が近年強まり、それを改善するには、中小規模の家族農業経営も含めて、共助・共生的に地域を支える協同組合の役割を強化する必要があるとの認識が高まりつつある。
それは、国連の2012年の「国際協同組合年」、ユネスコによる2016年の協同組合の「無形文化遺産」登録、に結実した。それと呼応して、国連は2017年12月、2019~28年を「家族農業の10年」と定めた。さらに、2018年12月には「小農と農村で働く人々の権利に関する国連宣言」が採択された。世界は、協同組合と家族経営が核になる時代に向けて大きく動いている。 我が国だけが、米国の言いなりに、協同組合を破壊し、家族経営を破壊し、世界の気運に逆行し続けるのかが厳しく問われている。
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