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【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(150)用語の定義と支援:Beginning Farms and Farmers2019年10月4日

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【三石誠司 宮城大学教授】

 余り細部に囚われるのは好きではないが、世の中の仕事では必要に応じて厳密な用語の定義が求められることがある。「青いシャツ」は誰の目にも明らかであろうが、「青」はいわゆる「青」から「藍色」「紺色」「孔雀青」、鮮やかな晴天の「天色」からほとんど黒に近い「勝色」まで様々である。そもそも青色発光ダイオードが普及するまで、日本人の多くは緑の信号機を「青信号」と呼んでいたはずだ。

 大学教員の仕事のひとつとして様々な文章を見る機会がある。文面からは、恐らく書いた当事者はこう言いたいのだろうなとは想像できるものの、なかなかその通りに意味が伝わらないという状況によく直面する。ある事故の目撃者が「青い車」が逃げたと言っても、目撃者当人の「青」の範囲は他人には厳密にはわからないのと同じである。
 このため、公式統計に用いられる用語には極めて厳密な定義がなされていることがほとんどだが、ややこしいのは簡単な用語ほど解釈の余地が広いだけでなく、読者のほとんどは定義など読まないことだ。その結果、とんでもない誤解が生じることも少なくない。

 例えば、今週のタイトル「Beginning Farms and Farmers」だが、まず、これをどのように訳すかで悩む。簡単過ぎる英語ほど実は難しい。グーグルの自動翻訳にこれをそのまま入力すると、「始まりの農場と農家」となり、どうみても不自然である。同じグーグル翻訳でも英語から中国語にすると「初級農場和農民」となり、この方が「初級」という言葉があるだけニュアンスが近いのが興味深い。
 要は就農して間もない農場、あるいは就農初心者、という意味だが、これを的確に表現するのは難しい。「未経験者農場」などと言えば、また異なる意味になる。「就農初心者」という表現は比較的よく見られるが、どのくらいを「初心者」に分類するかはさらに難しい。とりあえず「初心者農場・初心者農家」とでも訳して話を進めてみる。

 この視点で見ると米国農務省経済調査局の「初心者農場・初心者農家」の定義は非常に興味深い。初心者農場とは、「...すべての作業員が10年以下の経験しか持っていないもの...」である。裏を返せば、1人でも10年を超える作業員がいれば初心者農場にはならないというものだ。
 これに対し、同じ農務省でも統計局が2014年センサスで用いた定義は微妙に異なる。こちらは「主要な作業員の経験が10年を超えないもの...」である。経済調査局の定義ではやはり無理が生じたのであろう。主要な作業員でなければ10年を超えても良しとしている。こうした変化は農業現場の現実を反映していると考えられる。
 そして、2017年にはさらに変更されている。こちらは「生産者または主要な生産者の経験が10年未満のもの...」である。下手な訳で申し訳ないが、「作業員」はoperator、生産者はproducerの訳であり、ここでは農家・農民を意味するfarmer は使われていない。
この3者の違いも話せば長くなるので割愛する。

 これらの定義に基づく統計の結果を簡単に言えば、2013年から2017年の米国には平均して約34万の初心者農場があり、そこには約90万人の初心者農家が働いている。こうした初心者農場・農家は全米の農場の約17%、農業生産の8%を占めているようだ。そして、ここでも非常に興味深いことに、初心者農場・農家の多くは年間販売高1万ドル未満の小規模なものが中心だが、中には年間販売高が100万ドルを超えるものが全体の2%ほど存在し、これが初心者農場全体の販売高の概ね半分を占めているようである。
 
 さて、日本ではキャリアをどう表現するか。素人と玄人、アマチュアとプロ、あるいは初心者から一人前になり、やがて中堅、その後ベテランになる。大量生産により合理的・効率的・画一的な大規模農業が普及している米国ですら、農業においては10年を一区切りとして最初のステージを考えているようだ。残念ながら、より気候や地形、環境の差異が大きく職人芸に近い側面すら多い日本の農業では新規就農支援などは就農後5年である。新規就農を本当に促進するのであれば、資金面を含め様々な要素があることはわかるが、もう少し長い支援が可能になるような仕組みを検討できないだろうか。

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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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