【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(163)「時間と歴史」の教訓2020年1月10日
令和2年、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
昨年末、古い同窓の友人があるSNSの中で何気なく「30年前の大学時代…」と言い、暫く後に「大学時代は30年前ではなく40年前でした」と訂正していた。これ自体は何ともない話だが、このコメントはいろいろなことを思い出させてくれた。
慌ただしい日々の仕事に追われる身にとって、40年前は余りにも遠い昔のような気もするし、つい最近のような気もする。
40代後半の頃、高校を卒業して30年が過ぎたのを機会とした同窓会があった。その前後にかつての友人と連絡を兼ねて他愛もない会話をしたのだが、「昔のこと過ぎて覚えていない」と言われたことがある。自分には鮮明な高校時代の記憶も相手にはそれほどではなかったという訳だ。あるいは相手にとって、その話題は思い出したくない記憶であったのかもしれない。
それはともかく、2020年から40年前の1980年のことは良く覚えている。年頭に元ビートルズのポール・マッカートニーが成田空港で逮捕された年だからだ。夏にはモスクワ・オリンピックが開催され、秋にはポーランドでは民主化運動の中で「連帯」という組織の名前が連日のように報道されていた。さらに元ハリウッド俳優のロナルド・レーガンがジミー・カーターを破り米国の大統領に当選した。そして初冬の12月8日、元ビートルズのジョン・レノンがニューヨークで銃により殺された。中学時代、ビートルズの音楽を毎日のように聴いた筆者としては、この年はポールに始まりジョンに終わった年である。多感な年齢であったこともあり、20歳の頃の世の中の動きは今でもよく覚えている。
さて、その1980年からさらに40年前は1940年、昭和15年である。世界史年表から目ぼしい内容を拾うと、欧州では前年1939年9月1日、ドイツのポーランド侵攻を受け、9月3日には英仏がドイツに宣戦布告して第二次世界大戦が始まっている。
1940年に入ると、日本では米内内閣成立(1月)、欧州はドイツがデンマークに侵攻(4月)、英チャーチルの挙国一致内閣成立(5月)、日本軍、重慶を空襲(5月)、ドイツ軍フランスを総攻撃(6月)、イタリアが対英仏宣戦布告(6月)となる。日本は1940年6月に近衛内閣となり、7月には「大東亜共栄圏」建設の声明が出された後、日独伊三国同盟(9月)、大政翼賛会発足(10月)と続いている。ここから翌1941年の太平洋戦争、そして3年9か月後の1945年8月までは一直線だ。
言うまでも無いが、1980年当時20歳の筆者にとって40年前など遥か昔どころか、生まれる前であり、完全に歴史の世界でしかなかった。だが、自分の両親達(当時50代)の世代には、1980年から40年前は、ちょうど現代の我々が1980年を昨日のように感じるのと同様、非常に近く、"生々しい昔"だったのではないかと思う。
経済企画庁(当時)が「もはや戦後ではない」という有名な言葉を白書に記したのが昭和31(1956)年、終戦から11年後である。昨日のことのように覚えている2001年の米国同時多発テロから既に20年近くの時がたち、平成23(2011)年の東日本大震災からも10年近い時間が立ちつつある。
20~60歳という同じ40年間を経験するにしても、戦前・戦中・戦後と高度成長およびバブルを経験した筆者の親世代と、バブルの前夜・最中・崩壊以後の40年を経験した筆者達の世代とは随分世界観が違う。現在20歳前後の大学生とはさらに違うであろう。
考えてみれば当たり前だが、過去2000年以上の人類の歴史を振り返ると、国内外の交易や人の往来が盛んになり、その結果として知識や技術と生活水準が向上し、文化が花開いた時期はいずれも大規模な争いがなく平和な時期が多い。平和であればこそ、人、モノ、カネ、そして情報の交流が活発になるからだ。
年頭に当たり、今後の世界が過去の過ちを繰り返さないことを強く願うばかりである。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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