【JCA週報】 For "What a Wonderful World" (松岡公明氏を偲ぶ)2019年6月24日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「For “What a Wonderful World”」です。
JCAの協同組合研究誌「にじ」2019年夏号の巻頭オピニオンとして、福島大学 小山良太教授に書いていただきました。
協同組合研究誌「にじ」2019年夏号「For "What a Wonderful World"」
福島大学食農学類 教授 小山 良太
農林年金理事長の松岡公明氏が亡くなられた。松岡氏は日本協同組合学会事務局をJC総研(現JCA)に集約したり、協同組合間協同を運動や大会の実施だけではなく実質的な活動に昇華させるため各地の様々な協同活動を調査し、普及に尽力した人物であった。
私が松岡氏と出会ったのは、12年前、福島大学で日本協同組合学会を実施するにあたって、事前調査としてふくしま大豆の会、地産地消ふくしまネットの取り組みを視察した時であったと思う。当時の福島県農業は米の過剰生産を解消すべく転作作物の本作化に向けた県産大豆振興が課題となっていた。消費者・生活者は当時問題となっていた遺伝子組み換え大豆商品への反対運動が盛んな時期であり、県生協はその一翼を担っていた。この中で農協と生協が手を組み、県行政や農民連、加工組合も巻き込みふくしま大豆の会を発足し、大義のある地産地消の推進を進めてきた。生活者の欲求にこたえて生産するという意味で「地消・地産」の側面を強調する取り組みであった。この事業は、大豆以外の作物にも波及し、こんにゃくや、漁業における水産物、森林組合における県産材・きのこの地産地消・地消地産の推進に結びついていった。発足当時6700万円であった取扱高は3億円弱にまで拡大している。
松岡氏が注目したのは、地産地消ふくしまネットの幹事組織(生協、農協、漁協、森林組合)に協同組合ではないが地元の国立大学である福島大学が参画している点と常勤の研究員を採用し、様々な調査研究、普及活動を行っている点であった。特に震災後に採用した研究員制度は、放射能汚染対策として土壌スクリーニング事業や食の安全性に関わる検査体制の検証と情報発信(風評対策)の実施主体として機能した。国や行政組織が躊躇し実行できなかった事業を、地域に埋め込まれた協同組合陣営として実施する基盤となった。この研究員は、後に当時のJC 総研に転籍することとなる。
松岡氏は、福島県における協同組合間協同による様々な取り組みは、(1)協同組合学習機会の共通化(絆塾)、(2)共同商品開発、(3)反TPP、反種子法改正などのシンポジウムの共同開催、共同声明、そして(4)地元高等教育機関における協同組合学講座開設への参画など、全国に普及すべき活動だと常々おっしゃっていた。福島には震災後も何度も足を運んで下さり、激励のSatchmo「What a Wonderful World」を熱唱してくれた。息子世代の私たちに、自分たちよりも多くのことを学び、あるべき未来の世界を知って欲しいと。そこには協同組合が位置づく素晴らしい世界を標ぼうできるかもしれないと。松岡氏はJAマンであるとともに第一線の研究の徒であったことに間違いない。でなければこの選曲はできない。ご冥福をお祈りします。
協同組合研究誌『にじ』2019夏号(日本協同組合連携機構)より
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