【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】日米貿易協定で日本のGDPは減少の可能性も―政府と同じモデルによる暫定試算―2019年11月14日
前回のコラムで、次の指摘をした。
恣意的な生産性向上効果(価格下落以上に生産性が伸びる)、投資増加効果(GDP増加と同率で投資が増える)、賃金上昇による供給増加効果などの、いわゆる動学的効果を入れれば、GDPはいくらでも増やせる。それらを除いた純粋な関税撤廃効果のみをまず示すべきである。また、自動車は関税撤廃されたのは虚偽で、除外されたのだから、まず、自動車が除外された場合の数値を示すべきである。
そこで、実際に我々の研究室で政府と同じGTAPモデルで、関税撤廃による直接効果のみを、自動車を含む場合と除外された場合で推定してみた。
この場合、GTAPモデルでは、
1.日本の農産物は品質がよいので輸入品との代替性が非常に低い、と仮定されている。
2.労働者は完全流動的に瞬時に職業を変えられる。
という点が非現実的なので、その点の修正も試みた。
まず、1.2.について改善をしない規定値のモデルで計算すると、日本のGDP増加率は、自動車を含めても0.16% (政府発表の1/5)、除外すると0.09% (政府発表の約1/10)まで下がった。
1.について、国産と輸入品との代替性を高める、2.について、労働者は簡単に別の仕事に就けない、という仮定を導入して、元のGTAPモデルの非現実性を改善すると、日本のGDP増加率は、自動車を含めても▲0.01%、除外すると▲0.07%と、日米協定は日本経済にマイナスになる可能性も示された。
注: 農産物についての仮定: コメ、砂糖は除外。小麦はマークアップ(関税相当)の45%削減、牛肉関税は9%、生乳価格は7円低下、豚肉は米国・EUともに"almost duty free"と評価しているので、関税撤廃とみなした。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日